「自分ひとりでは仕事を探せない」
「障害を職場の人にどう説明すればいいのかわからない」
「体力的に働く自信がない……」
実際に上記のような悩みがある方がたくさんいらっしゃるようです。
そのような方には、ぜひ就労移行支援制度のご利用をおすすめします。実際に多くの方が就労移行支援制度の利用期間を経て就職に成功されています。
ここでは、就労移行支援とはどういった制度なのか、対象者やサービス内容、期間、そして利用までの手続きについて詳しくお話します。
チャレンジド・アソウ 広島事業所 /
チャレンジド・アソウ 大阪事業所 /
チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者
監修:池田 倫太郎
株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。
就労移行支援とはどんな制度?わかりやすく解説
「就労移行支援」とは、2006年に施行された「障害者自立支援法」に基づいてスタートした比較的新しい福祉サービス。
かつては、障害のある方が一般の企業に就職するのはなかなか難しい期間が続き、障がい者の方は福祉施設で働くケースが多かったです。
しかしこの就労移行支援制度が広まる事によって小売業界や製造業界、サービス業界などさまざまな業界で活躍する方が増えてきました。
それとともに、積極的に障害者の方を雇用する企業も増加してきています。
就労移行支援では、企業に就職するために必要な能力やスキルを向上させるための「職業訓練」から、本人の適性に合った仕事を探す「就活支援」、就職した職場で長期間、就労するための「定着支援」まで一貫して行うのが特徴。
障害があって自分ひとりで仕事を見つけるのが困難という方にとっては、就労移行支援を利用するのが一番の近道といえます。
では、就労移行支援の仕組みと利用の仕方、そして期間について具体的に見ていきましょう。
どんな人が利用できるの?
次の3つの要件を満たす方が就労移行支援の利用対象者となります。
- 18歳以上65歳未満の方
- 身体障害、知的障害、精神障害、難病のある方
- 一般企業への就労または開業を希望する方で、就労が可能と見込まれる方
「2」については、障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書または意見書があれば支援対象となります。詳しくは、各自治体の障害支援窓口や相談支援窓口に問い合わせることで、ご自身が就労移行支援の対象者かどうかを判断することが可能です。
どこで支援を受けるの?
就労移行支援利用者は、定期的に就労移行支援事業所に通ってトレーニングを行います。
就労移行支援事業所は、社会福祉法人やNPO法人、民間企業が運営する施設で、市区町村から指定を受けて福祉サービスを提供しています。
現在、就労移行支援は全国に約3,400か所以上あります。
就労移行支援の支援内容は事業所によって異なり、発達障害の方のケアに特化している事業所や、医療機関と太いパイプをもつ事業所、ビジネススキルの向上サービスに力を入れている事業所など、それぞれに強みがあります。
自分の住所地以外の地域にある就労移行支援事業所でも利用することができるので、自分の障害特性に合っているところを選ぶようにしましょう。
就労移行支援事業所は市区町村の障害福祉課で聞くことができますし、webサイトで調べることもできます。
就労移行支援を受ける期間は?
就労移行支援は利用開始から2年以内という期間で就職することを目指しているため、期間は手続き完了後、利用がスタートした時点から原則2年と定められています。
その後引き続き受けられる職場に定着するまでケアを受ける、定着支援は原則6か月間の期間が設けられています。
そんな就労移行支援ですが、就職の可否により就労移行支援事業所の利用期間は人それぞれ。
また、期間中に体調を崩して通所できなくなったり、遠方に転居して通えなくなったりすることもあるでしょう。
そして残念ながら、2年間という期間、頑張ったけれど就職できないということもあります。
そのようなとき、例えば3年目の就労移行支援の利用契約はどうなるのでしょう。
期間延長①:利用期間中に利用を中断したとき
就労移行支援制度を利用して、途中で辞めてまた入り直すという場合は、利用期間をゼロからリセットすることはできません。
たとえば期間中、1年利用して中断した場合は、残りの1年が再利用可能期間です。
期間延長②:転居などで通えなくなったとき
基本的には転居先にある就労移行支援事業所に変更可能ですが、市区町村によって制度が異なるため、障害福祉課で確認する必要があります。
期間延長③:2年で就職できないとき
就活支援期間の2年で就労に結びつかなかった場合は期間延長することが可能ですが、期間延長できるかどうかは申請手続きを行なった後、市区町村の審査会によって決定されます。
合理的な根拠(延長することで支援効果が見込まれるなど)があれば最大延長期間として1年間、期間延長することが可能。
ただ、期間延長しても一般企業への就労が困難と見られる場合は、「就労継続支援」という、もう1つの支援制度を利用することも検討されます。
就労継続支援には「A型(雇用型)」と「B型(非雇用型)」の2種類があり、就労移行支援で就職できなかった場合は、B型で引き続き就活支援を受けることができます。
ちなみに就労移行支援制度と就労継続支援制度の併用はできません。
就労継続支援A型事業所(雇用型)
現段階で一般企業への就労が難しい障害のある方が、軽作業や飲食補助業務、清掃作業などの労働をしながら同時に就職に必要な能力やスキルを身に着けていくことを目的とした就労系サービス。
事業所と雇用契約を結び、実際の労働期間中、対価として賃金が支払われます。
能力やスキルが向上したら一般企業に就職できるよう支援していきます。
就労継続支援B型事業所(非雇用型)
B型の場合は、A型での就労が難しい方、一般企業での就労経験がある方で体力・年齢的な面で就労が困難な方、就労移行支援を2年間の期間、受けてきたが就職に結びつかなかった方などが対象となります。
軽い農作業や部品加工、パンやクッキー製造などを行い、同時に就職に必要な能力を養います。
事業所と雇用契約を結ばないため、生産物に対する報酬は賃金ではなく期間中に働いた分が工賃として支払われます。
利用期間には制限がありません。
利用料金はどれくらいかかるの?
就労移行支援制度を利用する期間中の料金は厚生労働省によって定められており、9割を市区町村が補助金で負担し、1割を利用者が就労移行支援事業所に支払います。
本人の負担額は年収や利用日数によって異なりますが、1か月の利用限度額が下記のように決まっているので、年収や利用日数が多くなってもその額を超えることはありません。
なお、収入によって負担額が決まることから、約9割の方が0円(無料)で利用されています。
世帯収入状況 | 負担上限額/月 |
生活保護世帯、市区町村民税非課税世帯(おおむね年収300万円未満) | 0円 |
市区町村民税課税世帯(おおむね年収600万円未満) | 9,300円 |
上記以外 | 32,000円 |
利用するまでに必要な手続きは?
福祉サービスを受けるときは、市区町村が発行する「受給者証」を申請する手続きが必要。
利用する就労移行支援事業所を選んだら障害福祉課の窓口に「サービス等利用計画書」と本人が障害者であることを確認できる書類(障害者手帳か医師の診断書または意見書)を提出します。
利用計画書は自分で作成することもできますが、市区町村が指定する「指定特定相談支援事業所」で作成してもらうこともできます。
また、就労移行支援事業所の担当者に代行してもらうことも可能なので相談してみると良いでしょう。
手続き完了後、市区町村による審査が行われ、支援が必要と認められると受給者証が利用者あてに送られます。
就労移行支援制度で受けられるサービス内容
受給者証が届いたら、利用者と就労移行支援事業所の間で利用契約を結びます。そして、次のような段階を踏んで、就職から定着へとつなげていきます。
1.個別支援計画書作成
就労移行支援制度の利用者が就労支援を受ける目的はそれぞれ異なりますから、面談を通して本人がどのようなところで働きたいのか、希望や条件を明確にし、その目標を達成するための「個別支援計画」を作成します。
最初は「身に着けておきたいマナーとルール」「就職するために必要なスキル」などをスタッフとともに考え、目標として掲げます。
この個別支援計画書は3か月に1回以上モニタリング(トレーニングの効果を評価すること)を行い、必要に応じて計画を作り直すこととされています。
2. トレーニング実施・就労体験
就労移行支援でのカリキュラムは、就労に必要な一般教養、ビジネスマナー、パソコンスキルを中心に、事務作業、物流作業、販売・接客作業、清掃作業などのトレーニング講座が組まれています。
事業所によってコミュニケーション能力を高めるためのグループワークに力を入れているところや、資格を取得するための講座が充実しているところなど、それぞれ特色があります。
就労移行支援の事業所内でトレーニングを行うだけでなく、就労移行支援事業所と連携している企業での体験実習(インターンシップ)も実施されます。
期間は1~2週間、長いところでは1か月ほどの期間になることが多いです。
体験実習を通して
- 一定の時間内に集中して仕事を完成させる習慣を身に着けられる
- 自分に向く仕事、向かない仕事を認識することができる
- 挨拶のしかたや身だしなみなど、社会人として必要なマナーやルールを知ることができる
など多くのことを期間中に習得できるので、働く自信が持てるようになります。
3.就活支援
これまでの就労移行支援事業所でのトレーニングや就労体験期間を通して本人の適性を把握したところで、いよいよ就職活動を開始します。
就労移行支援事業所はハローワークや障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの労働機関と連携して、本人に最も適した仕事を探します。
同時に、応募用紙の書き方や面接の受け方、障害について面接官に伝えるときの留意点などもレクチャーします。
面接当日は本人が希望すれば就労移行支援事業所のスタッフが同席してフォローします。
4.定着支援
就職できた後も引き続き支援を行います。
入社後は慣れない仕事と人間関係でストレスが蓄積している状態。
就労移行支援事業所のスタッフは面談や電話相談で本人の悩みを聞いてアドバイスをしたり、企業を訪問して上司や同僚に対して負担にならない範囲内で職場環境の整備をお願いするなど、双方の間に入ってサポートします。
職場の人たちに障害について理解を深めてもらい、適度な支援を受けることができれば、早く職場になじむことができ、離職と再就職を繰り返すようなこともなくなります。
新しく設けられた「就労定着支援」とは
障害のある方が就労系の福祉サービスを利用して一般企業に就職するケースが年々増えています。その一方で、体調管理ができず欠勤が多い、金銭管理も苦手でトラブルを起こしやすい、仕事上のミスが多い、同僚とコミュニケーションが取れないなどの問題から早期離職する方も少なくありません。
そうした生活面での課題や就労上の問題を解決し、職場に定着できるようにお手伝いするのが「就労定着支援」です。これは2018年4月にスタートしたばかりの新しい制度です。
利用対象者は、就労移行支援事業所や就労継続A型・B型事業所などを経て就労した方で、就労6か月経過後から新たな契約のもとに利用することができます。
事業所を決めた後、利用するまでの手続きや流れ
就労移行支援制度の利用期間や料金など、基本的な知識はつかんでいただけたと思います。
それでは、最後に就労移行支援事業所をどこにするかを決めた後の利用するまでの手続きとはどのような流れになるかをみていきましょう。
手続きは6ステップ
利用後の手続きには、下記のように6ステップあります。
- 就労移行支援事業所にまずは問い合わせ
- 事業所へ見学に行く
- 地理的条件やカリキュラム内容などを考慮し事業所を決定
- 障害福祉サービス受給者証を各自治体の行政窓口に申請手続きをする
- 障害福祉サービス受給者証が自宅に到着したのを確認後、事業所と契約
- 就労移行支援事業所の利用を開始
色々と書いていますが、一番重要なことはまず就労移行支援事業所に問い合わせて見学してみることです。問い合わせ・事業所の見学までは無料で行えるため金銭的にノーリスクですし、本記事で書かれているよりも更に詳しい制度の解説や利用の流れなどを説明してもらうことができます。
わからないこともその場で質問できるため、Web上で調べるだけよりも就労移行支援の制度について更に詳しく知ることができるでしょう。(本記事でもできるだけわかりやすく網羅的に解説したつもりではありますが、やはり生の人間に聞くのが一番良い方法かと思います)
また、実際の雰囲気をつかめば、ご自身の就職活動に適した方法なのか、といったことも判断しやすいかと思います。当サイトを運営する就労移行支援事業所チャレンジドアソウでも、お問い合わせや見学会への参加予約などを受け付けておりますので、ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。