チャレンジド・アソウ 広島事業所 /
チャレンジド・アソウ 大阪事業所 /
チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者
監修:池田 倫太郎
株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。
気分変調症(抑うつ神経症)とは
神経症は、ノイローゼや不安障害とも呼ばれている、日常生活や仕事によるストレスが原因となる誰にでも発症する可能性があるココロの病気です。
神経症の種類は、不安神経症、解離性障害、強迫性神経症など多岐にわたりますが、なかでも抑うつ神経症は、不安・恐怖といった症状と同時に憂うつな気分や気持ちが晴れないという軽いうつ状態が続きます。
抑うつ神経症は、2年以上にわたり慢性的な軽うつ状態が続く特徴があります。
最近になって、抑うつ神経症という呼び名が廃止され、抑うつ神経症は「気分変調症」「気分変調性障害」あるいは「持続性抑うつ障害」などと呼ばれるようになりました。
したがって、以後は気分変調症という名称を用いて紹介していきたいと思います。
平成23年に実施した厚生労働省の調査によると気分変調症の患者数は国内に89,000人となっています。
1995年に実施された地域調査では、気分変調症の生涯有業率は全体で1.4%と、大うつ病の生涯有病率15%と比べて1/10となっています。
性別 | 生涯有病率 |
---|---|
男性 | 1.1% |
女性 | 1.7% |
全体 | 1.4% |
また、男女別の有病率を見ても分かる通り気分変調症は男性よりも女性のほうが若干多く、10代での早期発症型は少数で、通常は20歳から35歳までに発症します。
ここでは、抑うつ神経症とよばれていた気分変調症の病気について詳しく解説するとともに、患者さん向けの仕事探しや就職をサポートする就労移行支援の内容や仕組みも紹介していきます。
気分変調症の主な症状
かつて、抑うつ神経症と呼ばれていた気分変調症の主な症状は、慢性的なうつ状態が最低2年以上(小児及び青年は1年以上)持続し、重症ではないことです。
下記の症状のうち少なくとも2つが、ほぼ毎日続いている場合は気分変調症の注意が必要です。
食欲不振・過食 | いつも食欲がないまたはその逆 |
---|---|
睡眠困難 | ぐっすり眠れない |
倦怠感 | 疲れやすい、だるい、意欲がわかない |
自尊心の低下 | 自分に対し否定的である、自信がない |
集中困難 | 集中力が続かない |
決断困難 | 決定できない、判断力の低下 |
絶望感 | 生きる価値を失う、存在価値を見失う |
長期的にうつ状態が継続しているので、病気だと思わず自らの性格と勘違いし、病院を受診しないのはもちろん、友人や家族にも伝えないケースが多いと言われています。
したがって、上記で紹介した患者数よりも多くの人が気分変調症を発症している可能性があります。
さらに、気分変調症により慢性的な抑うつ状態が続いていると、たまに本格的なうつ病になることもあるので、少しでも異変に気づいたら病院または診療所に受診することが大切です。
うつ病との違い
抑うつ神経症と言われていたように「うつ」という言葉が用いられ、かつ症状も慢性的なうつ状態となるため、「うつ病」と一緒に思われがちです。
しかし、気分変調症はうつ病とは区別されています。
無気力感や不活発、自尊心の低下などうつ病と同じ症状はありますが、気分変調症は軽度な抑うつ状態が慢性的に継続する症状で、かつ、この症状を引き起こした明確な原因があると言われています。
愛する人との死別、離婚、別居あるいは仕事上の失敗など特定の出来事や環境が起因するケースが多いです。
いっぽう、うつ病は、まだまだ解明されていないことも多いですが、最近の研究では強いストレスによって脳内の神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンが非常に減少していることがうつ病発症の1つの原因と言われています。
他にも性格や環境の変化、病気など様々な要因が重なって発病するともいわれています。
気分変調症か、うつ病かの判断は難しく、最初は病院でうつ病と診断されたものの、症状は軽度かつ長期間の症状がみられるため、後になって気分変調症に診断名が変わることもあるようです。
気分変調症の治療法
気分変調症の治療法は、精神療法がかつては多く取り入れられていましたが、近年はより有効性の高い抗うつ薬を用いた薬物療法を採用されています。
よく処方されている抗うつ薬は、「三環系抗うつ薬(TCA)」「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」「クエチアピン」の3つで、これらは単剤使用のみでも有効性が示されています。
また、アリピプラゾールは抗うつ薬との付加療法により有効性が示されています。
さらに、最近では薬物療法単体よりも、認知療法や行動療法の心理療法と組み合わせて治療を行うことで、より高い治療効果が期待できるとされています。
認知療法とは、否定的で抑うつ的な考え方を新たな思考へと変えていき方法で、気分変調症の患者さんは日官邸にものごとを捉えないで済むようになります。
行動療法とは、楽しい経験をしり、活動性の機会を多くする、あるいはリラックス法を試したりして抑うつ的な思考を変えていく方法です。
行政支援
気分変調症は精神疾患に該当するため、医療費の助成が受けられる国の自立支援医療(精神通院医療)という制度を利用することができます。
自立支援医療とは、精神医療を通院により継続して受ける必要がる方を対象に通院にかかった医療費が支援されます。
病院に入院して受けた治療費については助成の対象外となってしまいますが、通院の医療費であれば支給対象となるので安心して治療に専念することができます。
ただし、下記2つの要件を見てしていないと気分変調症で通院したとしても、精神通院医療の対象とならないので注意が必要です。
- 指定自立支援医療機関の病院や診療所で通院治療を受けていること
- 精神通院医療を担当する医師に診てもらうこと
上記2つを満たしていても、指定自立支援医療機関の病院で精神通院医療を担当する医師の治療を受けた際に、気分変調症に関係のない病気などである場合はもちろん助成対象外となります。
有効期限は自治体の障害福祉課で申請書を提出し受理された日から1年間が有効となり、継続申請を行い受理されれば、それ以降も助成が受けられます。
申請が承認されると、通常2~3ヶ月で受給証が発行され、個人宛ではなく医療機関に送付されて医療費の助成が受けられます。
原則として1割負担ですが、所得区分(世帯収入うの市民税課税状況等)に応じて毎月の自己負担額上限額は異なっており、所得が多いと制度対象外になってしまうこともあります。
自立支援医療(精神通院医療)の概要
実施主体 | 都道府県、指定都市 |
---|---|
創設年度 | 平成18年(旧制度は昭和40年) |
精神通院医療の範囲 | 精神障害および当該精神障害に起因して生じた病態に対して病院又は診療所で行われる通院医療。症状がほとんど消失している場合でも、軽快状態の維持、再発予防のために通院治療を続ける必要がある場合も対象 |
対象となる精神疾患 |
|
引用:厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)の概要」
気分変調症の人の仕事
気分変調症の人は落ち込んだ状態だけでなく、集中困難や決断困難といった症状もあるので仕事ができないと思うかもしれません。
しかし、マニュアルに従って作業する仕事は向いていることが多く、働くことができる可能性があります。
たとえば、事務職、軽作業や清掃業といった単純労働を行う仕事を検討してみると良いでしょう。
事務職
事務職と言っても、高度な知識や経験を要求される業務から単純作業の業務まで様々な仕事内容があります。
気分変調症の方でも単純作業の事務職であれば、無理なく継続して働くことができます。
たとえば、データ入力、テープ起こし、数値確認など、PCスキルなどがあれば、人気の高い事務職でも活躍できる場はあります。
業務に慣れてくれば新たな業務内容に挑戦できる機会も多く、ステップアップが図れる仕事と言っても良いでしょう。
事務職のようなバックオフィス業務は、営業などと違ってコミュニケーションが得意でない人も多く働いているので、最低限のコミュニケーションが取れれば問題のない職場も多いようです。
軽作業
軽作業と言っても様々な業務内容があるので、自分の興味がある仕事を探して応募してみると良いと思います。
特徴としては肉体労働ではなく、マニュアルや指示に従ってコツコツと作業に従事するような仕事です。
主な例としては、検品、梱包、ピッキング、仕訳、ポスティング、商品管理、組立、シール貼り、箱詰め、仕分けなどがあります。
工場や倉庫といった場所で働く業務内容が多いのが特徴です。
サービス業や接客業ではないので、対面的な仕事はなく、ひたすら作業に専念できる軽作業は気分変調症の方でも働きやすいと言えます。
清掃業
清掃業は、その名の通りお掃除の仕事で、こちらも黙々と掃除するだけなので、コミュニケーションや人間関係で悩む機会が少なく、気分変調症の方にもピッタリです。
清掃業も様々な種類があり、オフィスクリーニング、病院清掃、特殊清掃、ハウスクリーニングなどがあります。
清掃業務も軽作業と一緒で同じ作業の繰り返しとなるので、気分変調症の人でも取り組みやすいお仕事だと言えます。
仕事探しをサポートする就労移行支援とは?
気分変調症を含め障害のある方が就職して企業で働けるよう知識や技能習得をサポートする就労移行支援という制度があります。
障害者総合支援法による障害福祉サービスの1つで、全国にある就労移行支援事業所で原則2年間利用することが可能です。
対象者は、企業で働くことを希望する年齢18歳から65歳未満の障害者で、医師の診断書または障害者手帳(自立支援手帳)を持っている方となります。
また、障害者手帳などがなくても、自治体の判断によって利用できることもあるので問い合わせてみることをおすすめします。
近年、利用者数は増加していることから就労移行支援事業所の数も右肩上がりで増えており、全国3000か所以上から選ぶことが可能です。
就労移行支援の主な対象者
年齢 | 18歳以上65歳未満 |
---|---|
対象者 | 精神障害、発達障害、身体障害、知的障害、難病など |
就労移行支援の利用者数の推移
年度 | 人数 |
---|---|
2012年 | 22,214人 |
2013年 | 26,550人 |
2014年 | 23,188人 |
2015年 | 28,491人 |
2016年 | 31,061人 |
就労移行支援の利用料金
就労移行支援をはじめ障害福祉サービスを利用する際は、料金の一部を負担する必要がありますが、負担金額については世帯所得によって異なってきます。
世帯所得に応じて4区分に月額負担上限額が設けられていますが、多くの利用者は利用料金が0円で負担できているようです。
なお、仮に上限負担金額が発生したとしても、それ以上の費用が請求されることはないので、1ヶ月に何回もサービスを利用したとしても一律料金で済ませることができます。
障害福祉サービス利用者負担
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(※1) | 0円 |
一般1 | 市町村民税化成世帯(所得割16万円(※2)未満) なお、入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は除く(※3) |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
<参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」より>
<補足>
(※1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、年収が約300万円以下の世帯が対象
(※2)年収が約600万円以下の世帯が対象
(※3)入所施設利用者(20歳以上)およびグループホーム利用者は、一般2に該当
就労移行支援で受けられる主な仕事・就職サポート
就労移行支援では、企業に就職して働く際に必要となる知識やスキルの向上をサポートしてくれますが、具体的にどういった支援が受けられるかを紹介していきます。
なお、就労移行支援で受けられるサポートは各事業所によって異なってくるので、ここでは一般的なプログラムを紹介しています。
職業訓練
まず、障害者の方が希望する業界や職種に就職できるよう、必要な知識と能力を身につける職業訓練を行っています。
働きたくても仕事が見つからない、または就職活動が上手くいかない障害者の人もいると思いますが、一人ひとりが希望する就職先に必要なスキルが身につけられるので内定率がぐんとアップします。
特に障害の性格によって個人の課題や目標などは異なってくるので、個別に支援計画書を作成して取り組んでいる事業所が多いようです。
また、職業訓練を通じて、継続して集中して作業ができる習慣を身につけたり、自分がどんな仕事に向いているかを知る機会にもなったりしています。
就活支援
企業に就職するためには、障害者であっても採用試験に応募して面接などを受けなければなりません。
そこで、新卒学生や転職者などと同じように、履歴書や応募書類に必要な自己PRや志望動機の書き方などを、添削等を交えて学んでいきます。
また、模擬面接も実施して質問への答え方や、自分の気分変調症の伝え方のアドバイスを受けてスムーズに面接が進められるようトレーニングしていきます。
就労移行支援事業所によっては、担当スタッフが面接に同行してフォローしてくれるようなところもあるようです。
就職相談
就職相談では、どんな企業で働きたいか、または企業で働けるかといった不安や悩みの相談を受け付けています。
また、個人の性格や個性に合わせて最適な仕事を探したり提案したりしくれるので、ただ漠然と働きたいと考えている人でも利用する価値は大いにあります。
就労移行支援事業所は就職エージェントとは違い、あくまで障害者の就労支援を目的としているため、無理矢理就職させられる心配もなく、自分のページに応じて必要な支援を行ってくれます。
就職定着支援
就労移行支援は、障害者が就職したらそれで終わりではなく、継続して勤務できるようアフターフォローも欠かせません。
入職後の6か月間は、業務上で悩みや困りごとはないかをスタッフが職場を訪問してサポートします。
職場の上司や同僚には言えないようなことも気軽に相談でき、対策や改善が必要な場合はスタッフが仲介役となり職場に直接伝えてくれるので安心です。
長期的な勤務が実現できるよう、仕事内容やその後の生活内容などを確認しながら、入社後も一定期間は親身になって支援してくれます。