就労移行支援サービスの中で実施されるSST(ソーシャルスキルトレーニング)をご存知でしょうか。
簡単に言うと、障害のある方が就職して社会生活を行っていく上で直面する「どうすればいいのだろう」と感じる事柄、様々な困りごとに対して自分自身で対処出来るようにしていくための訓練のことです。
では、実際に就労移行支援サービスではどんな訓練をどんなプログラムで実施しているのかをこのページではご紹介していきます。
「SST」(社会生活技能訓練)とは
改めて、SST(ソーシャルスキルトレーニング)の意味から説明していきます。
漢字で書くと「社会生活技能訓練」と書くように、社会生活を送るうえで、人と人とが関わりながら生きていくために必要不可欠な能力を身につける訓練のことです。
つまり、障害を持っている方が社会の中で生活していくにあたって発生する様々な困難を上手に対処していけるようになるための実践的な練習をSSTと呼び、これを就労移行支援サービスで行っているのです。
SSTの必要性について
就労移行支援サービスで実施しているSSTで大切にしていることが「相手を尊重しながら、自分自身の考えをや思いを人に上手に伝えるコミュニケーション方法」を身につける訓練です。
障害者の方は、自分の考えや気持ち、相手に対する要求などを言葉にして伝えることが苦手だったり、相手への伝え方が分からないが故に伝えずにストレスを溜めてしまったり、こういった障害者の方の不安や悩みを解消するためのトレーニングです。
就労移行支援サービスを利用する障害者の方は、一般の企業で就労がしたいと思って利用していますが、SSTのトレーニングがないまま就職しても職場でのコミュニケーションに悩んでしまいます。
その結果、仕事の進め方分からず、業務理解が習得できない状態でストレスを溜めてしまい、結局長続きしないことが多々あります。
なので、SSTを通してより社会で生活していきやすいレベルのコミュニケーション能力をつける必要があります。
SSTの具体的なプログラム・講座について
実際に就労移行支援サービスで訓練されるトレーニングプログラムは下記の内容になります。
・質問の仕方を学ぶ
・依頼の仕方を学ぶ
・断り方を学ぶ
・質問された時の回答の仕方(はい・いいえ以外の)
こういった日常のコミュニケーションで必要となるスキルを就労移行支援事業所の職員の方と学んでいきます。
学ぶ方法は、テキストを利用した座学の形式ではなく、就労移行支援事業所の職員の方が中心となってワークショップ形式で行います。
実際に職場で起こり得る困りごとをテーマにした演技を行い、各グループでどのような対応が取れるか考え、課題に対して実際にロールプレイ(演じること)を行い解決方法を探っていきます。
自分たちの考え以外の解決方法を聞いてはメモをしておくなど、積極的な参加者が多くとても実りの多い講座です。
もちろん、上記の方法を訓練することが一番大切ですが、それ以外にもさまざまな体を使った動きや表現、ゲームなどを通して、基本的な挨拶の仕方、人との空間的な距離のとり方、人のペースと自分のペースの合わせ方、会話の中にある間の取り方、集団行動のとり方など、日々のコミュニケーションで基礎となる部分をトレーニングすることもできます。
SSTのトレーニングを通した就労移行支援の効果
実際にこれらのSSTの講座を受講し、トレーニングしたことで利用者の方にどんな効果が出るのでしょうか。
・これまで上手く断れなかったことも断る方法が分かった。
・いざ口にすると言葉にならなかった思いを伝える方法を知れた。
・練習とはいえ、落ち着いて断ることができた。
・自分では思いつかない言葉を他の参加者に教えてもらえたので断ることが出来た。
このように、SSTのプログラムを通して多くの方がコミュニケーションスキルに対して向上したことを感想からも実感いただけています。
ですが、上記のように全員が全員SSTで実施するトレーニング、訓練を通してコミュニケーションが上達するわけではありません。
就労移行支援サービスの参加者の中には、性格上もともとコミュニケーションが苦手でSSTを通してもあまり大きな変化がない方もいらっしゃいます。
実はこれも大きな成果と言うことができ、こういった性格であることを分かったので今後の就労移行支援では人と接することが少ない仕事で就職先を探せるのです。
また、そういった方の中にはプログラミングに目覚め、就労移行支援を利用してプログラマーとしてIT系の企業に就職されるパターンもあります。
そのため、この就労移行支援のSST訓練が参加者の方にとって何かしらの学びを与えてくれる非常に優れたプログラムになっています。
まとめ
就労移行支援サービスで実施されているSST(ソーシャルスキルトレーニング)がどんなプログラム内容か、どんな目的のものかご理解いただけましたでしょうか。
障害を持っていても、社会に出て世の中のために働きたいという方が非常にたくさんいらっしゃいます。その思いを現実にするためにも人と人のコミュニケーションの部分で不都合が少しでも無いように就労移行支援サービスのSSTが日々支援させていただいております。