統合失調症は10代から40代、50代までと幅広い期間で起きる脳内ネットワークの不調です。
かつて統合失調症が起きてしまうと人格が変わる、その後なかなか回復することが難しく社会復帰が難しい病気と考えられてきましたが、現代ではそうではありません。
統合失調症は早期に薬による治療を行い、適切に継続すれば回復後、再発を抑えられる様になっています。
回復後に就労移行支援などを受けることができれば職場復帰、または就職したりと仕事をすることは十分可能です。
今回は統合失調症の病気や症状についてまずは紹介し、その後に就職サポートが受けられる就労移行支援事業所について解説していきます。
チャレンジド・アソウ 広島事業所 /
チャレンジド・アソウ 大阪事業所 /
チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者
監修:池田 倫太郎
株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。
統合失調症とは
世界中で地域や民族に関わらず、およそ100人に1人弱の高い割合で引き起こされると言われている統合失調症。
統計的には珍しくないのに統合失調症の人に出会うことがないのは、その障害により社会で生活していくことが難しく、入院での治療が長引いているケースが多いのが原因とされています。
事例をみると統合失調症の発症年齢は若い世代が多く20代、10代、30代、40代の順で続きます。学校を卒業して仕事を始めようとする時期や、女性であれば結婚・妊娠・出産・育児などのライフイベントの適齢期に統合失調症が起こる事が多いようです。
主な症状は2種類「陽性症状」と「陰性症状」
統合失調症の症状には「陽性症状」と「陰性症状
」があり、突然人が変わったように現れます。
統合失調症になると認知機能障害も起こるため、家族や周りの人が最初に病気を疑うのは、現実的ではない訴えや攻撃的な行動・言動、ひどいイラつき場面を見たことが多いと言われています。
統合失調症の症状には以下のようなものが挙げられます。
統合失調症の陽性症状とは
現実離れした言動や支離滅裂な訴えは、統合失調症の特徴ともされている「幻覚」や「妄想」といった症状によるものと考えられています。
このような健康な人にはない統合失調症の症状のことを「陽性症状」と呼びます。
幻覚は実際にはないものがあるように感じることです。
誰かが側で「お前はバカだ」「死んでしまえ」というように声が聞こえてくる「幻聴」、食べ物の味がおかしいと感じる「幻味」、体の中に機械などが埋め込まれていると感じる「体感幻覚」などが幻覚に該当。
また、陽性症状には、自分の思っていることが他人に知られていると感じる「さとられ体験」や、自分で行動していることを誰かに命令されているように感じる「させられ体験」も含まれます。
このような症状が統合失調症の要請症状です。
統合失調症の陰性症状とは
統合失調症の陰性症状は本来の健康な状態の時、心の中に持っているものが存在しないというように喜怒哀楽が乏しくなります。
「表情の平板化・感情鈍麻」、興味・関心・意欲などが低くなる「意欲低下」、他人の関わりが減り、ぼーっとして引きこもりがちになる「自閉」が見られます。
これらがいわゆる統合失調症の陰性症状です。
認知障害も今は大きな症状の一つ
かつては統合失調症の陰性症状の一つとして扱われていた認知障害は、現代の研究では最も大きな統合失調症の症状の一つとして考えられるようになりました。
記憶力や実行機能、知能や記憶力、感覚情報の処理能力などの考える力が低下し自立した日常生活や仕事、学業に問題が出てきます。
物事を過去の記憶や経験から比較できない、比喩などの抽象的な表現がわからない、視界に入るものや音に敏感になり、集中できなくなるなどが認知障害の事例として挙げられます。
例えば、統合失調症になってしまうとテレビを見ても会話が理解できない、人との話の流れと全く関係のない受け答えするなど、コミュニケーションでの問題も含まれます。
認知機能障害は脳の一部の機能低下だけでなく、神経線維のつながりに影響されているのではないかと考えられている症状です。
統合失調症の4段階の経過
統合失調症は時間が経過するにつれて症状や程度が変化するため、複数の段階があります。
前兆期
統合失調症の人の4分の3の割合で、数年にわたり「前兆期」と呼ばれる時期があります。
前兆期は焦りや不安から感覚が過敏になったり、抑うつ、不眠、イライラ、物忘れ、頭痛、食欲減退など身体の不調が現れ、軽度の幻覚や妄想が見られることも。
この段階からすぐに統合失調症の治療を始めれば、回復までが早まると言われています。
急性期
陽性症状である幻覚や、妄想の「させられ体験」などが急激にみられる典型的な統合失調症の症状が現れます。
感覚が過敏になり、眠らず、興奮状態で夜中に外出したり、誰かと話をしているような独り言を言ったり、非現実的な訴えを言ったりと、陽性症状が目立つ時期です。
この期間が過ぎた統合失調症の方は「誰かに頭の中を乗っ取られたみたいな感覚だった」という人もいます。
急性期にも陰性症状はあり、表情が乏しく部屋に閉じこもりがちになり、統合失調症の症状が悪化することが多いとされています。
消耗期と回復期
急性期の統合失調症では興奮状態などで非常に活動量が多くなりますが、その後はぼんやりとして無気力になったり、横になって寝ている時間が増えたり、赤ちゃん返りをしたかのように家族にまとわりつく様子が目立つようになります。
これは消耗期と呼ばれ、使い切ったエネルギーを補充しようとしているのです。
消耗期でエネルギー補充をして心身ともに余裕が生まれると、活動の範囲も広げていくことができます。
これは回復期と呼ばれ、家事や身の回りのことや、趣味を頼んだり友人に連絡したりして少しずつ自立に向かって動き出す時期のことです。
ここで気を付けるべきなのは社会復帰への焦りや、治ったと自己判断で薬をやめてしまうこと。服薬を中止すると急性期の症状が再び現れてしまうので、統合失調症の症状や調子が良くなっても医師の指示に従い服薬を行うことが大切です。
回復期
薬物療法や十分な休息、リハビリテーションに取り組むことで日常生活が安定し、社会的活動が可能になってきます。このような統合失調症の状態を回復期と呼びます。
しかし、日常生活を問題なく過ごせるようになっても多くの場合で陰性症状や認知機能障害が残り、統合失調症になる前と同じ状態には戻らないため「完治」ではなく「回復」という言葉が使われるのです。
です。
統合失調症は薬による治療で回復する時代に
治療で回復が期待できる
以前は回復の見込みが少ないと考えられていた統合失調症の治療は現代では研究が進み、治療や薬の継続的な服用で十分回復可能となりました。
さらに自立や社会参加を支援する就労移行支援制度も整備されてきましたので職場に復帰したり、新たに就職して仕事をする事ができる様になっています。
統合失調症の治療は主に薬物療法とリハビリテーションで行われます。適切な治療を根気よく続ければ回復が期待できるので、統合失調症の症状がみられる場合は隠すことなく、まずは専門医に受診することをおすすめします。
治療に臨むにあたって大切なこと
統合失調症を発症している、またはその可能性がある本人や家族にとって大切なことは早めに専門医による「適切な治療を受ける」ことです。
精神障害がある人は「自分が病気であるという自覚(病識)」がない事が多く、周りの人が精神科に受診することを促進することが大切。
また、統合失調症の治療を始めても病識の低さから症状の回復期・寛解期に入った時に「治った」と感じて服薬や治療を自己判断でやめてしまい、前兆期・急性期・消耗期を繰り返すことが非常に多いので統合失調症の治療時期は注意が必要です。
「統合失調症の治療は継続していくことが、これからの社会生活を営む上で重要である」という意識を持つことが、本人や周りの人みんなが健やかに過ごす最善の統合失調症治療と言えます。
仕事復帰や就職に向けたサポートを行う就労移行支援について
統合失調症の治療は、休養、薬物療法、精神療法、リハビリテーション、生活リズムの調整などを経て少しずつ回復を目指していくため、長期にわたります。
社会復帰の際には住まい探し、人付き合い、医療費、就労、生活面などで、精神障害がある人が自立した生活を送るためには様々な負担や困難が付きまといます。
そんな時に利用したいのが障害者自立支援法のサービスの1つである就労移行支援。
就労移行支援では一般的な事業を行う企業に就職を目指す65歳未満の障害がある方を対象に必要な知識やスキル向上のためのサポートを行ってくれるので、統合失調症から回復し就職を目指す方はぜひ利用したいサービスといえそうです。
就労移行支援と就労継続支援の違い
職場復帰に向けて、ぜひ利用したい就労移行支援ですが実は就労移行支援と就労継続支援の2種類の枠組みがありますので、これらがどんなものなのかをまず知っておきましょう。
就労移行支援
就労移行支援は一般企業への就職や復帰を目指す方を対象に就職に必要な知識やスキル向上を目的としたサポートを行う支援制度です。
また、就職活動のサポートや就職後に継続して仕事が続けられるようフォローを行うことも就労移行支援の役割となります。
就労継続支援
就労継続支援は就労移行支援と異なり、病気や障害が残ってしまった方で一般企業への就職が困難な方に働く機会を提供するサービス。
就労継続支援にはさらに2つの枠組みがあり、就労継続支援A型(雇用型)と就労継続支援B型(非雇用型)に分けられます。
就労移行支援と就労継続支援の中身や条件
就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
---|---|---|---|
目的 | 就職するために必要なスキルを身につける | 働く場所を提供する | |
対象者 | 一般企業へ就職することを希望する方 | 現時点で一般企業への就職が困難、 または不安な方 |
|
雇用契約 | なし | あり | なし |
賃金 | 一部事業所を除きなし | あり/平均月収約7万円 | あり/ 平均月収約1,5万円 |
年齢制限 | 65歳未満 | なし | |
利用期間 | 原則2年 | なし |
就労移行支援事業所はどんなサポートをしてくれる施設?
就労移行支援事業所は、一般企業での雇用を目指す支援機関です。
就労移行支援事業所へ学校のように通いながらサポートを受けることで生活リズムを作っていきます。そして、就労移行支援として一般就労に必要なビジネススキルやマナー、コミュニケーションスキルの習得に必要な支援が受けられます。
利用者の個別支援計画を作成し、就労移行支援なら原則2年間利用が可能で、就職後も職場定着支援があるため安定して働き続けるための支援を受けることができます。
いっぽう、就労継続支援は利用期間や年齢制限がありません。
就労移行支援事業所で何ができる?
就労移行支援事業所で行われる就労移行支援はどういった内容なのかをもう少し詳しくみてみましょう。
就労移行支援は一般企業への就職を目指す65歳未満の障害がある方が対象。
就職するために必要なスキルや知識を身につけるプログラムが就労移行支援では用意されています。
内容を大きく分けるとこのようになります。
- 一般企業への就職を目的としたトレーニングを受ける事ができる
- 自分に合った就職先を探す事が可能
- 就職活動のサポート
- 就職後は安定して働く事ができるようサポート
それぞれを解説します。
一般企業への就職を目的としたトレーニングを受ける事ができる
「働きたいが仕事を見つける自信がない」、「将来的に一般企業に就職して自立したい」そう考える方の就職までのサポートを行うためのトレーニングが就労移行支援事業所では受ける事ができます。
専門の就労移行支援スタッフが一人一人に合わせたトレーニング内容を用意してくれますので、統合失調症の方にも最適な訓練が受けられて安心。
また、就労移行支援事業所に通いながら生活のリズムを作っていき、統合失調症の方でも体調を気にしながら安定した精神状態で仕事ができるベースを作ってくれます。
自分に合った就職先を探す事が可能
就労移行支援事業所のサポートの最終ゴールは統合失調症から回復した上での社会復帰や一般企業への就職です。
就労移行支援利用者の方はなかなかご自身では自分に合った仕事を見つけることは困難。
そんな方々の仕事探しや、就職先探しを就労移行支援事業所がお手伝いします。
統合失調症の症状がある方でも無理なく仕事ができる環境や仕事内容を提案してくれるので、その中から自分に興味がある分野に応募することが可能です。
就職活動のサポート
統合失調症から回復し、就労移行支援事業所で就職までのサポートやトレーニングを受けた後は実際に就職活動を行なっていきます。
その時のサポートですが就労移行支援事業所は制度上直接の仕事の斡旋はできないようになっています。
そのため就労移行支援事業所はハローワークや障害者終業・生活支援センターと連携するようになっていますので、それらとコミュニケーションを図りながら就職活動をサポートします。
なお、雇用側である企業が許可をすれば、面接当日に就労移行支援事業所のスタッフが面接に同行してくれることもあります。
就職後は安定して働く事ができるようサポート
就労移行支援事業所のスタッフは統合失調症から回復され、就職された後もみなさんが安定して職場に行き、楽しく仕事ができるように継続してサポートしてくれます。
統合失調症を含め、障害者の方はなかなか就職できてもすぐ辞めてしまう傾向にあり定着率はそこまで高くはありません。
しかし、就労移行支援を利用した障害者の方は定着率が高く、就職先の事業会社からも評価が高いことが特徴です。
よって、就労移行支援を利用すれば、就職活動で内定をもらえる可能性も自ずと高くなるということになります。
統合失調症の方が就労移行支援を利用するメリット
就労移行支援事業所を利用して得られるサポート内容は、上記のように仕事をしたい統合失調症の方にとって非常に充実しています。
障害があると一般就職が困難であるため、自分が統合失調症であることを隠して就職活動を行う「クローズ就労」という言葉もありますが、これでは治療や通院などに支障をきたしたり、症状を理解してもらうことも不可能なので、たとえ雇用されたとしても長続きしません。
就労移行支援事業所を利用した場合、統合失調症の症状や性格に応じて無理ている仕事を提案してもられます。
また、就労移行支援事業所のスタッフが、雇用側の企業で自分の症状や性格を伝えてくれるので、職場の人が統合失調症について理解してくれる点も非常に心強いです。
他にも、訓練意外にどんなメリットが得られるのか、ここでは統合失調症の方が就労移行支援事業所を利用することで得られるメリットについてここでは確認していきましょう。
統合失調症の対処法を教えて貰える
統合失調症のため病院に通っても治療薬を処方してもらえるだけで、長時間の相談に乗ってくれたり、適切なアドバイスがもらえないケースもあります。
就労移行支援事業所には、精神保健福祉士の資格を持つスタッフが在籍するなど、医学的な知識を豊富に持っている方も多く、専門的なアドバイス等をもらえるケースも多いです。
社会復帰の方法や、統合失調症との上手な付き合い方・対処法など、じっくり時間をかけてアドバイスや相談に乗ってもらえるのが就労移行支援事業所の魅力です。
就労移行支援事業所を利用して新たな発見や、症状を抑えるコツをつかんだ統合失調症の方も多いので、仕事に必要なスキルを身に着ける以上に普段生活から役立つ対処法が得られることは就労移行支援事業所を利用するメリットの1つと言えます。
企業側に自分の症状や統合失調症について共有してくれる
就労移行支援事業所のスタッフは、就職活動中に統合失調症の方の代わりに企業側に説得や交渉を行ってくれることがあります。
統合失調症の方が自分では伝えにくい、交渉しにくいことも我慢することなく確認できるので、納得したうえで仕事をスタートすることが可能です。
特に職場で仕事に集中できるよう、就労移行支援事業所のスタッフは統合失調症の特性や本人の症状や性格を企業側に伝えて理解を求めます。
時には終業時間の調整や業務の内容など、より突っ込んだ内容まで調整してくれるので、統合失調症の方でも無理せずに、トラブルが起きることなく働くけます。
統合失調症の方が長く仕事を続けるには、職場の理解が重要になってきますが、就労移行支援事業所を利用していればスタッフが入社前後でサポートしてくれるので安心です。
統合失調症をはじめ障害者同士で切磋琢磨できる
統合失調症の方は、フルタイムで過去に働いていて症状が悪化したり、挫折を経験したりすることで、孤独や警戒心が強い人がいます。
就労移行支援事業所は統合失調症を含め、様々な障害を持つ方が利用して、社会復帰という同じ目標に向かって切磋琢磨できる環境が整っています。
そのため、就労移行支援事業所のプログラムを通じてグループワークの楽しさや達成感を味わい、心を開けるようになったり、自信につながったりする統合失調症の方が沢山います。
なかには、統合失調症の方で就職を成功させたOB等を招いて体験談などを聞ける機会を設けている就労移行支援事業所もあるので、やる気アップにつながるイベントも企画されています。
就職や仕事探しで困ったら就労移行支援事業所のご利用を
統合失調症になってしまっても、障害があっても、前向きに生活を送ることはできます。「病気だから」と多くのことをあきらめる必要はありません。
現在は薬や治療技術の発展、および就労移行支援制度の整備によって統合失調症を経験された方でも半数以上の方が仕事復帰を果たしています。
一度回復し職場復帰や就職をしても統合失調症を再発する例が多く、仕事が続かないのではと心配されている方も多いでしょう。
統合失調症になる原因は不安やストレスなどが多いので家族の方や周りのサポートが必要不可欠ですが、家族の方でもわからないことも多いはず。
そんな時は経験豊かな就労移行支援事業所のスタッフに積極的に利用および相談することをおすすめします。
これから仕事を見つけて就職したいと考える統合失調症の方は一度就労移行支援事業所に問い合わせてみるのが良いでしょう。
弊社チャレンジド・アソウでも、統合失調症を含む精神病で悩む多くの方が利用しており、就職実現に向けて日々トレーニングを積み、希望の仕事に就いています。
特に弊社は利用者の7割が精神障害者福祉手帳を所有している人であるため、就労移行支援については豊富な実績とノウハウがあります。
まずは、お気軽にご相談ください。