休職に入ると、仕事から一歩離れられた安心感と同時に、「この時間をどう過ごせばいいのか」「本当に元の職場に戻れるのか」という不安が押し寄せることもあります。
とくにメンタル不調が理由の場合、頭では「休まなきゃ」と分かっていても、心のどこかで「サボっているのでは」「周りに置いていかれてしまうのでは」と自分を責めてしまいがちです。
このコラムでは、そうした揺れる気持ちを前提にしながら、休職中の過ごし方を「やってはいけないこと」と「おすすめの過ごし方」、さらに「復職に向けた準備」という流れで整理していきます。
休職期間を“空白の時間”ではなく、“心と体を整えながら、次の一歩につなげるための準備期間”としてとらえ直すヒントになれば幸いです。
私たちチャレンジド・アソウでは、休職中の方が復職に向けての不安や怖さを少なくし、安心して職場復帰できるようにサポートしています。
具体的に下記のリワークプログラムを実施しています。
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休職中の過ごし方|焦らず心身を癒す大切な時間


休職中は、これまで当たり前のように続けてきた「仕事」という軸が突然すっぽり抜け落ちる期間です。
そのため「何をして過ごせばいいか分からない」「時間だけが過ぎていく」と感じやすくなります。
しかし一方で、心と体が限界に近づいたからこそ与えられた“ブレーキの時間”でもあります。
まずは休職に至るまでの背景を整理しつつ、休職中に感じる心理や復職までの大まかな流れを知ることで、この期間の捉え方が少し変わっていきます。
休職の主な理由とメンタル不調の現状
メンタル不調による休職に至るまでには、「いくつかの無理」が積み重なっています。
残業続きの毎日、絶えないプレッシャー、職場の人間関係のストレス、急な配置転換や昇進による責任の増加、仕事以外でも家族の介護や子育てなど、さまざまな要因が絡み合って心と体のバランスが崩れていきます。
最初のうちは、「少し休めば大丈夫」「この案件が終わったら楽になる」と自分を励ましながら走り続けることが多いでしょう。
しかし睡眠が浅くなったり、朝起きられなくなったり、涙が止まらなくなったり、「仕事に向かう電車に乗れない」といったサインが強くなってくると、いよいよ仕事を続けることが難しくなります。
医師の診察を受けた結果、「うつ病」「適応障害」「不安障害」など診断され、休職をすすめられるケースも少なくありません。
休職を決めた瞬間、「頑張れなかった自分」「迷惑をかけてしまった自分」を強く責めてしまいがちですが、視点を変えれば「これ以上壊れてしまわないために、ギリギリのところで踏みとどまった」ということでもあります。
仕事ができる・できない以前に、“生きるために必要なブレーキ”がかかったのだ、と自分の行動を前向きに捉え変えることが、休職期間において大切になります。
「休職中 暇すぎる」と感じるときの心理と対処法
休職に入って数日から数週間たつと、多くの人が「暇だな」「やることがないな」と感じ始めます。
これまで朝起きてから寝るまでほとんどの時間を「仕事」に使っていた人ほど、そのギャップは大きく、「こんなに何もしていなくて大丈夫なのか」「自分だけ時間が止まってしまったようだ」と不安や罪悪感が大きくなりやすいものです。
この「暇すぎる」という感覚の裏には、二つの状態が隠れていることが多いです。
一つは、心身のエネルギーが落ちているために、新しいことを始める気力がどうしても湧いてこない状態。
もう一つは、頭の中だけが“これをしなければ”“こんなことをすべきだ”と忙しく動いているのに、体がついてこない状態です。
そのギャップが、「何もできていない自分はダメだ」という思いを強めてしまいます。
対処の第一歩は、「何もしない時間を認める」ことです。休職の初期〜中期は、心身がまだ回復途上にあり、「暇を感じるくらいでちょうどいい」時期でもあります。
たとえば「午前中はベッドでゆっくり過ごす」「午後は好きな音楽を聴きながらぼんやりする」といった、いわば“何もしない時間”を意識的に自分に与えることが大切です。
そして「暇でつらい」と感じたときには、「今日はここまでできた」という小さな事実を拾い上げてみてください。
朝起きて顔を洗えたこと、食事を取れたこと、5分だけ外の空気を吸いに出られたこと。それらはすべて、回復へ向けた一歩です。
ノートやスマホのメモに、その日の「できたこと」を一行だけでも書き留める習慣をつくると、「何もしていなかった日」はほとんどなかったのだと、少しずつ実感できるようになります。
復職までの流れと出口を見据えた心構え
休職中、もっとも苦しくなるのは「出口が見えない」と感じるときかもしれません。
「いつになったら戻れるのか」「そもそも戻れるのか」「戻ったあと、また同じように壊れてしまわないか」といった不安が、頭の中で何度もぐるぐる回ります。
ここで大切なのは「休職から復職までは、いくつかの段階を経ていくものだ」と、大まかな地図を持つことです。
ざっくりと分けると、①とにかく休むことを優先する“休養期”、②少しずつ生活リズムや活動量を整えていく“回復期”、③復職に向けて生活・職場との調整を進める“準備期”という流れになります。
今の自分がどの段階にいるのかを意識すると、「まだ休養期だから、焦って何かを始めなくてもいい」「そろそろ回復期だから、暮らしを少し整えてみよう」と、目の前の一歩だけに意識を向けやすくなります。
復職という“大きなゴール(再スタート)”だけを見つめるのではなく、「今月は生活リズムを整える」「来月は外出の回数を少し増やしてみる」といった“小さな目標”を積み重ねるイメージを持てると、気持ちの負担が軽くなります。
また復職は「ゼロか百か」ではありません。
いきなりフルタイム就労で戻るのではなく、むしろ短時間勤務から始める、業務量を絞ってもらうなど、段階的に戻る方法を採ることが大事です。
そのためにも、主治医や会社とコミュニケーションを取りながら、「どのような形なら今の自分が無理なく働けるか」を一緒に考えていくスタンスを持つことが大切です。
私たちチャレンジド・アソウでは、回復期と準備期をサポートできます。
あなたに合ったペースで準備を整え、安心して職場復帰できるように企業とも調整します。
休職中のやってはいけないこと|避けるべき行動7選


休職中は、「何をするか」以上に「何をしないか」が重要になることがあります。
良かれと思って取った行動が、結果として回復を妨げてしまうこともあるからです。
ここでは、避けておきたい代表的な行動を取り上げながら、その背景と理由を丁寧に整理していきます。
無理な外出や刺激の強い活動
休職して少し体調がよくなってくると、「せっかく時間があるし」「気分転換のために」と、旅行や遠出、大勢での飲み会、長時間のショッピングなど、刺激の強い活動を入れたくなることがあります。
一見すると良い気分転換に思えますが、心身がまだ回復途中の段階では、大きな負担となってしまうことが少なくありません。
長時間の外出や人混みは、想像以上にエネルギーを消耗します。
その場では楽しくても、帰宅後に強い疲労や落ち込みが一気に戻ってきて、「行かなければよかった」と自分を責めてしまうこともあります。
(休職中に遊びにでかけることがダメなわけでは決してありません)
まずは近所を短時間だけ散歩する、静かなカフェで短時間だけ過ごす、といった“負荷が低い外出”から慣らしていくほうが安心です。
「長距離の移動」「人混み」「長時間の予定」がセットになっている外出は、体力・気力がしっかり戻ってからにしましょう。
SNSやネット依存に注意
家にいる時間が長くなると、ついスマホやパソコンに手が伸びがちです。
SNSを見ているうちに何時間も経っていたり、ニュースや動画を延々と見続けていたり。
やっている最中は「何となく気が紛れている」ように感じても、あとからどっと疲れが押し寄せ、「今日も何もできなかった」と自己嫌悪に陥ることも多いのではないでしょうか。
SNSには、「他人の元気な姿や活躍」が大量に流れてきます。
仕事で活躍している同僚の投稿、休日を満喫している友人の写真。
そうした情報に長時間さらされていると、どうしても「自分だけ取り残されている」という気持ちが強まり、回復を妨げる要因になりかねません。
夜遅くまでスマホを見続けることは、睡眠の質の低下にも直結します。
完全にやめる必要はありませんが、「寝る前1時間はスマホを触らない」「SNSを開く時間帯を午前と夕方だけにする」など、自分なりのゆるいルールを決めておくと、心身への負担を減らしやすくなります。
生活リズムを極端に崩すこと
「せっかく休職しているのだから」と、昼過ぎまで寝続けたり、深夜まで動画を見て夜更かしをする習慣が定着してしまうと、心身の回復が遅れるだけでなく、復職への準備も遠のいてしまいます。
体内時計が大きく乱れると、日中のだるさや頭の重さが増し、「ますます何もできない」という悪循環に陥りやすくなります。
もちろん休職初期の休むことを優先する“休養期”においては「思いきり眠る」ことが必要なことも多いでしょう。
ただそれが回復期に入っても続き、「昼夜逆転」が当たり前になってくると、回復よりもむしろ悪化を招くリスクが高まります。
いきなり完璧な生活リズムに戻す必要はありません。
まずは「毎日同じくらいの時間に起きる」「朝起きたらカーテンを開けて光を浴びる」「朝食だけは簡単なものでも必ずとる」といった、自分に合ったスモールステップから始めていくことが大切です。
私たちチャレンジド・アソウには、CCフィットネスというプログラムがあります。
「日中に体を動かすことで夜に寝付きやすくなった」など好評です。
生活リズムや体力回復に役立つプログラムを取り入れています。
悩みを一人で抱え込んでしまうこと
休職に入ると、同僚や上司と顔を合わせる機会が極端に減ります。
その結果、「自分だけ取り残されている」「自分のせいで職場に迷惑をかけている」といった思いを、一人でぐるぐる考え続けてしまいがちです。
しかし悩みをすべて自分一人で引き受けようとすると、心の容量はあっという間にいっぱいになってしまいます。
感情の出口がないまま、「申し訳なさ」「情けなさ」「将来への不安」だけを抱え続けることは、回復を遅らせる大きな要因です。
家族や友人に、今の気持ちを少しだけ打ち明けてみること、主治医やカウンセラーに「言葉にしづらいモヤモヤ」をそのまま話してみること。
それだけで、心の中に少し“隙間”が生まれ、呼吸がしやすくなります。
「うまく話せなくても大丈夫」「泣いてしまっても大丈夫」という前提で、誰かに頼ってみることも、回復の大切なステップです。
もちろんチャレンジド・アソウに、ご相談いただいても大丈夫です。
無料個別相談を随時お受けしていますので、ご遠慮なくご利用ください。
復職や将来への過度な不安・焦り
休職中は、「いつ復職できるのか」「今の会社に居場所は残っているのか」「この先のキャリアはどうなるのか」といった不安がどうしても膨らみます。
その不安を埋めるために「資格を取らなければ」「新しいスキルを身につけなければ」と自分を追い込み、結果的に心身をさらに疲弊させてしまう人も少なくありません。
復職や将来のことを考えること自体が悪いわけではありません。
ただ、まだ休養が十分でない段階で、あまりに先のことまで細かく計画しようとすると、「今の自分」と「理想の自分」のギャップに押しつぶされてしまいます。
今は、“長期的な戦略”よりも、“今日を何とかやり過ごすための小さな工夫”を大切にするタイミングかもしれません。
「この一週間でやりたいことを一つだけ決める」「今月は生活リズムを整えることだけを目標にする」といった短いスパンでの目標設定に切り替えることで、心の負担はかなり軽くなります。
休職中のおすすめの過ごし方


やってはいけないことを避けつつ、心身を少しずつ整えていくためには、どのような時間の使い方が助けになるのでしょうか。
ここでは、「心と体を休める」「軽く動く」「好きなことをする」「人とのつながりを保つ」「専門家の力を借りる」という五つの観点から、休職中の過ごし方を具体的に見ていきます。
心と体を休めることに専念する
休職に入った直後から、「せっかく休んでいるのだから何かしないと」と考えてしまう方は少なくありません。
しかし心と体の傷がまだ癒えていない段階では、まず「休むことそのもの」を自分に許すことが最優先です。
たとえば、午前中は目が覚めるまで眠る、起きたら温かい飲み物を飲んでぼんやり過ごす、気力が湧かなければ、日中も横になって過ごしてかまいません。
「何もしていない自分」を責める声が頭の中から聞こえてきたら、「今の自分に必要なのは回復の時間だ」と、言い聞かせてみてください。
また休むときほど「環境づくり」が大事になります。
部屋の照明を少し暗めにする、心地よい音楽をかける、ベッドや布団を整える、部屋の空気を入れ替える。
こうした小さな工夫が積み重なると、「休むこと=だらしない」というイメージが、「休むこと=自分を大切に扱う時間」に変わっていきます。
軽い運動や徒歩でリフレッシュ
しばらく休んで、心と体にほんの少し余裕が出てきたら、今度は「ほんの少しだけ動く」ことを試してみてもよいタイミングです。
とはいえ、いきなりジョギングをしたり、スポーツジムに通い始めたりする必要はありません。
たとえば「家の周りを10分だけ歩いてみる」「コンビニまで行って、好きな飲み物を一本買って帰る」「マンションの階段を一階分だけ上り下りしてみる」といった、ごく短時間の活動から始めます。
外の空気を吸って、光を浴びて、体を動かすことで、頭の中のモヤモヤがほんの少し軽くなったり、夜の寝つきがよくなったりすることもあります。
このとき大切なのは、「距離」や「スピード」ではなく、「やってみようと思えた自分」「行ってみて無事に帰って来られた自分」を認めることです。
たとえ5分の散歩だったとしても、それは立派な前進です。
趣味や好きなことで気分転換
休職中は、仕事一色だった生活から離れ、「仕事以外の自分」を取り戻すチャンスでもあります。
読書、音楽、映画、漫画、手芸、イラスト、ゲーム、園芸、料理…。何でも構いません。「心が少しだけ和らぐこと」「やっている間だけ、嫌なことを少し忘れられること」を、そっと自分の生活に戻してみてください。
ただし「趣味にも本気で取り組まなければ」と力を入れ過ぎてしまうと、かえって疲れてしまいます。
「今日は10分だけ」「この一章だけ読む」「この一曲だけ聴く」というように、あえて短い時間で区切りをつけることで、ほどよい気分転換になりやすくなります。
小さな楽しみが一日に一つでもあると、「今日もなんとか一日を終えられた」という感覚が生まれやすくなります。
これは復職に向けて心のエネルギーを貯めるうえでも、とても大切な感覚です。
家族・友人と過ごす時間の活用法
人とのつながりは、メンタル不調からの回復にとって大きな支えになります。
誰かと話したり、一緒に食事をしたり、他愛のない話で笑い合ったりする時間は、「自分は一人ではない」という感覚を呼び起こしてくれます。
とはいえ「会うときはいつも明るく元気でいなければ」と無理をしてしまうと、かえって疲れてしまいます。
「今日は少ししんどいけれど、30分だけ会いたい」「今の状態をうまく説明できないかもしれないけれど、それでも聞いてもらえると助かる」と、事前に自分の状態や希望を伝えておくと、より安心して会いやすくなります。
会う相手も、いきなり大人数の飲み会や久しぶりの同窓会ではなく、安心して弱音を吐ける家族や、気を遣わなくていい友人などから始めるのがおすすめです。
対面が難しければ、短い電話やオンライン通話でも十分です。
「誰かに話を聞いてもらった」ということが、心の支えになります。
専門家による相談・カウンセリングのすすめ
休職中は、「自分でなんとかしなければ」と思い込み、専門家への相談を後回しにしてしまう人もいます。
しかしメンタル不調の回復には、医師やカウンセラーといった専門家の伴走が欠かせません。
定期的な通院の場では、薬の調整だけでなく、最近の睡眠や食欲の変化、気分の波、復職への不安などを話しながら、今後の方針を一緒に考えることができます。
またカウンセリングでは、「自分の思考のクセ」「無意識に抱え込んでいるもの」「ストレスとの付き合い方」などを整理しながら、再発予防も含めた対処法を身につけていくことができます。
「うまく話せる自信がない」「何から話せばいいか分からない」というときは、「最近しんどかったことを三つだけ挙げてみる」「この一週間でつらかった日と少し楽だった日を比べてみる」といった小さな振り返りから始めると、話すきっかけが生まれます。
専門家は、“完璧に整理された悩み”ではなく、“整理しきれない状態そのもの”を一緒に考えてくれる存在です。
【状態別】適応障害・うつによる休職中の過ごし方ポイント


一口に「メンタル不調」といっても、その背景や症状には幅があります。
ここでは、代表的な「適応障害」と「うつ状態」を例に、それぞれの状態で意識したいポイントや、気分の波との付き合い方、回復・悪化のサインについて整理していきます。
適応障害の方が意識したい日々の過ごし方
適応障害は、職場の人間関係や業務内容の変化、家庭環境の変化など、はっきりとしたストレス要因がきっかけになることが多い疾患です。
「特定の状況にうまく適応できないために、心身の症状が出ている状態」と捉えると、イメージしやすいかもしれません。
休職中の過ごし方として大切なのは、まず「ストレス源からしっかり距離を取る」ことです。
ストレスの原因となった職場や人間関係を、頭の中で何度も再生してしまうと、心身は休んでいるようで休んでいない状態になります。
「今は、そのストレスから安全な場所に避難している時期だ」と意識的に捉え直すことが、回復の第一歩です。
日常の中では、「朝起きて光を浴びる」「一日一回は外の空気を吸う」「夜は自分が落ち着けるルーティン(お風呂、音楽、ストレッチなど)をつくる」といった、小さなリズム作りを意識してみてください。
また「どの場面で特につらくなっていたのか」「何が負担になっていたのか」を少しずつ整理し、復職後にどうすれば負担を軽減できるかを、主治医や会社と相談していくことも重要です。
チャレンジド・アソウでは、適応障害で休職中の方も多く利用しています。
安心して復職できるようにサポートしますので、詳しくは下記特設サイトをご覧ください。
うつ状態時にやってはいけないこと・注意点
うつ状態のときは、「気分が落ち込む」「何をしても楽しく感じられない」といった感情面だけでなく、「体が重い」「集中できない」「眠れない・眠りすぎる」「食欲がなくなる・食べすぎてしまう」といった身体面の変化も強く現れます。
自分の意思や気合いだけでどうにかできるものではなく、「病気としてのうつ」が心と体に影響を及ぼしている状態です。
この状態で特に避けたいのは、「自分を叱咤激励して無理に動かそうとすること」と、「少し良くなった気がして薬や通院を自己判断でやめてしまうこと」です。
どちらも一時的には「できた」感覚が得られるかもしれませんが、そのあとで急に力尽きてしまい、かえって落ち込みが強くなることが多いからです。
うつ状態のときは、「できなかったこと」ではなく、「今日はこれだけできた」という視点を意識的に持つことが大切です。
たとえ顔を洗えなかった日があったとしても、ベッドから起き上がれた、飲み物を口にできた、メッセージを一通だけ返せたなど、そうした小さな行動はすべて、回復への足がかりです。
そして、薬や治療方針は、必ず主治医と相談しながら調整するようにしましょう。
チャレンジド・アソウでは、うつ病で休職中の方も多く利用しています。
あなたに合った再スタートがきれるようにサポートしますので、お気軽にお問い合わせください。
気分の波と上手に付き合うコツ
メンタル不調からの回復過程では、「昨日は少し楽だったのに、今日は朝からしんどい」「一週間調子がよかったのに、急に落ちてしまった」といった“波”がつきものです。
この波を「またダメになってしまった」「治っていない証拠だ」と捉えてしまうと、自分を責める材料が増えてしまいます。
むしろ「波があるのは回復途中だからこそ」と考えることが大切です。
心と体の調子は、天気のように日々変化します。
晴れた日があれば曇りの日もあり、雨の日もあります。大事なのは「その日の天気に合わせて過ごし方を調整する」柔軟さです。
たとえば調子がよい日に少し活動量を増やしたなら、翌日は意識して予定を軽くしてみる。朝から重たいと感じる日は、「最低限これだけできればOK」というラインを思い切って下げる。
そのように、波に合わせてペース配分を変えることで、長い目で見たときの回復が安定しやすくなります。
症状回復・悪化のサインを見極めるには
自分の状態が「よくなっているのか」「悪くなっているのか」を把握することは、復職のタイミングや今後の治療方針を考えるうえで、とても重要です。
回復のサインの一例として挙げられるのは、朝の目覚めがほんの少し軽く感じられるようになったこと、日中に一つか二つの用事をこなしても、翌日大きく寝込まずに済むようになったこと、以前なら面倒に感じていた家事や趣味に、少しだけ意欲が戻ってきたことなどです。
こうした変化は本人にとっては気づきにくいこともありますが、日々メモに残しておくと、あとから振り返ったときに「確かに少しずつ良くなっている」と実感しやすくなります。
一方、悪化のサインとしては、眠りが極端に浅くなる、食欲がほとんど出なくなる、涙が勝手にあふれてくる、死にたい・消えたいといった考えが頭から離れない、通院や相談の場に行くのがつらくなり避けるようになる、などがあります。
このような変化が続く場合は、一人で抱え込まず、できるだけ早く主治医や専門機関に相談することが大切です。
休職中の1日の過ごし方モデルケース


「具体的にどんな一日を過ごせばいいのか分からない」という声は、とてもよく聞かれます。ここではあくまで一例として、「無理をせず日常を整えていく一日」のイメージをお伝えします。
自分の体調や生活環境に合わせて、取り入れやすいところだけを参考にしてみてください。
午前〜午後の過ごし方例|無理をせず日常を整える
たとえば、次のような流れをイメージしてみます。
朝は、毎日ほぼ同じ時間に起きることを目標にします。
目が覚めたらすぐスマホを手に取るのではなく、ベッドの中で軽く体を伸ばし、ゆっくりと起き上がります。カーテンを開けて外の光を取り込み、窓を少し開けて新しい空気を入れます。
そのあと、温かい飲み物と簡単な朝食をとりながら、「今日はどれくらい動けそうか」を自分に問いかけてみてください。
午前中は、体調が良ければ近所を短時間散歩します。外に出るのが難しい日は、ベランダや玄関先に出て、空や風の感触を確かめるだけでも十分です。帰ってきたら、疲れを感じる前にソファやベッドでひと休みします。
午後は、少しだけ頭を使うことをしてみます。
読みかけの本を数ページだけ読む、録画していた番組を一本だけ観る、机の上だけ片づけるなど、「終わらせるのに長い時間を必要としないこと」を選ぶと、達成感を得やすくなります。
夕方以降は、ゆっくりと心を落ち着ける時間にしていきます。
ぬるめのお風呂に入る、ラジオや音楽を流す、軽いストレッチをするなど、眠りに向けて少しずつ体と心のスイッチを切り替えていきます。
寝る前には、スマホやパソコンから離れ、部屋の照明を少し暗くして、深呼吸をしてから布団に入るようにすると、睡眠の質が上がりやすくなります。
食事・睡眠・運動のバランスを保つコツ
休職中の“土台”になるのが、食事・睡眠・運動です。
どれか一つが崩れると、ほかの二つにも影響が出てしまいます。
食事については、豪華なメニューを用意する必要はありませんが、「一日三回、何かしら口にする」を目標にしてみてください。
レトルト食品やコンビニの総菜に頼っても大丈夫です。ご飯と味噌汁、野菜が少し入ったスープ、ヨーグルトやバナナなど、体が受け付けそうなものを選びます。
「食べられたこと」そのものが、大事な一歩です。
睡眠は、時間の長さよりも「リズム」を重視します。
起きる時間と寝る時間の“幅”をなるべく固定し、昼寝をするなら短時間にとどめるように意識します。
寝る前のスマホやテレビを控え、照明を暗くし、心地よい音楽を流したり、ゆっくりと深呼吸をしたりすることで、体が「そろそろ眠る時間だ」と認識しやすくなります。
運動は、「たくさん動く」ことを目指す必要はありません。
とくに最初のうちは、家の中で立ち上がる・座るを数回繰り返す、短時間のストレッチをする程度でも十分です。
少し慣れてきたら、散歩の時間を5分ずつ伸ばしてみたり、エレベーターではなく階段を一階分だけ使ってみたりと、日常生活の中に自然な形で取り入れていきましょう。
疲れたときのセルフケア・休息方法
「今日は頑張りすぎたかもしれない」「何だかいつもよりしんどい」と感じる日があったとき、そのまま無理を重ねてしまうと、せっかく積み上げてきたものが崩れてしまうことがあります。
そんなときに備えて、「疲れたサイン」が出たときのセルフケアの“引き出し”をいくつか持っておくと安心です。
たとえば、ゆっくりとした深呼吸を数回繰り返して、体の緊張をゆるめること。ぬるめのお湯に浸かり、手足を意識的に温めること。アロマやお気に入りの香りを楽しみながら、何もしない時間を10分だけつくること。心の中のモヤモヤをノートに書き出し、「今とくにつらいことはこれだ」と見える形にすること。
「こういうときは、これをすると少し楽になる」という経験が増えてくると、「疲れても大丈夫。何とかできる方法を知っている」と、自分への信頼感も少しずつ回復していきます。
復職に向けて準備すべきこと


休職期間がしばらく続き、生活リズムや体調がある程度落ち着いてきたら、少しずつ「復職」の二文字が具体的に浮かんでくるタイミングが訪れます。
ここでは、そのときに意識したい「主治医・会社とのコミュニケーション」「生活リズムのリハビリ」「復職後の不調予防と自分を守る対策」について整理していきます。
主治医・会社とのコミュニケーション方法
復職に向けて最初に取り組みたいのは、主治医や会社(上司・人事)との対話の場を整えることです。
主治医との面談では、最近の体調や睡眠、気分の波、日中の過ごし方について共有しながら、「どのくらいの負荷なら耐えられそうか」「どのような働き方なら再発のリスクを抑えられそうか」を一緒に検討していきます。
医師の診断書には、「いつから」「どのような条件で」復職できそうかが記載されることが多く、その内容は会社との調整の土台になります。
会社とのコミュニケーションでは、「自分が何を伝えたいのか」をあらかじめ整理しておくと、話し合いがスムーズに進みます。
たとえば復職開始のタイミングや、勤務時間・勤務日数・仕事内容の調整、業務量の優先順位付け、定期的な面談の有無などについて、自分なりの希望案を用意しておきます。
そのうえで、「希望通りにならなければ意味がない」と硬く構えるのではなく、「一緒に現実的な落としどころを探す」という姿勢を持てると、双方にとって納得感のある復職プランを描きやすくなります。
ただこのような会社との調整に不安や負担を感じてしまう方も少なくありません。
そのような時には、チャレンジド・アソウのようなリワーク支援を利用することも1つです。
あなたの代わりに、あなたに合った復職ができるようにサポートします。
復職に必要な生活リズムへのリハビリ
いざ復職となったとき、いちばん大きく影響してくるのが「朝のスタートのしやすさ」です。
休職中にお昼近くまで寝る習慣が続いていた場合、出社時間に合わせて起きるのは大きな負担になります。
そのため、復職の少し前から、「生活リズムのリハビリ」を意識的に始めておくことが大切です。
まずは出勤を想定した起床時間に、週のうち何日かだけ合わせてみます。
最初から毎日が難しければ、週二日程度からスタートしてみましょう。
起きたら身支度を整え、実際に家の外に出て、駅や職場の方向へ歩いてみる“通勤の練習”をしてみるのも一つの方法です。
また復職後は仕事でエネルギーを使うことになるため、家事や私生活の負担を減らしておく工夫も役立ちます。
夕食の一部をまとめて作り置きしておく、掃除は週末にまとめるのではなく、平日の短い時間に分ける、洗濯の頻度や時間帯を決めておくなど、「頑張らなくても回る生活」を準備しておくことで、復職後の疲労感を軽減しやすくなります。
復職後の不調予防と自分を守る対策
復職はゴールではなく、これから続いていく毎日のスタート地点です。
復職直後は、久しぶりの緊張や、仕事の勘を取り戻そうとする気負いなどで、思った以上にエネルギーを使います。
そのため、「再び限界まで頑張ってしまう」ことを防ぐための“セーフティーネット”を、あらかじめいくつか用意しておくと安心です。
自分を守るための対策として、たとえば次のようなことが挙げられます。
- 「これ以上は無理」という自分なりのサインを、前もって言語化しておくこと。
眠れなくなった日が二日以上続いたとき、人と話したくなくなったとき、涙が止まらなくなったときなど、「その状態になったら、誰かに相談する」と決めておきます。 - 職場で信頼できる人を一人でも見つけ、定期的に様子を話せる関係をつくること。
上司だけでなく、同僚や産業医、人事担当者など、立場の異なる相手が複数いるとより安心です。 - 仕事以外の時間にも、「心が休まる時間」を残しておくこと。
帰宅後すぐにベッドに倒れ込むのではなく、短時間でも好きなことをする時間や、何もしないでぼーっとする時間を確保します。
こうした小さな備えが、「少ししんどいな」と感じたときに踏みとどまる力になります。「また同じように壊れてしまうのではないか」という不安は、準備を重ねることで少しずつ和らいでいきます。
まとめ|休職中を自分らしく過ごし、復職への一歩を踏み出すために


メンタル不調による休職は、多くの人にとって「予定外の出来事」です。
仕事の予定も、人生の計画も、大きく狂ってしまったように感じ、「なぜ自分だけが」と思ってしまう瞬間もあるかもしれません。
けれども別の言い方をすれば、それは「これまで無理を重ねてきた自分が、ようやく自分を守るために立ち止まることを選べた瞬間」でもあります。
休職期間は、ただ穴があいた時間ではなく、心と体を修復し、自分の生き方や働き方を見直すための、かけがえのない“レジリエンスの期間”です。
このコラムでお伝えしてきたのは、休職中に意識したい幾つかのポイントです。
休職に至るまでの背景や今の状態を理解すること。
やってはいけない行動を知り、回復を妨げる要因から自分を遠ざけること。
おすすめの過ごし方を少しずつ試しながら、自分に合ったペースを見つけること。
適応障害やうつ状態といった、自分の状態ごとの特徴を知り、気分の波との付き合い方を身につけること。
そして、主治医や会社と対話しながら、復職に向けた準備と、復職後の再発予防策を少しずつ整えていくこと。
すべてを完璧にこなす必要はありません。
どれか一つでも、「今日、少し意識してみよう」と感じられたなら、それだけでも十分です。
昨日よりほんの少しだけ、自分を責める時間が減り、休むことを許せる時間が増えていったなら、その変化はきっと、数か月後のあなたを支えてくれます。
休職中である今は、決して“人生の停止期間”ではありません。
歩幅は小さくても、スピードは遅くても、あなたはちゃんと前に進んでいます。どうかこの時間を、自分を責めるためではなく、自分を大切にする練習期間として過ごしてみてください。
その積み重ねが、あなたらしい形での復職、そしてこれからの働き方につながっていきます。











