障害者雇用促進法が改正されて、障害者が一般企業に就職する率や求人の数が高まっています。その背景には、転職エージェントの活用などがあり、障害を持った方でもエージェントを通して就職活動を行えているのです。
しかし、障害者の方は離職率も高く、就職1年後の離職率は50%、つまり半分の人が辞めています。離職理由はさまざまですが、障害のことをよく理解し仕事や生活をサポートしてくれる人があまり居ないというのが大きな要因の一つでしょう。これらは転職エージェントを通した就職活動を行った場合に起こりがちな問題とも言えます。
そこで、ここでは「働きたいのに仕事が長続きしない」という悩みを抱えている障害者のために、転職エージェントと就労移行支援事業所について、利用の仕方と両者の相違点を詳しく説明しています。
チャレンジド・アソウ 広島事業所 /
チャレンジド・アソウ 大阪事業所 /
チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者
監修:池田 倫太郎
株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。
転職エージェントとは
エージェント(agent)は「代理店」「仲介業者」の意味で、就職・転職を希望する人と求人募集する企業のマッチングをすることで評判の人材紹介サービスの1つ。
その中でも「転職エージェント」は、既卒で職務経験のある人を対象に、担当者(キャリアアドバイザー)が求人、仕事探しから応募書類の書き方、面接の受け方、企業とのやり取りなどを指導し、就労へとつなげていく事業です。
内定後は、給料や勤務時間などの労働条件についての交渉も行ってくれる部分が評判です。
また、「転職サイト」という人材サービスもあります。これは求人情報のwebサイトから自分で応募し、面接日を指定されたら一人で臨み、内定後の条件交渉も自分で行う必要があります。
担当者がついてフォローアップしてくれるわけではないので、転職活動は初めてという人には転職サイトはエージェントより難しいかもしれません。
仕事探しのプロなので障害者向けの求人数も充実
長年の実績のある就職、転職エージェントであれば、どの企業がどのような人材を求めているか、障害者を雇用するための受け入れ態勢は整っているかといった情報を豊富に持っています。さらに、登録するとスピーディに紹介してもらえるのも良い評判の一つです。
加えて、企業から信頼を得ているエージェントは、非公開求人を多く保有しているので、好条件の仕事を紹介してもらうことも期待できます。
非公開求人とは文字通り、他の転職エージェントやサイトでは公開されない求人のこと。企業が求人を非公開にする理由で最も多いのは、応募者が殺到して採用担当者が混乱するのを避けるためです。それだけ非公開求人は高給で魅力的な求人であることを意味します。
また、大手転職エージェントでは「転職フェア」や「転職イベント」と称する企業合同説明会を開催しています。
これは、即戦力となる経験者を求める企業と転職希望者をつなぐことが目的で、40代、50代の障害者も参加しています。合同面接会ではないので、気軽に参加することができます。
転職の回数が多い人は履歴書による書類選考は不利になりがちですが、転職フェアでは履歴書は不要で、採用担当者と直接話をすることができるため、ミドル層の障害者でも中途採用されるチャンスがあります。
転職フェアを開催しているエージェントとしては、マイナビエージェント、リクルートエージェント、en 転職、dodaチャレンジ、エージェントサーナなどがよく知られています。
転職エージェントで障害者の一般企業への就職は可能か
転職エージェントを利用して障害のある方が一般企業へ就職することは可能です。しかし、転職エージェントでの就職にはまだまだ問題があるというのも事実です。
というのも、転職エージェントには、会社、サービスごとに得意分野や強みがあります。
ITエンジニアの仕事に関する求人が多いところ、介護に特化したところ、事務系の仕事の求人が多いところ、あるいは20代の女性の求人が多いところというように、就職、転職エージェントとひと口に言ってもサービス内容や求人の質は異なります。
その中で、障害のある方の求人に特化した転職エージェントというのは全国的に普及しておらず、あまりデータが少ないのが現状です。そういった状況で、確かなデータもないまま人気ランキングや口コミなどを頼りにエージェントを選ぶと、希望の仕事に就くのは困難と言えます。
また、転職エージェントの中には、担当者が営業ノルマを達成するために、希望に沿わない求人案件を転職者に強引にすすめたり、必要なサポートを受けられないといったことが起こることもあります。
そうしたトラブルを防ぐためには、多くのマッチング実績があり、障害者の間でも評判のよい転職エージェントを選ぶことが大切ですが、障害者向けの転職情報は多くなっているとはいえ、まだまだ少ないため難しいのが現実です。
障害者の就職、転職に評判の良い就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、一般企業への就職を希望する障害者を対象に、職業訓練から就職活動、就職後の仕事や自立した私生活の定着まで通して支援する福祉施設です。
- 働きたいけど何から始めればいいかわからない
- 転職しても人間関係がうまくいかなくて長続きしない
上記のように悩んでいた人も、就労移行支援事業所に定期的に通い、ビジネスマナーやパソコンスキル、コミュニケーション力など基礎的なことから今の自分にとって必要なスキルを習得することができるので、ほとんどの障害者が企業への就職・転職に成功しています。
就労移行支援事業所の利用対象者
以下の3つの要件をすべて満たす障害者が就労移行支援事業所のサービスを受けることができます。
- (原則)18歳~65歳未満の人
- 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、難病のある人。障害者手帳を持たない人でも、医師の診断書か意見書があれば利用可能。
- 一般企業への就職を希望し、就職が見込める人
利用期間
サービスを受けられるのは最大2年間です。早い人では利用開始から6か月で就職する人もいます。一方、2年間じっくり時間をかけて仕事や生活のスキルアップする人もいます。
利用料金
サービスの利用料金は厚生労働省によって定められており、国が9割負担します。
本人は1割負担ですが、前年度の収入がない人は免除されるのでほとんどの障害者が無料で利用しています。
就労移行支援事業所のサービスを受けるが故に生活に困るという不安はありませんので、ご安心ください。
就職、転職に強い就労移行支援事業所の探し方
就労移行支援は障害者総合支援法に基づく制度で、就労移行支援事業所は市区町村から指定を受けた社会福祉法人やNPO法人、民間企業がサービス、事業として運営しています。
就労移行支援事業所は全国各地に約3,400か所あり、事業所の検索サイトで調べることができます。
職業訓練のカリキュラムは事業所によって異なるため、自分に必要なカリキュラムが組まれている就労移行支援事業所を選ぶことが重要です。
また、市区町村の公式ホームページにも地域の就労移行支援事業所一覧が掲載されています。そのなかで、どこを選べばいいかわからないときは、障害福祉課で相談すると適切な就労移行支援事業所を紹介してくれます。
他にも、当サイトでは就労移行支援事業所の選び方を解説した記事をご用意しております。就労移行支援に興味を持っていて「絶対に失敗したくない」とお考えの方は、ぜひ参考にされてみてください。
就労移行支援サービスの受給者証申請の仕方
利用したい就労移行支援事業所を決めたら、障害福祉課に利用の申請をします。
審査の結果、利用が認められると「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。
受給者証は自宅に郵送されますから、それを持って就労移行支援事業所へ行き、そこで利用契約を結び、サービスの利用開始という流れになります。
就労移行支援事業所は障害者の就職・転職に強く、定着率が違う
前出の転職エージェントは、今すぐ働ける障害者を対象とした求人紹介サービスであるのに対し、就労移行支援事業所は就職・転職するための準備が必要な障害者を支援する福祉サービスです。
在職中でもうつ病などの精神障害で長期休養していた人が職場復帰のためにサービスを利用するケースもあります。
就労移行支援事業所では仕事に必要なスキルを習得するだけでなく、社員としてきちんと通勤、就業できるように生活リズムを整えることからスタートし、基礎体力をつけ、集中力や持続力を養うためのトレーニングも取り入れています。
就労移行支援サービスのカリキュラムは講座形式や実践形式で行われ、次のようなステップを踏んで職場に定着できるように支援していきます。
step1. 個別計画書作成
障害のある人はそれぞれ抱える課題が異なりますから、就労支援を受ける目的も違います。
そのため、初めに障害者本人と就労移行支援事業所の支援員が面談を行い、「個別の支援計画書」を作成します。
訓練時間は月曜日~土曜日の午前10時~午後3時までですが、本人の体調やペースに合わせて無理のない計画を立てます。
個別計画書を職業指導員、生活支援員、就労支援員と共有して、職業訓練を開始します。
step2.職業訓練
基礎学習(読み・書き・計算など)、ビジネスマナー(電話応答、来客応対、報連相の仕方など)、コミュニケーショントレーニング、パソコンスキル、ストレスコントロールなどが一般的なカリキュラムです。
企業が求人を出す際に最も重視するのはコミュニケ―ション力なので、「傾聴力(聞く力)」「雑談力」「相談力」「クッション言葉の使い方」「確認の仕方」など、コミュニケーションの大切な要素を実践形式で訓練するところもあります。
仕事に役立つビジネスマナーの1つとして、身だしなみや声の出し方、姿勢、女性なら化粧法などを身につけるための美容講座を設けているところもあります。
職業訓練の後期になると、事業所と提携している企業で2週間~1か月間程度の職場実習(インターンシップ)を実施します。
提携先は商店や飲食店、介護施設、工場、倉庫など様々な環境で、実際に仕事を体験できます。
現場で社員と一緒に働くことで、自分の優れている面や弱点を発見することができるため、自分らしい働き方を見つけるうえでも職場実習はきわめて有効です。
働くことが不安だった精神障害の人も実習を通して自信を持てるようになります。
Step3.就職・転職活動
トレーニングや職場実習を通して障害者本人の適性を把握できたところで就職・転職活動に入ります。
就労移行支援事業所では直接仕事や求人を紹介することはなく、ハローワークや障害者職業センターなどと連携して本人に最も適した仕事を探します。
ハローワークは障害者雇用の求人数も転職エージェントの求人数より多いので、選択肢が広がる点がメリットです。ハローワークでの登録は本人が行いますが、支援員が同行して求人選びのサポートをします。
さらに、就労移行支援事業所の支援員は応募書類の書き方や面接の受け方も指導します。
求人に申し込んだ後の面接では必ずと言っていいほど、「どのような障害ですか?」「どのような配慮が必要ですか?」と聞かれます。
これは障害者を雇用する側にとっても大事な情報ですから、的確に応えられるよう、面接練習を何度か繰り返します。
本人が希望すれば求人を出している企業側の同意を得たうえで面接に同行することもあります。
Step4.定着支援
無事に就職、転職してもまだ支援が続きます。
就職、転職後の支援の期間は原則6か月間です。本人には面談や電話でアドバイスをしたり、職場の上司には会社を訪問して指導の仕方を提案するなど、双方の間に入ってサポートします。
支援員が介入する支援は6か月かけて徐々に減らしていき、職場主体の支援に移行していきます。
これによって本人が早く職場や生活に適応し、長期就労することが可能になります。
このように障害者に対し手厚い支援サービスを行っているため、就労移行支援事業所の修了生は就職、転職後の定着率が高いことで知られています。
障害者を雇用する企業側も、単に人材不足を解消できるだけでなく、就労移行支援事業所の修了生は仕事に必要なスキルを身につけているので即戦力になることと、問題が生じたときに支援員に相談できるという安心感があることから、求人を出しても修了生を優先的に採用するところが増えています。
これが就職、転職を考える障害者に、転職エージェントより就労移行支援事業所のサービス利用をおすすめする最大の理由です。
チャレンジド・アソウの事例・特長・評判・口コミ
福岡事業所を本拠地として博多、広島、大阪、新大阪に事業所を置くチャレンジド・アソウは、「こんな仕事、生活がしたい」「こんな会社で働きたい」など、「なりたい自分」を探して実現できるように障害者の就職、転職を支援しています。
チャレンジド・アソウのサービス利用者は、精神障害が61%と最も多く、続いて知的障害16%、身体障害13%、手帳を持たない人10%という構成になっています。
男女比率は男性63%対女性37%です(2019年現在)。
チャレンジド・アソウのサービスの特長として次のような点があげられます。
「自己理解」を重視するカリキュラム
「なりたい自分」を探すには、「自己理解」が大切です。
障害があると「就職は無理だ」「自分は何をやってもだめだ」と決めつけてしまいがちですが、それは、自分の長所も短所も含めて全体としての自己理解ができていないため、自己否定感が強くなっているからです。
とくに発達障害や精神障害の人にその傾向が見られます。
自己理解を深めることは就職、転職活動に不可欠ですから、カリキュラムの中に「ビジネスコミュニケーション」の1つとして自己理解(気づき)の方法を組み入れています。
ビジネスコミュニケ―ションには、「職業生活を続ける力」「ストレスコントロール法」「報・連・相ワーク」などの講座もあります。
事務系の就職・転職に強い
チャレンジド・アソウの強みは事務系の求人が多いことです。弊社のサービス利用者で全体の45%は一般事務や経理事務、営業事務の仕事に就いています。
CS検定(コンピュータサービス技能評価試験)ワープロ・表計算部門に合格して資格を活かして求人に応募し就職、転職をしている修了性もたくさんいます。
特例子会社に就職・転職できる
障害者の方の就職先は一般企業と特例子会社があります。
特例子会社とは、障害者雇用促進法によって障害者の雇用を義務づけられた企業が、障害者が働きやすいように新たに設立して求人を出している子会社のことをいいます。
チャレンジド・アソウは、2015年に厚生労働省より特例子会社の認定を受けました。親会社は145年以上の歴史がある麻生グループの1社で、総合人材サービス企業の「株式会社アソウ・ヒューマニーセンター」です。
現在、チャレンジド・アソウの修了生が子会社に正社員として就職、転職して事務職を中心とした親会社からの受託業務に携わっています。
障害者の方に仕事だけでなく、自立した生活を行ってもらいやすい環境を整えているため、仕事がきついということもなく管理の行き届いた職場でおすすめ。
こうした確かな実績と信頼があることから、チャレンジド・アソウ福岡事業所における定着率(就職後半年以上)は100%を誇っています。
チャレンジドアソウの口コミ(利用者の声)
下記ページにて、就労移行支援チャレンジドアソウの口コミ・利用者の声をご紹介しております。ご興味のある方は、ぜひこちらをご覧くださいませ。
【まとめ】転職するなら就労移行に関して実績豊富な支援事業所がおすすめ
障害者の離職率が最も高い時期は、就職、転職をしてから3か月~6か月内というデータがあります。
いくら評判のいい企業へ就職や転職ができてもそこがゴールではありません。
障害の有無に関わらず自立して生活するためには「早く転職して長く勤めること」が鉄則といわれます。
継続して長期就労するには、自分の障害のことや希望する仕事についてよく理解た上で求人を選び、就職、転職後も親身になって生活までフォローしてくれる評判の良い就労移行支援事業所のサービスを利用することがおすすめで一番確実な方法です。
仕事が長続きせず転職を繰り返しているという人は、近くの評判の良い就労移行支援事業所を体験利用することをおすすめします。
体験利用は一か所とは限らず、何か所でも利用することができますし、あなたの生活に合わせて無理の無い範囲で始められます。
就労移行支援事業所のサービスを利用して、一般の転職エージェントでは扱えないような、障害者の方に適した求人を選んでください。