「もう限界かもしれない」「このまま働き続けて大丈夫なのだろうか」
心や体が悲鳴をあげているときでも、多くの人はなんとか踏ん張ろうとします。
たとえば「休職」という言葉が頭をよぎりながらも、「会社に迷惑をかけてしまうのでは」「戻れなくなってしまうのでは」と不安が先立ち、なかなか一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
休職は「サボり」でも「逃げ」でもありません。
働き続けるために、いったん立ち止まって体と心を整えるための大切な制度です。
ただ「欠勤や休業との違いがわからない」「どのくらい休めるのか」「お金はどうなるのか」「復職するときに何が起きるのか」といった疑問が次々と湧き、調べれば調べるほど不安になってしまうこともあります。
この記事では、「休職とは何か」という基本から、条件・手続き・期間、休職中の給与や傷病手当金、社会保険・税金の扱い、メンタル不調による休職の実情、復職・退職の選択肢、そして企業と従業員の双方が知っておきたいポイントまでを、できるだけ専門用語をかみ砕きながら丁寧に解説していきます。
休職とは?基本的な定義と制度の概要を解説


そもそも休職とは何でしょうか?
「欠勤」「休業」「休職」と似た言葉が並ぶと、どれがどの状態を指すのか分かりにくくなりがちです。
ここでは、法律上の位置づけや、似た概念との違い、そして休職制度にはどのような種類があるのかを、順番に整理していきます。
休職の意味と法律上の位置づけ
休職とは、従業員と会社との雇用関係はそのままに、一時的に「働く義務」を停止してもらう状態を指します。
会社を辞めるわけではありませんが、一定期間は出勤せず、仕事から離れて療養や事情の整理に専念することになります。
多くの方が誤解しやすいのは、「休職」という言葉が法律(労働基準法など)に詳しく定義されているわけではない、という点です。
休職制度は、法律で一律に決められているというより、各企業の「就業規則」や「労働契約」で定められている社内ルールの一つと考えるとイメージしやすいでしょう。
そのため同じ「休職」であっても、会社によって対象となる理由や期間、給与の有無、復職の条件などが大きく異なります。
逆に言えば、「うちの会社には休職制度があるのか」「あるとしたらどのような条件で使えるのか」は、就業規則を確認しなければわからない、ということでもあります。
一方で、法律が関係しないわけではありません。
働く人の安全や健康を守るために、会社には「安全配慮義務」と呼ばれる義務があり、心身の状態によって働き続けることが難しい従業員に対して、必要な配慮や措置をとることが求められています。
メンタル不調などで休職が必要な場合、休職制度はこうした義務を果たすための重要な手段のひとつなのです。
休職と欠勤・休業の違いとは?混同しやすいポイントを整理
似ているようで異なるのが、「欠勤」「休業」「休職」という言葉です。
欠勤は、本来出勤するはずの日に出勤していない状態そのものを指します。
体調不良や家庭の事情など理由はさまざまですが、制度上はあくまで「その日の仕事を休んだ」という扱いであり、長期的な療養や配慮の枠組みとは別です。
有給休暇を使えば賃金は支払われますが、有給を使い切った後の欠勤は、多くの会社で無給扱いになります。
休業は、主に会社側の事情で働けなくなる場合に使われることが多い言葉です。
たとえば、経営上の理由で仕事が一時的に減っている、工場が止まっているなど、会社の都合で労働者に働いてもらえないときに、「休業手当」などとセットで語られます。
これに対して、休職は主に従業員側の事情、とくに病気やケガ、メンタル不調などによって働き続けるのが難しい場合に、会社が「一定期間、働く義務を免除する」と認めた状態を指します。
雇用は続きますが、出勤はせず、その代わりに療養や回復に専念することが前提とされます。
このように、どれも「働いていない」状態ではあるものの、その背景や位置づけは大きく異なります。
休職を考えるときは、「欠勤を繰り返している状態」から一歩進んで、「会社の制度として正式に休職扱いしてもらう」ことを選ぶのかどうか、という場面に立っていると意識するとよいでしょう。
休職制度の種類(私傷病・公務員・専従休職など)
休職とひとことで言っても、その中身や種類は職場によってさまざまです。
民間企業に多いのは「私傷病休職」と呼ばれるもので、業務外の理由による病気やケガ、メンタル不調などで働けなくなったときに使われます。
うつ病や適応障害などを理由とする休職は、ここに含まれることが一般的です。
一方で、仕事中や通勤中の事故・ケガなど、労災に関係するケースでは、「業務上傷病休職」のように扱いが分かれることもあります。
背景が業務に関係するかどうかで、労災保険の休業補償給付が受けられるかどうかが変わるため、制度上も区別されるのです。
公務員の場合は、法律や条例で休職制度が比較的細かく定められていることが多く、「病気休職」「専従休職」など用途別に複数の類型が用意されています。
休職期間や給与の有無、復職の条件も、民間企業と比べると明文化されやすい傾向にあります。
また病気以外にも、育児や介護、自己啓発(資格取得や留学など)を目的とする休職制度を設けている会社もあります。
これらは性質は異なりますが、「雇用を維持しながら一時的に働き方を変える」という意味では共通しており、「働き方の選択肢のひとつ」として捉えられます。
自分が検討しているのがどのタイプの休職に当たるのか、どの条件を満たす必要があるのかは、必ず自社の就業規則で確認しておきましょう。
休職の条件・手続きと流れ


休職を現実的に検討しはじめると、「自分は条件を満たしているのか」「会社にはどう伝えればいいのか」「診断書はいつ、どこで用意すればいいのか」と、実務的な不安が大きくなっていきます。
ここでは、休職が認められる一般的な条件と判断基準、申請から開始までの大まかな流れ、休職期間や延長、休職中の会社とのやりとりについて、順を追って見ていきます。
休職が認められる条件と判断基準
休職が認められるためには、まず「働き続けるのが難しいだけの理由がある」と会社が判断できる材料が必要です。
メンタル不調の場合、朝になると動悸がしたり、会社に行こうとすると吐き気やめまいが出たり、集中力が続かずミスが急増したりといった症状が続くことが多く、本人も「このままでは危ない」と感じ始めていることが少なくありません。
その一方で、「つらいけれど、まだ我慢できる気もする」「甘えだと言われないか不安だ」と、自分で自分の状態を軽く見積もってしまうこともよくあります。
そこで重要になるのが、医師による診断です。
心療内科や精神科を受診し、「休職が必要な状態かどうか」を第三者の視点で評価してもらうことが、休職のスタートラインに立つ第一歩になります。
多くの会社では、休職の判断材料として医師の診断書を求めています。
「○週間の自宅療養を要する」「当面の就労は困難であり、休職が望ましい」といった文言が記載されることで、会社としても制度運用の判断がしやすくなります。
そしてもう一つの大きな条件が、就業規則で休職制度が定められているかどうかです。
そこに「私傷病により引き続き○日以上勤務できない場合、会社は休職を命じることができる」といった条文が設けられていることもあり、勤続年数や雇用形態によって適用対象が分かれている場合もあります。
このように、「医師の診断」と「就業規則上の条件」のどちらか又は両方を満たすことが、休職を会社に認めてもらうための大きな柱になります。
そのうえで、本人と会社とが話し合い、具体的な休職開始日や期間、今後の見通しをすり合わせていくことになります。
申請から開始までの手続きと必要書類(診断書・就業規則の確認)
実際の手続きは、頭の中でイメージするよりもシンプルな流れです。
ただ心情的には負担に感じる部分もあるため、あらかじめ段取りを知っておくと少し気持ちが楽になります。
まずは自分の会社の就業規則や雇用契約書を確認し、「休職」に関する項目を探します。
社内ポータルサイトに掲載されている場合もありますし、紙の就業規則を人事から取り寄せる必要がある場合もあります。
そこで休職の対象となる条件、最長期間、給与の有無、復職の条件など、基本的なルールをチェックします。
次に、医療機関を受診して診断書を作成してもらいます。
診断書には、病名のみを書いてもらう場合もあれば、「就労は困難」「自宅療養が必要」「通勤はできるが勤務時間を短縮すべき」など、具体的に働き方に関するコメントが含まれることもあります。
どのような内容を書いてもらうかについて不安がある場合は、診察時に医師に相談してみるとよいでしょう。
診断書が用意できたら、上司や人事に対して休職の希望を伝えます。
口頭での相談から始めるケースもあれば、休職願や申請書の提出が求められる会社もあります。
不安であれば、「医師から休職が必要と診断されました」「就業規則の休職制度を利用したいと考えています」といったように、診断書があることと制度に沿って申請したい意思をセットで伝えると、話が進みやすくなります。
会社側は、診断書や申請書を受け取り、就業規則にもとづいて休職の可否や期間を判断します。
その過程で、休職開始日、休職期間、給与の扱い、社会保険や傷病手当金などの説明が行われ、正式に休職がスタートします。
ここまでのプロセスは、決して「一気にやらなければいけないこと」ではありません。
体調がつらいなかで動くのは大変ですから、信頼できる家族や友人、産業医、社内の相談窓口などにも頼りながら、一つひとつ進めていきましょう。
休職期間・延長・期間満了時の取扱い
休職を考える際、多くの人が気になることは「どのくらい休めるのか」ではないでしょうか。
休職期間は、会社の就業規則によってまちまちですが、「最長で半年」「勤続年数に応じて1年まで」「初回は3ヶ月、延長でさらに3ヶ月」など、あらかじめ上限が決められていることがほとんどです。
メンタル不調の場合、数週間で劇的に回復することはむしろ稀で、数ヶ月単位での療養を必要とするケースが多く見られます。
そのため診断書に書かれた目安期間と、就業規則上の休職期間を照らし合わせながら、「どのくらいのペースで治療と生活リズムを整えていくのか」を考えることが大切になります。
症状の回復が遅れている場合、就業規則にもとづき休職期間の延長を申し出ることができるケースもあります。
延長には改めて診断書の提出が必要になることが多く、「現在も就労が困難であり、療養継続が必要」といった内容が記されます。
一方で、定められた休職期間の上限に達してもなお復職が難しい場合、会社が「休職期間満了」として退職や解雇の手続きを進めることがあります。
この点は非常に不安を感じやすいところですが、逆に言えば、「休職期間をどう使うか」「復職に向けて何を整えるか」によって、その後の選択肢の幅が変わってくる、とも言えます。
私たちチャレンジド・アソウでは、休職中の過ごし方や復職・転職サポートを行っています。
詳しくは資料請求や無料相談など、お気軽にお問い合わせください。
休職中の連絡・面談・人事との対応
休職に入ると「もう会社のことは考えなくていい」と感じたい一方で、「連絡はどのくらい取るべきか」「連絡が来たらどう対応すればいいか」といった不安も出やすくなります。
基本的には、休職前の段階で、会社との連絡方法や頻度をすり合わせておくことが望ましいです。
たとえば「月に一度、メールで近況報告をする」「体調に変化があったときだけ連絡する」「復職が現実的に見えてきた段階で面談を設定する」など、ルールを明確にしておくと、お互いに安心です。
メンタル不調の場合、休職序盤は特に、メール一本を書くことすら負担に感じることもあります。
そのことも含めて、「今は主治医からあまり仕事のことを考えないようにと言われている」など、可能な範囲で会社に伝えておくと、期待値のズレを減らすことができます。
復職が視野に入ってくると、人事や上司、産業医との面談が行われることが増えてきます。そこで、現在の体調や生活リズム、どの程度の勤務時間なら無理なく働けそうか、どのような業務内容なら負担が少ないか、といったことを率直に話し合っていきます。
「休職中に会社と関わるのはつらい」と感じる方は、私たちのようなリワーク支援を活用することも1つです。
あなたのご状況に応じて、復職時期や異動の有無、仕事内容の調整、復職初期の働き方など会社と調整します。
休職中の給与・手当・社会保険料の取扱い


休職を考えるとき、大きな不安になるのが「お金」の問題です。
「収入がなくなるのではないか」「家賃やローン、生活費はどうすればいいのか」「社会保険や税金はどうなるのか」といった疑問は避けて通れません。
ここでは、休職中の給与やボーナス、傷病手当金などの公的給付、社会保険料や税金、福利厚生との関係についてご案内します。
休職期間中の給料・賃金・ボーナス・賞与の支給有無
多くの会社では、休職に入ると「通常の給与(賃金)の支給は止まる」運用になっています。
有給休暇として休んでいる間は給与が支払われますが、有給を使い切ったあとの長期療養は、就業規則上「休職扱い」となり、その期間は無給とされることが一般的です。
ただし、すべての会社が「完全にゼロ」というわけではなく、一定期間だけ基本給の一部を支給する「休職手当」のような制度を設けているところもあります。
また健康保険組合や共済組合を通じて独自の給付が用意されているケースもあります。
賞与についても、会社ごとの規定に左右されますが、多くの場合は「一定期間以上勤務していること」が支給条件に含まれているため、休職期間中の分は減額や不支給となることが少なくありません。
つまり「休職したら収入がゼロになるかどうか」は、就業規則と健康保険・共済の制度をセットで確認して初めて見えてきます。
不安を抱えたままにせず、人事や総務に「休職時の給与や賞与の扱い」について具体的に質問しておくことが、生活設計を立てるうえで重要です。
傷病手当金・労災保険など各種手当の受給条件と申請方法
休職中の大きな支えとなるのが、健康保険から支給される「傷病手当金」です。
これは、病気やケガのために働けなくなり、給与が支払われない期間の生活をサポートする公的な制度です。
大まかな条件としては、健康保険の被保険者であること、病気やケガのために仕事に就けない状態であること、その状態が連続して3日間続き、4日目以降も働けない日があること、そしてその期間に給与が支払われていないこと、などが挙げられます。
メンタル不調による休職も対象となり得ます。
支給される金額は、大まかに言えば「休業前の給与の約3分の2」に相当する額で、最長1年6か月まで受け取れる場合があります。
具体的な金額や期間は、加入している健康保険の種類や、休職前の給与によって変わります。
申請にはいくつかの書類が必要で、本人が記入する部分、会社が証明する部分、医師が療養状況を記載する部分に分かれています。
通常は、会社の人事や健保組合が書類の書き方や流れを案内してくれるので、「傷病手当金の申請をしたい」と伝えれば、必要な用紙や手順を教えてもらえるはずです。
一方、休職の原因が仕事中や通勤中の事故・過労など、明らかに「業務に関連する」と考えられる場合には、労災保険から「休業補償給付」を受けられることもあります。
この場合は、健康保険ではなく労災保険がメインの窓口となり、会社を通じて労働基準監督署に申請する流れになります。
いずれの制度も、「知っているかどうか」で大きな差が出ます。
休職を決める段階で一度、「自分の場合は傷病手当金や労災の対象になりそうか」を人事や社労士、あるいは医療機関の相談窓口などに確認しておくと、経済的不安が少し軽くなります。
社会保険料・住民税・税金の支払い義務と免除制度
休職をすると、給与が減ったり途絶えたりしますが、その間の社会保険料や税金がどうなるのかも重要なポイントです。
まず健康保険や厚生年金の保険料については、雇用が続いている限り原則として加入も継続することになります。
給与が出ていない場合でも、会社が立て替えているか、本人が直接支払う形になっていることが多く、のちにまとめて精算するケースもあります。
この点についても、事前に人事に確認しておくとよいでしょう。
住民税は、原則として前年の所得に基づいて計算されるため、たとえ今年休職して収入が減っても、その年の住民税は急には減りません。ただし、長期的に収入が下がった場合は、翌年以降の負担が軽くなる可能性があります。また、自治体によっては、収入減少時に住民税の減免や猶予制度を用意していることもあります。
所得税に関しては、休職期間中の給与がほとんどない場合には、そもそも源泉徴収される額が少なくなったり、年末調整や確定申告で還付されたりすることもあります。「税金のことはよくわからない」という場合は、会社の総務や税務署、あるいは無料相談窓口などに気軽に聞いてみるとよいでしょう。
大切なのは「わからないまま放置しない」ことです。
保険料の未払いが溜まってから気付くと、心身の負担がさらに大きくなってしまいます。
休職が現実味を帯びてきた段階で、一度「お金と制度」の整理をしておくと、少し先の見通しが立てやすくなります。
休職中の福利厚生やその他給付金(介護・育児休業給付金など)
会社によっては、休職中であっても利用できる福利厚生制度が数多く用意されています。
たとえばカウンセリングサービスやメンタルヘルス相談窓口、EAP(従業員支援プログラム)など、休職中の従業員を支えるために設けられている場合もあります。
また育児や介護とメンタル不調が複雑に絡み合っているケースでは、育児休業給付金や介護休業給付金の制度と、休職制度との関係を整理する必要があります。
状況によっては、どの制度を優先的に使うかによって、受けられる支援が変わることもあります。
さらに、会社や自治体が提供しているリワーク・復職支援プログラムを利用することで、通所リハビリのような形で生活リズムを整え、少しずつ「仕事モード」に戻していくこともできます。
こうしたプログラムの中には、保険適用や公費負担があるものもあり、「思ったより自己負担が少なかった」という声も多く聞かれます。
休職中はどうしても「自分は何もできていない」と感じてしまいがちですが、こうした制度を活用すること自体が、「療養しながら、復職に向けて準備している」大切な一歩です。
利用できる支援は、積極的に調べてみてみましょう。
休職の理由・事例―うつ病・メンタル不調時の休職
一口に休職と言っても、実際にはさまざまな背景があります。
なかでも近年とくに増えているのが、うつ病や適応障害といったメンタル不調を理由とする休職です。
この章では、公務員と民間の違いを含めた代表的な事例、自己都合・企業都合といった視点、事故や業務外傷病による休職、そして「休職したら終わりなのでは」という不安について考えていきます。
精神疾患(うつ病など)による休職事例と公務員・民間の違い


メンタル不調で休職に至るきっかけは、本当に人それぞれです。
きっかけとなる出来事(人間関係のトラブル、長時間労働、ハラスメント、家庭環境の変化など)は一つでも、そこに至るまでに積み重なったストレスや気質、体質は、人の数だけ違います。
ある人は、部署異動を機に業務量が急激に増え、残業が当たり前になった結果、朝起きられなくなり、心療内科を受診して適応障害と診断されました。また別の人は、昔から頑張り過ぎてしまう性格で、周囲から期待される立場になったことで自分を追い込み、うつ病を発症してしまいました。
公務員の場合、休職制度が法令や条例である程度形づくられており、休職期間や給与の扱い、復職までのステップが比較的整っています。
メンタル不調を理由とした休職者も多く、制度として想定されている分、周囲の理解が得やすいこともあります。
一方で民間企業、とくに中小企業では、休職制度そのものが十分に整っていなかったり、制度はあっても運用の経験が少なかったりすることがあります。そのため、「うつ病や適応障害で休む」ということへの理解が追いついていない職場も、残念ながらまだ少なくありません。
だからこそ、自分だけで全てを抱え込むのではなく、医師や産業医、外部の相談窓口などをうまく頼りながら、「制度をどう使えばいいのか」「どのように職場とコミュニケーションを取っていけばいいのか」を一緒に考えてもらうことが大切になってきます。
私たちもあなたのお力になれるようにサポート可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
自己都合と企業都合の休職理由・注意点
休職に至る事情は複雑ですが、会社との関係でよく話題になるのが、「自己都合」と「企業都合」という視点です。
例えば、「仕事が自分に合わない」「どうしても会社に行くのが怖い」といった本人側の事情を、自分自身も「私の弱さのせい」と考えてしまうことがあります。
この場合、周囲から見ても「自己都合」に見えやすく、会社の理解を得にくいと感じてしまうかもしれません。
しかし実際には、長時間労働や人手不足、急な配置転換や過大なノルマなど、職場環境の影響がメンタル不調の背景にあることが少なくありません。
業務量や人間関係、評価のされ方など、職場側の要因が積み重なった結果として症状が出ているケースも多く、単純に「自己責任」と片づけられるものではないのです。
一方で、会社側にも「業務を継続しなければならない」「他の従業員との公平性を保たなければならない」という事情があります。そのなかで、「どこまで配慮できるか」「どのように制度を運用するか」を判断していくことになります。
大切なのは、すべてを「自己都合」「企業都合」と白黒で分けることではなく、「どのような要因が重なって今の状態に至っているのか」を整理したうえで、これからどうしていくかを一緒に考える姿勢です。そのためにも、感情だけでなく、事実や経緯を整理することが役に立ちます。
事故・私傷病・業務外傷病による休職の流れとポイント
休職の背景には、メンタル不調だけでなく、ケガや病気など、さまざまな事情があります。通勤中の事故で骨折してしまったり、プライベートのスポーツ中に大きなケガをしたり、持病が悪化して入院が必要になったりといったケースもあります。
このとき重要になるのが、「それが仕事に関連するものかどうか」という点です。
仕事中や通勤中の事故が原因であれば、労災保険の対象となる可能性が高くなります。労災と認定されれば、労災保険から休業補償給付が支給されるほか、治療費の自己負担も軽くなるなど、公的なサポートが増えます。
一方、プライベートの事故や業務とは関係のない病気の場合は、健康保険や会社の私傷病休職制度が中心となります。
どの制度が使えるのか、どこに申請するのかが変わってくるため、まずは「これは業務上か、業務外か」を会社と一緒に確認していくことが必要です。
メンタル不調の場合も、長時間労働やハラスメントなど明らかに職場環境が原因と考えられる場合には、労災として認定されることがあります。
ただし、メンタル面の労災は認定基準も複雑で、時間もかかりやすいため、専門家のサポートを得ながら慎重に進める必要があります。
いずれにせよ、「自分の状況はどの制度の対象になり得るのか」を早めに確認しておくことで、休職中の経済的な見通しや、復職後の働き方の選択肢が具体的に見えてきます。
休職したら終わり?誤解と現実・退職や解雇との関係
休職を考えるとき、多くの人が心のどこかで「一度休んだら、もう戻れないのでは」「周りからどう思われるだろう」といった不安を抱えています。
「休職=終わり」と感じてしまうの方も少なくありません。
しかし実際には、休職を経て復職し、その後も長く働き続けている人はたくさんいます。
むしろ限界を超えて働き続けた結果、突然倒れてしまったり、深刻なうつ状態に陥って長期の入院が必要になったりするより、早めに休職という選択肢を取った方が、結果的に回復の道筋がつきやすいことも多くあります。
一方で、休職が「必ず元通りの働き方に戻れる魔法の制度」というわけでもありません。
復職後に再び不調になり、再休職や退職を選ぶ人も一定数います。
また休職期間が満了しても復職が難しい場合には、会社から退職や解雇の打診があることも、現実として存在します。
だからこそ、「休職=終わり」と思い込んでしまうのではなく、「これからどう生きていくかを考えるための時間を確保する制度」と捉えることが大切です。
この時間を使って、治療に専念し、自分の価値観や働き方を見つめ直し、必要であれば転職や仕事の方向転換も視野に入れていく。
そのプロセス全体を含めて、「休職」と考えてみてはいかがでしょうか?
休職を選ぶことは、決して負けではありません。今の自分を守り、この先の人生をきちんと歩んでいくための、勇気ある選択のひとつです。
そしてその勇気ある選択をしたあなたを支えるために、私たちチャレンジド・アソウは存在しています。
復職・退職・解雇までの流れと注意点


休職が始まったとき、「まずは今日明日を乗り切ることで精一杯」な状態になります。
しかし時間の経過とともに、「いつかは復職するのか」「転職も考えるべきか」「もし復職できなかったらどうなるのか」という問題が現実味を帯びてきます。
ここでは、復職の手続きや判断基準、復職後に気をつけたいこと、復職が難しい場合の選択肢について整理していきます。
また私たちチャレンジド・アソウでは、休職中の方が復職に向けての不安や怖さを少なくし、安心して職場復帰できるようにサポートしています。
具体的に下記のリワークプログラムを実施しています。
- 最初は週1日など、自分のペースで利用開始
- あなただけの支援プランを作成し、自分に合ったプログラムが受けられる
- たくさん話を聞いてもらえるカウンセリング
- 「CCフィットネス」で体力&生活リズムの改善
- eラーニングで休職中にスキルアップ
- セルフケアとアラートサインを学び、ストレスを溜め込まない
- あなたに合った時期や部署、仕事内容で復職できるように企業と調整(職場復帰支援プランの作成、復職の時期や休職期間の延長、復職する部署や仕事内容・業務量の調整、最初は短時間勤務やテレワークからスタート、合理的配慮のレクチャー など)
- 再発・再休職しないように復職後も継続サポート
詳しくは下記の特設サイトをご覧いただくか、資料をご請求ください。
復職の手続きと判断基準―準備・診断書・リハビリ出勤の実際
復職を意識し始めるタイミングは、人によって違います。
ある程度体調が落ち着き、生活リズムが整ってきたときに「そろそろ仕事のことを考えてもいいかもしれない」と感じる人もいれば、休職期間の残りが少なくなり、焦りから「戻らなければ」と感じる人もいます。
いずれの場合も、まず大切なのは主治医の判断です。
復職を希望していることを医師に伝え、今の状態でどの程度の仕事ができそうか、どのくらいの時間・頻度なら無理なく働けそうかを一緒に考えてもらいます。
その上で、「就労可能」「条件付きで就労可能」「まだ就労は難しい」といった判断が診断書に反映されます。
会社はその診断書をもとに、産業医や人事との面談を行い、復職可否や働き方について検討します。
ここでよく登場するのが、「リハビリ出勤」「試し出社」などと呼ばれる段階的な復職方法です。
最初は週に数日、短時間勤務からスタートし、少しずつ勤務日数と時間を伸ばしていくことで、心身への負担を抑えながら職場に慣れていくことができます。
重要なのは「診断書が出たからもう完全に大丈夫」というわけではなく、復職はあくまでスタートラインに立ち直るプロセスだということです。
無理なく働き続けられるペースや環境を、会社と一緒に模索していく姿勢が求められます。
休職から復職後に注意すべきポイント(面談・職場支援など)
復職初日は、多くの人にとって大きな緊張を伴う日になります。
久しぶりに通勤電車に乗り、久しぶりに職場の門をくぐり、久しぶりに同僚の顔を見て、席に座る。
その一つひとつが、心身にとって負担でありながら、同時に「戻ってこられた」という成功体験でもあります。
復職後に大切なのは、最初から全力で飛ばそうとしないことです。
長く休んでいたからこそ、周囲に追いつかなければという焦りが出やすくなりますが、そこで頑張り過ぎてしまうと再び体調を崩してしまう危険があります。
会社に復職支援制度がある場合は、定期的な面談を上司や人事、産業医と行い、業務量や職場でのストレス、体調の変化についてこまめに共有していくとよいでしょう。
「最近は少し疲れやすくなっている」「この業務は負担が大きいので調整したい」といった率直な声は、早めに伝えるほど軌道修正しやすくなります。
また休職前にストレスの要因となっていた人間関係や業務内容が変わっていない場合には、配置転換や業務の見直しを事前に相談することも選択肢のひとつです。
復職をきっかけに、「仕事との距離感」や「頑張り方」をアップデートしていくイメージを持つことが、長く働き続けるうえで重要になります。
復職できない場合の選択肢―退職・解雇・雇用継続の可否
残念ながら、すべての人が休職からスムーズに復職できるわけではありません。
体調がなかなか回復しなかったり、復職してもすぐに再発してしまったり、職場環境がどうしても合わなかったりと、「元の職場に戻ることが最善とは限らない」ケースも少なくありません。
そうした場合には、退職や転職という選択肢も現実味を帯びてきます。
退職を選ぶことは、決して「逃げ」ではありません。
むしろ自分の健康や人生全体を考えたときに、「この環境から離れることが必要だ」と感じることは自然な流れでもあります。
退職にあたっては、退職金や有給消化、失業給付など、手続きとして確認しておきたいポイントがいくつかあります。
一方で、会社側から「休職期間満了による解雇」などの話が出ることもあります。
この場合、就業規則や労働契約に基づいた手続きになっているか、合理的な配慮が尽くされているか、といった点が争点になることがあります。
不安が大きい場合は、労働基準監督署や労働相談窓口、弁護士など専門家に相談することも検討しましょう。
また復職は難しくても、雇用形態を変えて働き続ける道が提案されることもあります。
たとえば正社員から嘱託社員やパートタイムへの変更、在宅勤務や短時間勤務への切り替えなどです。
大切なのは「どの選択にもメリット・デメリットがある」という現実を受け止めつつ、自分にとって何を大事にしたいのかを整理していくことです。
健康状態、家計の状況、家族との関係、自分の価値観やキャリアの方向性などを一つひとつ見つめ直しながら、信頼できる人たちと一緒に考えていくことが、後悔の少ない決断につながります。
企業・従業員が知っておくべき休職制度の課題・対応策


休職は、従業員個人だけの問題でも、会社だけの問題でもありません。
制度をどう設計し、どう運用していくかによって、働く人の安心感も、企業の安定性も大きく変わります。
この章では、企業側の視点と従業員側の視点の両方から、休職制度の課題と対応策を考えていきます。
企業人事・担当者が押さえておくべき法的義務と制度設計
企業側にとって、休職制度は「何となく置いてあるルール」ではなく、法的義務とも密接に関わる重要な仕組みです。
従業員が心身の不調を抱えたとき、どのように配慮し、どのように対応するのかによって、その後の職場環境や離職率、企業イメージは大きく変わります。
まず前提として、企業には従業員の安全と健康に配慮する「安全配慮義務」があります。
長時間労働や過重なストレス環境を放置したり、不調が明らかな従業員を十分な配慮なく働かせ続けたりすれば、その義務を果たしていないと見なされる可能性があります。
そのうえで、就業規則には休職の対象となる事由、期間、手続き、給与や手当の扱い、復職基準、休職期間満了時の取り扱いなどを明確に定めておくことが重要です。
曖昧な規定のまま運用していると、個別のケースで「前回と扱いが違う」「説明が不足していた」といったトラブルにつながりやすくなります。
また産業医や保健師、人事、現場の管理職が情報を共有しながら、休職・復職を支える体制づくりも欠かせません。
リワークプログラムの活用や、段階的な復職を前提とした制度設計を取り入れることで、復職後の定着率を高めることができます。
休職制度は「誰かが倒れてから慌てて対応する」ためのものではなく、「誰もが安心して働き続けられる環境をつくる」ための基盤です。
その視点を持つことが、企業側にとってのスタートラインになります。
従業員側の注意点とトラブル事例(給与・復職・期間満了等)
従業員の立場から休職制度を利用する際にも、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
ま、就業規則を読んでおくことは、とても基本的ですが非常に重要です。
休職期間の上限や、給与・手当の有無、復職の条件、期間満了時の扱いなどを知らないまま休職に入ってしまうと、後から「こんなはずではなかった」と感じる場面が出てきてしまいます。
また医師の診断書に何が書かれているかを、自分自身が把握しておくことも大切です。
診断書の内容は、会社が休職・復職を判断するときの重要な材料になります。「当面の就労は困難」と書かれているのか、「一定の配慮があれば就労可能」と書かれているのかによって、会社側の受け止め方も変わってきます。
気になる点があれば、診断書の文言について医師に相談してみても良いでしょう。
よくあるトラブルとしては、休職期間中の収入減少を十分に想定しておらず、途中で生活が苦しくなってしまうケースがあります。
傷病手当金の申請が遅れてしまい、しばらく無収入状態が続いてしまうこともあります。
できる範囲で構わないので、休職前に一度、家計のシミュレーションをしておくと安心感が違ってきます。
さらに復職時の働き方について会社と十分に話し合わないまま復帰し、以前と同じ業務・同じ負荷に戻ってしまった結果、短期間で再び休職に至ってしまうケースも見られます。
「どのくらいのペースなら続けられそうか」「どのような配慮があれば助かるか」を言語化し、可能な限り会社と共有しておくことが、再発予防につながります。
ひとりでは難しさを感じる方は、私たちのようなリワーク支援を活用することもおすすめです。
まとめ|休職を正しく理解し安心して対応するために


ここまで、休職とは何かという基本的なところから、条件・手続き、休職期間とその後の選択肢、休職中のお金の話、メンタル不調による休職の実情、企業と従業員がそれぞれ意識しておきたいポイントまでを、一つひとつ見てきました。
休職は、「働くことが難しくなった自分」を責めるための制度ではありません。むしろ、心や体が限界に近づいているサインを受け止めて、一度立ち止まり、回復とこれからの人生を考えるための時間を確保する仕組みです。
制度の仕組みが複雑に見えるのは、「知らない用語」や「馴染みのない手続き」が多いからにすぎません。
就業規則や健康保険、傷病手当金、復職支援など、一つひとつを丁寧に見ていけば、「自分はどの制度を使えそうか」「何から始めればいいのか」が少しずつ見えてきます。
今、あなたがメンタル不調で悩み、休職を考えているのであれば、まずは一人で抱え込まないことを自分に許してあげてください。
主治医や産業医、家族や友人、社内外の相談窓口、そしてこうした情報を頼りにしながら、「今の自分を守るために何ができるか」を少しずつ整理していきましょう。
休職はゴールではなく、これから先の働き方と生き方を見つめ直すためのプロセスの一部です。
焦らなくて大丈夫です。自分のペースで、少しずつ、自分の「これから」を整えていく。そのための選択肢の一つとして、休職という制度を前向きに活用してみてはいかがでしょうか。










