「生活相談員」は、介護施設や事業所の“顔”として、窓口対応をはじめとする様々な業務を担う職業です。
通常、生活相談員になるには社会福祉士や精神保健福祉士といった資格が必要ですが、自治体によっては介護福祉士の実務経験があることで要件を満たせるケースも。
この記事では、生活相談員を目指すうえで介護福祉士の実務経験がどのように役立つのか、また生活相談員として働くことの魅力などを解説していきます。
介護福祉士としての実務経験は生活相談員への就職に役立つ
生活相談員とは、介護施設・事業所を主な職場とし、施設の利用者やその家族の相談に乗ったり、手続きの補助をしたりといった窓口業務を担当する職種です。
また、利用者ごとのサービス計画を立て、計画通りに実行するための調整や関係機関との連携なども行います。
まずは、介護福祉士の実務経験を持っている方が生活相談員を目指すメリットについて詳しく見ていきましょう。
生活相談員の資格要件を満たせる場合がある
通常、生活相談員として働くには「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」の3種類のうち、いずれかの資格取得が必要となります。しかし、自治体によっては介護福祉士の資格や実務経験を有していることで生活相談員になれると定めているケースもあります。ここで、それぞれの資格について確認しておきましょう。
社会福祉士
社会福祉士は福祉・医療サービスと連携をとりながら、高齢者や障害を持つ人々の相談援助を行う職業です。
社会福祉士は国家資格の1つであり、年に1回実施される国家試験で合格した人のみが名乗ることを許されます。
受験資格を得るためのルートは複数ありますが、最短ルートは4年制の福祉系大学で指定科目を履修するルートとなります。
精神保健福祉士
精神保健福祉士は主に精神的な疾患・障害を持つ人々を対象として支援を行う職業です。
精神保健福祉士も国家試験の1つで、社会福祉士と同じく4年制の福祉系大学で指定科目を履修するルートが受験資格を得るための最短ルートです。
社会福祉士と出題範囲が重なる部分も多いため、社会福祉士と精神保健福祉士の双方を受験する方も少なくありません。
社会福祉主事任用資格
社会福祉主事任用資格は、生活保護申請の対応や生活保護受給者の家庭訪問・生活チェックなど、市町村における福祉支援を行うための資格です。
資格取得に必要な条件は、厚生労働省によって以下のように定められています。
- 大学もしくは短期大学で厚生労働大臣の指定科目から3科目以上修めて卒業
- 指定の通信教育課程を修了
- 養成機関で指定の科目を修了
- 都道府県等の講習会で指定の科目を受講
- 社会福祉士もしくは精神保健福祉士の資格を取得
上記のいずれかの資格取得が要件となる生活相談員ですが、自治体によっては介護福祉士の資格や実務経験を有していることで生活相談員になれると定めているケースも。
なぜ自治体ごとに要件が違うのか、またどのような要件が定められているのかという点については、次章で詳しく解説します。
介護スタッフ・生活相談員・ケアマネージャーの業務連携に活かせる
介護福祉士として実務経験を積んでみると、利用者やその家族からの意見を思うようにサービスに反映できないことがあると感じる方も多いです。
これは、利用者・利用者の家族が満足できるサービスを提供するには、介護スタッフのみならず、生活相談員やケアマネージャーとの連携が重要となるからです。
なので、介護スタッフの経験・知識を持ったうえで生活相談員にキャリアアップすれば、より利用者に寄り添ったサービスの提案や計画を行えようになるでしょう。
また、業務連携がスムーズに行われることでスタッフ間のコミュニケーションも円滑化し、職場全体の雰囲気を良いものへと導く役割を担えると考えられます。
自治体によって必要な資格・要件が異なるケースも
先ほども触れたように、自治体によっては社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格の資格を持っていない場合でも生活相談員になれるケースがあります。
続いて、介護福祉士の資格や実務経験が生活相談員の要件となっている自治体の例と、なぜ自治体によって必要な条件が異なるのかという点について詳しく見ていきましょう。
異なる要件を定めている自治体の例
介護福祉士の資格や実務経験があることで生活相談員の要件を満たせる自治体の一例は以下の通りです。
都道府県 | 要件 |
北海道 | 介護支援専門員(ケアマネージャー)/介護福祉士 |
青森県 | 介護支援専門員/介護福祉/社会福祉施設などでの実務経験が2年以上ある者 |
山形県 | 介護支援専門員/介護業務・相談業務の実務経験が1年以上ある介護福祉士 |
東京都 | 介護支援専門員/特別養護老人ホームでの介護の提供に係る計画の作成に関する実務経験が1年以上ある者/老人福祉施設の施設長経験者/施設・事業所での実務経験が1年以上ある介護福祉士 |
神奈川県 | 社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者/介護支援専門員/介護福祉士/常勤での実務経験が2年以上ある者 |
大阪府 | 介護支援専門員/介護福祉士/社会福祉士/精神保健福祉士/社会福祉主事任用資格 |
和歌山県 | 介護支援専門員/介護福祉士/社会福祉主事任用資格/ 介護業務の実務経験が1年以上ある者 |
愛媛県 | 介護支援専門員/常勤での実務経験が2年以上ある介護福祉士 |
福岡県 | 介護支援専門員/介護福祉士/社会福祉施設などでの実務経験が3年以上ある者 |
厚生労働省の指定が曖昧であることが原因
生活相談員になるための要件が自治体ごとに異なるのは、厚生労働省の指定条件が不明瞭であることが原因です。
厚生労働省の指定では、「社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者又はこれと同等以上の能力を有する者」となっており、これに当てはまる条件が以下の通りとなります。
- 大学または専門学校で厚生労働大臣が指定する社会福祉に関する科目を修了して卒業した者
- 厚生労働大臣の指定する養成機関や講習会を修了した者
- 社会福祉士
- 厚生労働大臣指定資格合格者(現在は未実施)
- 同等以上の者として厚生労働省令で定める者(精神保健福祉士・厚生労働大臣が指定する社会福祉に関する科目を修了して大学院への入学を認められた者)
- 上記と同等以上の能力を有する者
この「上記と同等以上の能力を有する者」という部分の要件が曖昧であるために、自治体によって異なる解釈が行われ、生活相談員の要件も様々になったというわけです。
そのため、生活相談員として働きたい場合は、厚生労働省ではなく各自治体の要件をチェックしてから資格取得の準備を進めることをおすすめします。
生活相談員の主な仕事・魅力は?
最後に、生活相談員の主な仕事内容と、生活相談員として働くことの魅力・メリットなどをご紹介します。
生活相談員の主な仕事内容
冒頭でも紹介したように、施設の利用者やその家族からの相談を受けたり、契約に関する調整・手続きを行ったりすることが生活相談員の主な業務内容です。
ケアマネージャー(ケアプランの作成業務を担当する職種)や関連機関との連携を取り、ときには介護スタッフとして業務にあたる場合もあります。
また勉強会を企画したり、施設の人材育成を担ったりすることもあるなど、幅広い業務を任される重要なポジションと言えるでしょう。
生活相談員として活躍することの魅力
生活相談員は、利用者と介護施設、延いては地域までをもつなぐ重要な役割を持っています。
ケアマネージャーのように直接プランの作成に関わるわけではありませんが、利用者や家族の意見をケアマネージャーと共有し、より良いサービスの提供を図るためのサポートができます。
また介護福祉士の実務経験がある場合はキャリアアップを目指す際の候補の1つに入れられますし、生活相談員になるために介護福祉士の資格をとるという考え方も1つでしょう。
ゆくゆくは施設長も視野に入れてキャリアを積めるため、やりがいやモチベーションを持てるというのも生活相談員の魅力です。
「介護福祉士としての実務経験と生活相談員」まとめ
- 厚生労働省が定める要件が曖昧なため、自治体によって生活相談員の必要資格・実務経験が異なる
- 北海道や東京都など、多くの自治体では介護福祉士の資格・実務経験が生活相談員の要件になっている
- 生活相談員はやりがいのある仕事であり、その後のキャリアアップも目指せるおすすめの職種
生活相談員になるには、社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格のいずれかが必要ですが、自治体によっては介護福祉士の資格を有していることで要件を満たせる場合があります。
また実務経験のみで資格を必要としないケースもあるため、まずは就業先予定の自治体が定める要件をチェックしてみると良いでしょう。
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