高機能広汎性発達障害は自閉症スペクトラムのことで、12歳ごろまでに発症するものです。
しかし、高機能広汎性発達障害は子どものころは気づかれにくく、社会に出てからさまざまな問題が表面化して発達障害であることが判明したというケースが多く見られます。
そこで今回は、高機能広汎性発達障害の特性を解説するとともに、障害のある人を仕事探しから定着するまで一貫してサポートする「就労移行支援」について詳しく紹介します。
チャレンジド・アソウ 広島事業所 /
チャレンジド・アソウ 大阪事業所 /
チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者
監修:池田 倫太郎
株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。
高機能広汎性発達障害とは
広汎性発達障害とは、自閉症やアスペルガー症候群、その他の自閉症性疾患の総称です。その中で知的障害を伴わないものを高機能広汎性発達障害といいます。
自閉症には、知的障害と言語の発達の遅れがある典型的な自閉症と、知的障害はないが言語の発達の遅れが見られる高機能自閉症があります。
アスペルガー症候群は、知的障害も言語の発達の遅れも認められないものの、社会性の面などで高機能自閉症と共通する特性を示すものです。
高機能自閉症とアスペルガー症候群の違いは?
最近では、高機能自閉症とアスペルガー症候群を区別するかどうかで医学界でも意見が分かれています。なぜなら、どちらの障害も特徴がよく似ているだけでなく、症状や起因する原因もほとんど同じだからです。
その上、これらを克服するために利用される就労移行支援事業所などでの支援内容も基本的に同じとなっているため。
自閉症の症状は幼少期に洗われることが多いのですが、高機能自閉症の場合、乳幼児期に言葉の遅れが現れたとしても、知的発達の遅れはない場合があります。そうなると、成長に伴って言語能力が身につくので、この時点では症状としてはアスペルガー症候群と変わらないケースも存在します。
こういった観点からも、高機能自閉症とアスペルガー症候群を区別しない考え方が強まっているのです。
このように、自閉症・高機能自閉症とアスペルガー症候群は重なる部分、考え方が多いことから、知的障害があるかないか、言語発達能力が高いか低いかで分けるのではなく、これらをまとめて「自閉症スペクトラム」として位置づける考え方が主流になっています。スペクトラムとは「連続体」という意味です。
世界的な診断基準であるアメリカ精神医学会の「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)」でも「広汎性発達障害」というカテゴリーはなくなり、「アスペルガー症候群」という診断名も消え、「自閉症スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)」という1つの診断名に統合されました。
日本では、発達障害の診断にはDSM-5のほかに、WHO(世界保健機関)が作成した「ICD-10(国際疾病分類第10版)」も用いられており、ICD-10を採用している医師は、「アスペルガー症候群」や「広汎性発達障害」「自閉症」という診断名を使う場合があります。
そのため、A病院では「自閉症スペクトラム」と診断された人が、Bクリニックでは「高機能広汎性発達障害」と診断されるということがあり得ます。それは誤診というわけではありませんから、診断名にはあまりこだわらないようにしましょう。
大事なのは、自分にはどんな特性があるかを認識し、どのような過ごし方をすれば今より生きやすくなるかということに目を向けることです。この記事でも、高機能広汎性発達障害と自閉症スペクトラムは同じ障害ととらえて説明します。
高機能広汎性発達障害の特性
高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の診断にはDSM-5やICD-10のほかに、イギリスの精神科医ローナ・ウイングが提唱した「三つ組みの障害」と呼ばれる診断基準も用いられています。
これはDSM-5などと違って発症年齢に定義がないことなどから臨床的に使いやすいとして広く用いられています。
次の3つの障害が認められる場合は高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)と診断されます。
1.社会性の障害
人と良好な関係を築くためには、その場の雰囲気にふさわしい振る舞いをして、相手に不快感を与えない配慮が必要です。
ところが、高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の人は、その場の空気を読むことが苦手で、場所がどこであれ相手がだれであれ意に介さず、「自分の思うようにする」という面があります。
そのため、周囲から「非常識」「自分勝手」と非難されることも多くなりますが、高機能広汎性発達障害の方は常識やマナーの意義が理解できず、自分が非難されている原因がわかりません。
また、相手との距離感をつかむことも困難で、必要以上に顔を近づけたり、大きな声で話したりして相手に迷惑がられることもあります。こうした行為は高機能広汎性発達障害の方によく見割れる社会性の障害のためで、決して悪ふざけしているわけではありません。
2.言語コミュニケーションの障害
高機能広汎性発達障害の方でもアスペルガー症候群の傾向が強い人は、言語発達に遅れがないので小さいときからおしゃべりで、難しい言葉を使ったりします。
しかし、言外に含まれる意味や簡略化された言葉を読み取ることが苦手で、「調子はどう?」などと聞かれると、「どうってなんのことですか?」と真顔で聞き返して相手を困惑させることもあります。本音と建前、社交辞令、冗談、お世辞、皮肉などが高機能広汎性発達障害の方には通じません。
また、独身女性に「どうして結婚しないの?」などとセクハラ発言をしてトラブルを起こすこともあります。
高機能広汎性発達障害の方は、世の中には言っていいことと悪いことがあるという暗黙のルールがわからないからで、悪気や嫌味で言っているわけではないのです。
3.想像力の障害
毎日同じ服を着る、同じ道を通る、同じランチを食べるといった限定・反復的な行動パターンも高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の特性です。
高機能広汎性発達障害の方は急に予定が変更になったりするとパニック状態になり、頭を壁に打ちつけるなどの自傷行為に及ぶこともあります。
これは、いつもと違う状況に置かれると、そのあとどのようにすればいいのかを想像することができないために、強い不安に襲われてしまうからです。
ただし、こうしたこだわりの強さはプラスの面に現れることもあります。興味のあることには驚くほどの集中力や粘り強さを発揮し、専門家並みの深い知識とスキルを身に着けている高機能広汎性発達障害の方もいます。
その他の特性――感覚統合の障害
3つ組の障害のほか、視覚や聴覚、嗅覚などの感覚が過敏だったり、逆に鈍感すぎるなど、感覚異常を伴う症状が高機能広汎性発達障害に該当することがあります。
視覚 | 視野に入るものがすべて目に飛び込んでくるため、必要なものを瞬時に見分けられない。 |
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聴覚 | 救急車のサイレンやドアの開閉音などが異常に大きく聞こえ、パニックになることもある。 |
嗅覚 | ふつうの人が好む芳香が、耐え難い悪臭に感じる。 |
味覚 | 毎日決まったものしか食べないなど偏食が激しい。 |
触覚 | 軽くさわられただけでも強くたたかれたように感じる。 |
温痛覚 | 注射やケガの痛みをあまり感じない。暑さや寒さにも鈍感で真冬でも半袖で過ごしたりする。 |
こうした感覚のアンバランスは、目や耳などの感覚器官を通して入ってきた情報を脳が瞬時に分類、整理し、統合する(まとめる)感覚情報処理機能が未発達のためと考えられています。
高機能広汎性発達障害はADHDやLDと併存しやすい
高機能広汎性発達障害の「発達障害」とは、成長とともに発達するはずの精神活動や運動能力などが、脳の認知機能の偏りによって妨げられるもので、それが原因で特有の性質(特性)が現れるものと考えられています。
文部科学省による発達障害者支援法では、「自閉症スペクトラム(ASD)」と「注意欠如多動性障害(ADHD)」、「学習障害(LD)」を発達障害に分類しています。
それぞれ定義も診断基準も異なりますが、併存することが多く、どれが基礎の障害か特定できないケースもあります。
併存するとそれだけ生きにくさが増すことになりますし、対処のしかたも異なってきますから、ADHDとLDの特性も把握しておきましょう。
ADHD(注意欠如多動性障害)の特性
ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorderの略)は、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの特性が出現します。
ひとりにすべて現れるとは限らず、どの特性が目立つかによって3つのタイプに分けられます。
不注意優位型 | 忘れ物やケアレスミスが多い、気が散りやすく集中力が続かない、物を片付けられないなどの特性が目立ちます。 |
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多動性・衝動性優位型 | 落ち着きがなく絶えず手足を動かすなど無意味な行動をとる多動性と、思いついたら後先を考えずに実行する衝動性の両方が現れます。 |
混合タイプ | 不注意と多動・衝動性のすべてが同程度で現れます。 |
多動・衝動性は中学生ごろまでには落ち着きますが、不注意は成人期まで持ち越すケースが多く見られます。
不注意が起こるのは、脳内の注意力や情動をつかさどる部位が十分機能しないためと考えられています。
ADHDの症状が強く現れている場合は、ストラテラなどの薬物療法が用いられることもあります。
LD(学習障害)の特性
LD(Learning disabilitiesの略)は、精神医学的には、「読む」「書く」「計算する・推論する」の3つの領域のうち、いずれかに障害が認められるものと定義されています。
文字をスラスラ読めない(読字障害)
LDで最も多く認められる特性が「頭はいいのに字が読むことができない」という読字障害で、「ディスレクシア」ともいいます。
1字1字は読めてもひとまとまりの単語としてとらえることができないことから、文章をどこで区切っていいかわからなくなってしまいます。
「ぬ」と「ね」など似ている字を読み間違えることもあります。
文字を正しく書けない(書字障害)
漢字の偏(へん)と旁(つくり)を逆に書く、鏡文字(左右逆の文字)を書く、読めないほどバランスの悪い文字を書くなど、文字や文章を書くことが難しいタイプで「書字障害」といいます。
英語の読み書きも苦手で、アルファベットのEをヨと逆向きに書いたりします。
計算・推論ができない(算数能力障害)
情報を一時的に保持しておく短期記憶機能(ワーキングメモリー)が弱いため、繰り上がったり繰り下がったりする数字を覚えていることができず、計算ができないか、できても時間がかかります。掛け算(九九)を覚えるのも困難です。
推論する能力が弱いと、数量概念を理解することができず、「1時間は60分」と教わっても、なぜ1時間が60分だということが理解できません。
障害が併存していると、その中でとくに強く現れている特性の診断名がつけられます。
また、幼児期など子供の頃は多動性が目立ったためADHDと診断されていた人が、大人になってから社会性の問題が目立つようになり、高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)と診断名が変わるというケースもしばしば見られます。
この場合も、前述したように診断名にこだわるのではなく、障害があるということを受け入れて、高機能広汎性発達障害でも自分らしく生きるためにどうすればいいかを考えるようにしたいものです。
高機能広汎性発達障害の方に向く仕事・向かない仕事
学生時代はコミュニケーションに問題があったり、読み書きや計算が苦手だったりした高機能広汎性発達障害の方でも、大人になって適職に就いて活躍している人がたくさんいます。
その一方、一流といわれる大学を卒業したのに転職を繰り返したり、仕事を辞めてひきこもり状態になる人がいます。
長続きしないのは、自分の適性に合わない仕事を選んでしまったからにほかなりません。
高機能広汎性発達障害の症状の1つであるコミュニケ―ション能力の弱い人が、営業や接客の職業に就くと、自分では一生懸命努力しているつもりでも成果が上がらず、結局仕事を辞めることになってしまいます。
しかし、それが高機能広汎性発達障害の特性ですから、自分の努力不足だと自己評価を下げる必要はありません。
高機能広汎性発達障害の方は「この仕事は自分に合わない」「この会社とは縁がなかった」と気持ちを切り替えることが大切です。
そして、自分の得意なこと、できることは何かを考えて、焦らずに仕事を選ぶようにしましょう
高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の人に向く仕事・向かない仕事
高機能広汎性発達障害の方に 向く仕事 |
高機能広汎性発達障害の方に 向かない仕事 |
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コミュニケーションをあまり必要としない職業
など |
複数の作業をスピーディーに処理しなければならない職業
など |
障害のある人が利用できる「就労移行支援」とは
高機能広汎性発達障害の方でも自分の適性にマッチした仕事を選ぶことができれば転職を繰り返すこともないのですが、適性を見極めるのは口で言うほど簡単なことではありません。
どんな仕事が向いているかわからないという高機能広汎性発達障害の方は、「就労移行支援」という制度を利用することをおすすめします。
これは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの1つで、以下のようなシステムになっています。
就労移行支援事業所の利用対象者
次の3つの要件を満たす人が就労移行支援を利用することができます。
- 18歳以上65歳未満の人
- 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、難病のある人
- 一般企業への就職を希望し、就労可能と見込まれる人
就労移行支援事業所の利用料金
利用料金は厚生労働大臣によって定められており、そのうちの9割を自治体が負担し、残り1割を利用者が就労移行支援事業所へ支払います。
利用者の負担額は通所日数や世帯年収によって異なりますが、上限額が下記のように決められているので、この額より多くなることはありません。
就労移行支援の利用料(負担上限月額)
生活保護受給世帯 | 0円 |
---|---|
市町村民税非課税世帯 | 0円 |
市町村民税課税世帯 (年収がおおむね600万円未満) |
9,300円 |
上記以外 | 37,200円 |
※20歳以上のグループホーム(共同生活援助)利用者で、市町村民税課税世帯の場合も37,200円
就労移行支援事業所の利用期間
就労移行支援サービスを受けられるのは2年間が原則です。就労した後も「定着支援」として引き続きサービスを受けることができます。
受給者証の申請・交付
就労移行支援を受けるには、市区町村の障害者福祉課にサービス利用計画書を提出して「受給者証」を交付してもらう必要があります。
この手続きは高機能広汎性発達障害の方が自分でもできますが、利用する事業所が決まっていないと受給者証は交付されないため、前もって事業所を選定して、その事業所から申請書を提出してもらうことが一般的です。
その際は、利用者が障害者であることを確認できる障害者手帳か医師の診断書または意見書を添付しなければなりません。
就労移行支援を提供する事業所
就労移行支援事業所は、社会法人やNPO法人、人材企業をはじめとした民間企業などによって運営されているもので、全国に3,400か所以上あります。
自分の住所地以外の地域の事業所でも利用可能です。就労移行支援事業所はwebサイトでも市区町村の公式ホームページでも探すことができます。
就労移行支援事業所で利用できるサービス
就労移行支援事業所のサービスは「利用計画書作成」から始まり、「職業訓練」「職場見学」「就労支援」と段階を踏んで、就労後の「定着支援」まで一貫して受けられることが特徴です。
1.利用計画書の作成
就労移行支援事業所で利用者と支援員が面談を行い、高機能広汎性発達障害の方の特性や能力、体調、就労に対する希望などをヒアリングし、そのうえで自分に適した計画書を作成します。
この計画書に高機能広汎性発達障害であることが確認できる書類を添えて市区町村の障害者福祉課で「受給者証」の申請を行います。
2.職業訓練
受給者証が交付されたら就労移行支援事業所に定期的に通い、高機能広汎性発達障害の方の目標に沿った計画書に従い職業訓練を受けます。具体的な訓練としては次のようなプログラムが組まれます。
職業訓練のプログラム(例)
- 挨拶のしかた、言葉づかい、身だしなみなどのビジネスマナー
- コミュニケーショントレーニング(仕事上起こりそうなトラブルの対処法なども含まれる)
- パソコントレーニング(基本的なデータ処理、ソフト活用のスキルアップなど)
- 読み・書き・計算などの基礎的学習
3.職場見学・体験実習
就労移行支援に協力してくれる企業を訪問して、実際に仕事を体験します。
社員の働きぶりを見ることで、社員として必要なことは何か、自分にできるかどうかなどを認識できるようになります。
職場体験を通じて、改めて課題や目標を再確認し、希望の仕事へ就職できるよう対策や訓点を行っていきます。
4.就職・就労支援
職業訓練や体験実習を通して高機能広汎性発達障害の方の適性を把握できたところで就職活動を始めます。
事業所はハローワークや障害者職業センターなどと連携して、自分の適性にマッチした仕事や求人を探します。
履歴書の書き方を指導したり、就労移行支援事業所によっては必要に応じて面接に同行することもあります。
5.職場定着支援
就職できた後も就労移行支援事業所のスタッフが職場を定期的に訪問して、高機能広汎性発達障害の方に効率的な働き方をアドバイスしたり、上司に対しては高機能広汎性発達障害の方の能力を引き出すための指導法を助言するなど、双方の掛け橋的な役割を果たします。
それによって自分は職場に適応することができ、転職を繰り返すようなこともなくなります。
なお、定着支援の内容は就労移行支援事業所によって異なります。なかには定着支援を実施していない就労移行支援事業所もあるので事前に確認するようにしましょう。
就労移行支援を利用するメリット・デメリット
高機能広汎性発達障害の方でも利用できる就労移行支援について紹介してきましたが、では利用するにあたってどんなメリットやデメリットがあるのかを確認してみましょう。
メリット | デメリット |
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就労移行支援事業所を利用することで高機能広汎性発達障害の方は上記のようなメリットおよびデメリットがあります。
先に就労移行支援事業所で受けられるサービスで紹介した通り、高機能広汎性発達障害の方ひとりひとりに合った課題や目標を立てて、就職が実現できるよう様々なプログラムを受講していきます。
したがって、仕事に直結したスキルや働く上で最低限必要なビジネスマナーやコミュニケーションスキルを身につけることが可能です。
また、訓練は朝から決まった時間割で実施されているので、規則正しい生活を送りながら自然と生活リズムが整えていくことができます。
もちろん、高機能広汎性発達障害の方で体調が安定していない人や、決まった時間に通うことがまだまだ難しい場合は、週2日など最初は無理のない範囲から始めて、徐々に慣れていく利用者も多いので心配ありません。
さらに、就労移行支援の魅力と言えば、就職するまでのサポートが受けられるだけでなく、仕事が決まって働き始めた後も継続して支援が受けられることです。
高機能広汎性発達障害の方に限らず、障害者の方は仕事が決まってもなかなか長期間働き続けることが困難な人が多いのが現実。
しかし、就労移行支援事業所の多くは職場定着支援も実施しているので、多くの利用者が長期間のキャリア形成を実現しています。
いっぽう、デメリットとしては、就労移行支援事業所ではカリキュラムに従って一般企業へ就職できるよう着実にステップアップを図っていくため、仕事が決まるまである程度の時間が必要です。
中には就労移行支援事業所の利用期間は原則2年ですが、半年足らずの利用で仕事が決まる人もいます。
ただし、自分の高機能広汎性発達障害の特性を見極めて、必要な訓練を行い適切な仕事に就くためにはある程度の時間が必要なことも事実です。
また、就労移行支援事業所の利用料金は無料の人が多いですが、前年度の世帯収入に対して利用料が発生することがあるので高機能広汎性発達障害の方の中には費用負担が生じることもあります。
最後に、就労移行支援事業所は採用する企業側からの評価も高く、障害者雇用枠で多くの利用者が就職を実現していますが、絶対に一般企業へ就職できるとは限りません。
高機能広汎性発達障害の症状が強く、通常の事業所から内定がもらえないこともあります。
ただし、就労移行支援事業所から一般就労ができなかった場合、「就労継続支援」というサポートのもと、働く機会を提供してもらえるのでまずはこちらで必要な訓練を行いながら一般就労へ再チャレンジすることが可能です。
以上のように、就労移行支援事業所のメリットとデメリットを確認しましたが、メリットのほうが強いことが理解できのではないのでしょうか。
就労移行支援事業所では、高機能広汎性発達障害の方に対し柔軟なサポートを行っており、一般企業での雇用が難しい場合も、就労継続支援を用意して手厚く対応しています。
私たち就労移行支援事業所は、働きたいと思っている高機能広汎性発達障害の方にとって可能性を大きく広げられる支援制度だと思っております。
まとめ
就労移行支援を受けるには、高機能広汎性発達障害であることを確認するための書類が必要です。
まだ高機能広汎性発達障害の可能性や症状がある方で医師の診断を受けていない場合は、大人の発達障害に詳しい精神科医のいる病院等を受診するようにしましょう。
というのは、うつ病や統合失調症と診断されて長年治療を受けてきた人が、実は高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)であったことが判明したという症例が少なくないからです。
精神疾患と高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)は併存することはあっても本質的に別のものですからきちんと病院で診断してもらう必要があります。
近くに適切な病院がない場合は、都道府県に設置されている「発達障害者支援センター」に相談するといいでしょう。
センターでは高機能広汎性発達障害の方とその家族、関係者などの相談に対応しており、医療機関の紹介も行っています。
弊社チャレンジド・アソウでも高機能広汎性発達障害の方をはじめ精神障害や発達障害をもつ多くの方が利用している就労移行支援事業所ですので、お気軽にご相談下さい。