この記事では強迫性障害について解説するとともに、強迫性障害を持っている方がどうやったら社会に出て一般企業に就職し、仕事をしていくことができるか、その方法を解説しています。
強迫性障害は治るきっかけがすぐに現れる障害ではありません。最低でも休職を利用しながら根気強く快方に向かう努力を重ねていくことが大事です。
そんな強迫性障害を持つ方に是非知っていただきたいのが就労移行支援制度。そして、その就労移行支援制度に基づいて作られた就労移行支援事業所です。
本記事では、そういった強迫性障害の方のための就労移行支援について、下記のような流れで解説していきます。
- 障害と症状の理解
- 障害と症状に合わせた仕事や就職活動
- 就活が有利になる就労移行支援の利用方法
強迫性障害でお仕事にお悩みの方は、必ず参考になる内容かと思います。ぜひこのまま本文へとお進みください。
チャレンジド・アソウ 広島事業所 /
チャレンジド・アソウ 大阪事業所 /
チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者
監修:池田 倫太郎
株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。
強迫性障害とは?まずは症状を理解しよう
生活の中で自分の意に反した不安や不快なイメージを抱き、抑えようとしても抑えられずにその考えを打ち消そうとして、過剰な行動を繰り返すのが強迫性障害(強迫神経症)です。
強迫性障害方は些細なことが気になって止められず、そのことで及ぼすあらゆる影響に本人も理由が分からずに苦しみ、家族や周囲の人たちにも大きな負担となります。
わずかな汚れが気になる、戸締りをしたか何度も確認しないと安心しない、些細な事に対しても縁起の良い数字でないと気が済まないなど、これらの強迫性障害の症状は不安が基礎となる症状なので、強迫性障害は不安障害に分類される神経症の一つです。
そんな強迫性障害(強迫症)には大きく分けて「強迫観念」と「強迫行為」の二つの症状が挙げられます。
自分の意思に反して何度も思い返す「強迫観念」
強迫性障害における強迫観念は、不安、恐怖といった嫌な感情や精神的な苦痛の原因から現れるものです。
自分の意に反して何度もイメージが繰り返し思い浮かぶため、思い過したり抑え込んだりすることが難しく、強迫観念を打ち消したい衝動に駆られるのが強迫性障害の症状です。
強迫性障害による強迫観念は日常生活の些細なことがきっかけで現れるとされています。
- 人とすれ違った後に自分が原因で事故が起こり、その人に大けがをさせるのではないか
- 家のドアの鍵を掛けたかを確認しても、記憶違いではないのかと思い不安になる
- 人の些細な発言や行動から執拗に詮索し、質問して回る
- 物の数や回数、順番、色、対称など縁起の良し悪しを気にして、悪いイメージの物に苦痛を感じる
- 近隣の生活音や動物の鳴き声など、特定の音が聞こえるのが気になり避けようとする など
強迫行為の現れ方
強迫行為は強迫観念を打ち消したい衝動で起きる行動で強迫性障害の大きな特徴の1つです。
強迫行為を行うことで一時的に安心しますが、次に同じような状況になった時、また強迫行為をせずにはいられなくなります。
強迫観念と強迫行為の悪循環を繰り返しているうちに、症状に捕らわれる時間が増えて日常生活に支障が及びます。
強迫性障害による強迫行為には以下のような例が挙げられます。
- トイレの後はシャワーで全身を洗い服も全て着替える
- 鍵を何度も掛けなおしに戻る
- ゴミを捨てる前にゴミ箱から全部出して一つ一つ確認する
- 鏡を覗き込み、左右対称と思えるまで髪を切り続ける
- 自分が通った道で誰か事故を起こしてケガをしたのではないか、戻って確かめる
強迫性障害による強迫行為は必要以上に繰り返し・やり過ぎが多く、常識や科学的に基づかなく合理的でない方法を取ります。
このような自分の中の独自のルールに従って行われる行為は「儀式行為」と呼ばれることもあります。
石鹸や洗剤を使いすぎたり洗濯しなければと思うため、皮膚が荒れたり、自宅で洗濯できないコートやジャケットは着ることができないため、冬でも薄着で外出することもあります。
繰り返すほど強化される「強迫行為」
強迫性障害における物や場所、数といったその人にとって強迫症状を引き起こすきっかけとなるものを「トリガー」と呼びます。トリガーは「引きがね」という意味です。
強迫性障害の人のトリガーが引かれた状態になると、強迫観念が生じて強迫行為をしたくなります。
強迫行為を終えると、不快感や苦痛状態から抜け出しますが、これは一時的なものとされています。
再びトリガーが引かれる状態になった時、また強迫行為をせずにいられない衝動に駆られ、繰り返せば繰り返すほど症状が重くなる悪循環に陥るのです。
症状が重くなるにつれ、時間が奪われる
強迫性障害が発症すると、依然は特に何も感じなかった行動の一つ一つに苦痛が伴い、対処に時間がかかるようになります。
強迫性障害を持つ人自身でも「どうしてこんなことに時間をかけているのかわからない。以前のようにきちんとしなくては」と焦れば焦るほど緊張や不安が増して悪循環に陥ってしまうのです。
コントロールが難しい
強迫性障害が重くなるにつれ、自分の意思で強迫行為を中断したり、抑えることが難しくなります。
自分でも心の中では本当はやりたくないのにやらざるを得ない、やりすぎなのはわかっているという違和感や不合理感を抱えて苦しんでいます。
何度も強迫性障害による強迫行為を繰り返すうちに、強迫性障害になる前はどうしていたのかが思い出せずに悩むのです。
強迫行為をしている時の状態
強迫性障害による強迫行為をしている時は、強迫観念による不安や恐怖、嫌悪感、怒り、罪悪感などの感情を無くそうと一心不乱になっています。
注意が全て強迫観念の対象物に集中しているため、強迫行為を行っている時は綱渡りで一歩も踏み外してはいけないような極度の緊張感が走っています。
声をかけられたり、行為を遮られると最初からやり直しをしなければならないと感じて気が気ではない状態なのです。
強迫性障害を持つ方の症状に合わせた仕事・就職活動
強迫性障害は適切な治療を受けていれば、かかる時間はそれぞれですが社会復帰できることが多くあります。
しかし、強迫性障害が就職活動を始める際に、仕事場で症状が出るのではないかと悩んでいる人も多くいます。
まずは、主治医・心理士に相談して、就職後に症状が現れた際も相談します。認知行動療法を受けている期間の人は、仕事内容に合わせた課題を設定して取り組むこともできます。
強迫性障害は最近こそ知名度が高くなってきましたが、まだまだ理解が関係者や勤務先に足りないことも多いです。
そんな時は強迫性障害を周りに理解してもらうために必要に応じて医師に診断書や意見書を書いてもらうこともできます。
強迫性障害の方は働き方においても、出勤日数や場所、時間帯など負担が少ない仕事から始めると良いでしょう。
強迫性障害とはの症状のタイプによって仕事内容も考慮することが大切です。
そこで知っておきたいのが就労移行支援事業所。この就労移行支援事業所は強迫性障害などの障害や精神疾患を持った求職者を一般企業への就職や仕事場探しまでサポートするためにある機関です。
強迫性障害が働きやすい仕事や業種
強迫性障害の方は、その症状(脅迫行為)によって適している仕事は異なってくるので、まずは自分の症状を見極めることが長く仕事を続けるうえで重要です。
例えば、潔癖のような脅迫行為がある方は、他人と一緒に仕事を行うことや汚れを伴う仕事は苦痛に感じることが多いと思います。
この場合、おすすめの仕事としては以下のような在宅やフリーランスでも行える仕事が良いでしょう。
- ライター業
- WEBデザイナー
- プログラマーやシステムエンジニア
- データ入力業務(事務職)
一方、忘れていないか、ミスしていないかなどの脅迫行為がある強迫性障害の方は、人と接することはそこまでストレスにならないはずです。
他方では、自分のミスや間違いが仕事に大きな影響を与えるような職種は不安やストレスにつながるので、事務職は毎回確認して作業が遅いと思われることも多いので、おすすめできません。
単調な仕事だったり、クリエイティブな仕事のほうが適していると言えるでしょう。
- 軽作業、工場のライン業務
- WEBデザイナー
- 整備員
- 営業職
ただし、自分の強迫性障害の症状を分かっていても、本当に上記のような仕事を向いているかは判断が難しいですよね。
そこでおすすめなのが、就労移行支援事業所を利用して仕事探しや就職活動のサポートを受けることです。
就労移行支援事業所では、脅迫性障害の方が多く利用しており、就職前に訓練などを経て、希望する仕事への就職を実現しています。
次の項目では強迫性障害の方に是非利用をおすすめしたい、この就労移行支援事業所について詳しくお話をしていきます。
就労移行支援事業所で就職までのサポートを受けよう
就労移行支援事業所は就労移行支援制度に基づき作られた機関で全国地方自治体に3,300カ所以上もあります。
基本的に利用は無料(※前年度の世帯収入によります)で利用期間は基本的に2年間となっています。
主なサポート内容は以下のようなものがあります。
- 就職までに必要なスキルを学ぶための計画、プログラム提供
- ビジネススキルの習得や感情コントロールなどの習得サポート
- 就職活動支援
- 職場定着支援
それぞれを詳しくみてみましょう。
就職までに必要なスキルを学ぶための計画、プログラム提供
就労移行支援事業所のスタッフがまずは強迫性障害を持つ方とカウンセリングを行い、一人一人にあった職業(適職)を見つける作業を行います。
カウンセリングの結果を参考に就職までの道のりを逆算し就労移行支援事業所の方と一緒にプログラムを作っていきます。
もちろん強迫性障害の方にあったペースで進めていくので安心です。
ビジネススキルの習得や感情コントロールなどの習得サポート
就労移行支援事業所では目指すゴールが見えてきたところで、就職に必要なビジネススキルの習得はもちろんビジネスマナーや対人コミュニケーションを学んでいきます。
強迫性障害の方はこの部分を苦手とする方が多いので非常に大事なステップです。
また就労移行支援事業所に毎日通うことによって実際に就職した際に時間通りに職場に行くリズムを作ったりもします。
それに加え、強迫性障害を持つ方がスムーズに社会生活を送れるように、不安な気持ちのコントロールや強迫観念との付き合い方も就労移行支援事業所で学ぶこともできるでしょう。
就職活動支援
就労移行支援事業所は仕事の斡旋組織ではないので、直接企業からの仕事の求人紹介を就労移行支援事業所の利用者にすることはありません。
それらはハローワークなどが行うサービス業務で就労移行支援事業所は利用者との間に入りスムーズに就職活動が行えるようにサポートを行います。
ただし、雇用主側がOKすれば面接試験に就労移行支援事業所のスタッフが同行してくれるサービスもるので、就職活動が不安な強迫性障害の方にとっては安心感が違います。
職場定着支援
希望する就職先の採用を勝ち取った後もそれで就労移行支援事業所のサービスが完了するわけではありません。
大事な職場定着支援という大事なサポートが残っています。
どうしても強迫性障害などを持つ方は障害や病気によって様々な面で不利な状態に陥ることもしばしば見受けられます。
例えば、治療のために休む必要があったりした時に代わりにコミュニケーションを取ったり、他の正社員や上司への障害や病気への理解を求めたりなどをします。
障害者手帳がなくても利用可能
就労移行支援事業所の利用は障害者手帳がなくても可能な場合があります。強迫性障害を患っていても障害者手帳がない場合もあるでしょう。
その場合は医師からの診断書や医療機関への通院記録があれば就労移行支援事業所を利用できる場合があります。
就労移行支援事業所の利用料について
就労移行支援事業所は前年の世帯所得の額に基づいて定められています。
世帯の収入状況 | 就労移行支援事業所利用負担額 | |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 無料 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 無料 |
一般1 | 市町村民税課税世帯 | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
強迫性障害の人が就労移行支援事業所で受けられるトレーニング内容
強迫性障害の方が一般企業で就職できるよう、就労移行支援事業所では様々なプログラムを用意しています。
弊社チャレンジド・アソウで行っているカリキュラムの事例を参考に、就労移行支援事業所ではどんなサポートが受けられるか見てみましょう。
就労移行支援事業所では、利用者一人ひとりにあった訓練やトレーニングを行っており、弊社でも自分だけのカリキュラムを作成して就職支援を行っていきます。
様々なカリキュラムがありますが、主な就労移行支援の内容としては
- ビジネスマナー
- ビジネスコミュニケーション
- パソコン
- しごトレ(マイチャレンジ)
などがあります(一部事業所では受けられない場合があります)。
特徴てきなのは「しごトレ(マイチャレンジ)」のプログラムで、事務や商品管理の仕事に関連した100項目以上の実務実習が用意されています。実際にデータ入力やピッキング、棚卸しなどを経験することで自分の得意・不得意分野を見極めながら最適な仕事を見つけたり、スキルアップにつなげたりしていく就労移行支援です。
就労移行支援事業所では、興味がある仕事を職業適性などを通じて実体験で見極めることができるので、向いてる仕事やできない作業を知ることができます。
自分に向いてる仕事、できる業務を知ることができれば、就職後も続けやすいメリットがあります。
したがって、強迫性障害の人で就職して働くことに少しでも興味があるなら就労移行支援事業所でトレーニングを受けてみてはいかがでしょうか。
仕事や就職の事なら一人で悩まずに就労移行支援事業所に相談を!
強迫性障害を患ってしまうと日常生活を送る上で様々な不具合が生じますし、強迫行為を行わなくてはいけないためなかなか落ち着いた行動を行うことが難しいです。
また、細かいことを気にしない方法は簡単には見つかりません。なので、強迫性障害を持つ方が社会に出て仕事をしたりするには、自分がうまく強迫性障害と折り合いをつけること、そして周りからの理解を得ることが肝心です。
それら全て合わせて就労移行支援事業所で相談をすることができます。
一人で悩まずに積極的な就労移行支援事業所にまずはカウンセリングを受けにいってみるのが良いでしょう。