関節リウマチは、関節が炎症で腫れ、手足がこわばったり、手足の指などに変形が生じたりする病気です。進行すると関節や骨が破壊され、日常生活が困難になります。
ここでは関節リウマチの原因や症状、仕事をするにあたって必要な支援や、利用できる公的な制度などについて紹介します。
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チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者
監修:池田 倫太郎
株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。
関節リウマチとは
関節リウマチとは、関節の中にある滑膜という組織が異常繁殖することで関節が慢性的に炎症を起こす病気です。
30歳代から50歳代に発症することが多く、痛みを伴い、手足だけでなく全身の関節に広がる場合もあります。
日本では現在70万人の患者さんがいるといわれていますが、毎年1万5000人が新たに発症しています。また、男女比は1:4で、女性、特に40歳代での発症が多い病気でもあります。
関節リウマチの症状と原因
関節リウマチ、と聞くと関節だけの病気だと思われがちですが、実際は全身に様々な症状が出る、複雑な仕組みの病気です。
関節リウマチの症状
関節リウマチの初期症状として典型的なのは、両側の手首、足首や指の関節が腫れて、こわばりや痛みを感じるようになることです。左右対称に症状が現れるのが特徴です。
重症化すると関節や骨が破壊されはじめ、手足が変形していきます。また、人によっては膝や肘、肩、股関節といった全身の大きな関節でも炎症や骨の破壊といった症状が進むことがあります。
頚椎の関節に異変を起こすと、脊髄が圧迫され四肢の麻痺や呼吸の障害に至ることもあります。
また、関節の機能障害だけでなく貧血や発熱、全身の倦怠感といった全身症状を伴うこともあります。
関節リウマチの原因と「自己免疫疾患」
関節リウマチの発症には、免疫システムの乱れが関係していると考えられています。
免疫とは、外部から侵入した細菌などの異物を攻撃し排除する、本来ならば体を守るためのシステムです。
しかし、何らかのきっかけで自分の体の組織を敵とみなし、自分で自分の体を攻撃する状態に陥ることがあります。この異常を「自己免疫疾患」と言います。
関節リウマチの場合は、自分の身体の一部を外敵とみなしたリンパ球が、関節の中の滑膜という組織に集まり、反応を起こします。
すると滑膜は異常増殖し、様々な破壊物質を生産するようになります。大量の破壊物質が放出されることで、周囲の骨や軟骨などが壊されていきます。
原因としては遺伝的な要素やウイルスの感染などが考えられていますが、今のところはっきりとはわかっていません。
関節リウマチの合併症
関節リウマチは、進行や治療の過程で、全身に様々な合併症を引き起こすことがあります
部位 | 主な合併症 |
---|---|
目 | 上強膜炎、乾性角結膜炎 |
口 | 口腔乾燥症 |
胸・肺 | 肺線維症、間質性肺炎、結節、胸膜炎(胸水貯留) |
心臓・心血管系 | 心膜炎(心嚢液貯留)、動脈硬化、血管炎 |
リンパ節 | 反応性リンパ節腫脹 |
腎臓、腸管 | アミロイドーシス |
その他 | 貧血、皮膚潰瘍、末梢神経障害、リウマノイド結節、レイノー現象 |
また、治療に使用する薬で免疫の働きが抑えられるため、感染症にかかりやすくなります。
関節リウマチに関連する病気
関節リウマチに似た病気として、ひとつは「変形性関節症」があります。
関節に痛みや腫れを生じ、長期間になると関節の変形も起きる病気ですが、変形性関節症は主に関節への過度な負担が原因で、また、症状の現れる関節が限られています。
もうひとつは痛風です。こちらも、おもに足の関節炎を起こしますが、尿酸の蓄積が原因であり、尿酸値が改善すると症状も消えます。
関節リウマチの検査と診断
関節リウマチの診断や進行の度合いを調べるには、主に血液検査、尿検査、画像検査が行われます。
検査項目 | 目的 | |
---|---|---|
血液検査 | 赤沈 | リウマチの炎症の程度を調べる |
CRP | ||
MMP-3 | 関節炎の程度、関節破壊の程度を調べる | |
抗CCP抗体 | リウマチの診断基準の一つ | |
RF(リウマノイド因子) | リウマチの活動性を調べる。診断基準の一つ | |
尿検査 | 尿タンパク(PRO) | 薬の副作用や合併症を調べる |
画像検査 | X線検査 | 骨の欠損などリウマチの進行度をみる |
関節超音波検査 | 早期診断に使用 | |
CT検査 | 頸椎や大腿骨の病変、間質性肺炎の発見 | |
MRI検査 | 骨の中の病変を発見 |
診断には、2010年に米国・欧州リウマチ合同学会が作成した分類基準が適応されています。
これは、「他の疾患では説明のできない1ヶ所以上の関節炎」があった場合に、血液検査や症状をスコアリングシステムに当てはめ、基準を満たした場合に関節リウマチの診断を決定するものです。
関節リウマチの診断基準
- 少なくとも1つ以上の明らかな腫脹関節(滑膜炎)があり、他の疾患では説明できない患者がこの分類基準の使用対象となる。
- 明らかな関節リウマチと診断するためには下表の合計点で6点以上必要。
A.腫脹または圧痛のある関節数
大関節が1ヶ所 | 0 |
大関節が2〜10ヶ所 | 1 |
小関節が1〜3ヶ所 | 2 |
小関節が4〜10ヶ所 | 3 |
1つの小関節を含む11ヶ所以上 | 5 |
B.自己抗体
RF、抗CCP抗体が共に陰性 | 0 |
RF、抗CCP抗体のいずれかが弱陽性 | 2 |
RF、抗CCP抗体のいずれかが強陽性 | 3 |
C.炎症反応
CRP、血沈が共に正常 | 0 |
CRP、血沈のいずれかが異常高値 | 1 |
D.罹患期間
6週未満 | 0 |
6週以上 | 1 |
関節リウマチの治療とガイドライン
関節リウマチに対する治療は、具体的には3種類です。
薬物療法 | 病気の進行を抑えるための抗リウマチ薬をメインに、非ステロイド性抗炎症薬、副腎皮質ステロイド、生物学的製剤などが使われます。 |
---|---|
リハビリテーション・理学療法 |
リハビリで筋肉を強化し、関節の可動域を維持します。関節を適度に動かし、動かしすぎないことが大切で、リウマチ体操を自宅で取り入れることも重要視されています。 また、痛みを和らげるための温熱療法や、関節の動きを補助するための装具を使うこともあります。 |
手術療法 | 膝や股関節など大きな関節の破壊が進んだ時には、人工関節に置き換える手術をします。また、手や指の腱が断裂して動かなくなったときなどには手術が行われます。 |
関節の破壊が発症から6か月〜1年の間で最も進むこともあり、診断後、早い段階から積極的な治療を行うのが主流になってきています。
関節リウマチの治療薬とガイドライン
関節リウマチの薬物治療は、2010年に欧州リウマチ学会が作成した治療ガイドラインに沿って行われます。使用されるのは以下のような薬です。
-
非ステロイド系抗炎症薬
増殖した滑膜から放出され、神経系の痛覚を刺激するプロスタグランジンという物質の生産を抑える働きがあり、鎮痛剤として使われます。 -
副腎皮質ステロイド
体の動作を改善する目的で、補助的に使われます。しかし長期の使用で多くの副作用が出るため、抗リウマチ薬の効果が出てきたら、少しずつ減らし、使用を中止します。 -
抗リウマチ薬
早期から使用することで、関節周辺の骨の破壊を遅くする働きがあります。様々な種類がありますが、週に1〜2回メトトレキサート(MTX)を投与する方法が最も効果が高いとされています。
効果が出るまでに数ヶ月かかるため、複数の抗リウマチ薬を使う場合もあります。 -
生物学的製剤
免疫システムに働きかけて関節破壊の進行を抑えるほか、関節の機能を改善する薬です。
一方で免疫機能を下げる作用もあるため、悪性腫瘍や感染症といった副作用に注意が必要です。
関節リウマチの経過パターン
治療開始後の関節リウマチの経過は、4つのパターンに分かれます。
①進行型 | 現在の治療では改善できず、悪化の一途をたどります。 |
---|---|
②多周期増悪型 | 治療の効果が完全でなく、長期間をかけて徐々に悪化していきます。 |
③多周期寛解型 | 良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、最終的には症状が軽くなっていきます。 |
④単周期型 | 一度症状が出たのち、治療によって良くなります。 |
関節リウマチの人の仕事探しと就職
関節リウマチは、かつては「不治の病」と呼ばれていましたが、現在は早期治療の効果が大きく、関節の症状が消え、血液検査の結果も正常を維持する「寛解」の状態に至る人が増えています。
また、社会や仲間との繋がりは精神的な安定のためにも重要視されているため、可能であれば仕事は続けることが勧められています。もちろん職種の選択や、周囲からの一定の配慮は必要です。
関節リウマチの「基礎療法」
まず、関節リウマチの人は、基礎療法として、自分での様々なケアを行う必要があります。
- ストレスを溜めない
- 禁煙
- 適度な運動と安静のバランス
- 関節に負担をかけない動作や作業
- 睡眠時間の確保とバランスの良い食生活
これらを欠かさない範囲で働くことが大切です。
関節リウマチの人が仕事で気をつけること
基礎療法を維持するためにも、関節リウマチの人が仕事で気をつけなければならないのは、まずは関節に負担をかけないことです。個人差はありますが、以下のような仕事は避けたほうが良いでしょう。
- 長時間の歩行を伴う仕事
- 重い物を持ち上げたり運んだりする仕事
- 高いところに登る仕事
- 休憩の取れない仕事
これから就職する人は基本的には室内のデスクワークを選び、また、すでに就職している人は配置転換を求めることも重要です。配置転換にあたっては医師が診断書を作成してくれることもありますので、相談してみてください。
また、職場では、次のようなことにも注意しなければなりません。
- エアコンの冷たい直風や湿気を避ける
- 受動喫煙を避ける
- パソコンの長時間利用など、同じ姿勢が続く場合は適度に休憩を取る
- ストレスを溜めないよう、相談できる場所を確保する
関節リウマチの人の仕事探しと就職
関節リウマチの人が仕事をする場合、方法は主に以下です。
1)現在の職場で仕事を続ける
そのまま継続できれば継続を、あるいは配置転換や体力的な負担の軽減、といった配慮を受けられる職場であれば、そのまま続ける人も多くいます。
2)転職(主に障害者枠での就職・再就職)
地方自治体やハローワーク、民間企業が行う障害者向けの企業説明会があります。2018年の障害者雇用促進法の改正もあり、積極的に障害者を採用する大手企業が増えています。
また、ハローワークでは、地域の障害者職業センターや就労移行支援事業所などとの連携でチーム支援の体制を整えている他、トライアル雇用で仕事とのマッチングを行う場合もあります。
3)就労移行支援など就労系福祉サービスの利用
関節リウマチは、障害者総合支援法の対象疾患のひとつで、公的な就労支援サービスを受けることができます。詳しくは次の項目で紹介します。
障害者手帳について
関節リウマチの人は、肢体不自由の度合いによって、身体障害者手帳を取得することができます。障害者手帳の交付を受けることで障害者枠での就職活動ができるほか、医療費の助成や税の減免などを受けることができます。
身体障害者手帳の等級は1級から6級までです。市町村の窓口や主治医に相談しましょう。
(参照:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表」)
関節リウマチの人が利用できる就労移行支援
すぐに一般企業に就職することが難しい場合には、就労系福祉サービスの利用が可能です。
厚生労働省の認可のもと、民間企業や団体が就労支援サービスの事業所を運営しています。
1)就労移行支援事業所
一般就労に向けて必要な訓練を受けながら、その過程で適性を見極め、個人に見合った求職情報を紹介してもらうことができます。
利用期間は2年で、計画的に一般就労につなげるのが目的で、また、就職後も定着するまでの一定期間、相談などの支援を受けることができます。
2)就労継続支援A型事業所
病状によって一般就労が厳しい場合、事業所と雇用契約を結ぶ形で、支援を受けながら軽作業や飲食店の業務を行い、労働基準法に基づいて事業所から給与が支払われる方式です。
利用の過程で準備が整えば、一般就労に向けた支援を受けることができます。
月収は、2015年では平均67,795円となっています。
3)就労継続支援B型事業所
雇用契約に基づいた就労が厳しい場合、利用者が生活の基礎を整えながら、一定の業務ができるまでの支援を行います。事業所内での作業成果に対しては「工賃」という形で報酬が支払われます。
こちらも、通所を重ねることで就職の準備が整えば、一般就労に向けた支援を受けることができます。
(参照:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」)
関節リウマチの人への接し方
関節リウマチの人が身近にいる場合、周囲の人は以下のような点を理解しておく必要があります。
1)痛む関節が日によって、あるいは時間によって異なる
日によって痛む関節や痛みの程度が異なるのが関節リウマチの特徴で、同じ動作でもその時々によってできたりできなかったり、いつもより時間がかかったりします。
2)自分でできることは自分で
筋力低下の防止や、関節機能を維持するために、適度に体を動かすことも関節リウマチの人にとっては大切なことです。自分でできることは続けるよう、見守ってください。
3)根気よく治療を続ける
関節リウマチは治療が長期化することもあります。焦りがストレスとなって病状を悪化させてしまわないよう、患者さん自身もですが、周囲にもゆったりとした心構えが必要です。
「2015年リウマチ白書」(日本リウマチ友の会)では、「今、したいこと」の1位が「温泉など、旅行に行きたい」(69.3%)でした。
痛みが続きうつ状態になる人もいますので、交通手段や宿泊設備を調べた上で積極的に外出するのも良いでしょう。
関節リウマチの人が職場にいたら
関節リウマチは、日によって症状が異なり、また気圧や湿気といった要因に左右される特徴があります。日によっては全身の倦怠感といった症状も現れますので、本人がその日の調子に合ったペースで働けるようにするのが好ましいでしょう。
体調を崩しやすい面もありますので、翌日に疲れを持ち越させないことが大切です。
エアコンの直風が当たらない席を確保するなど、環境面の注意も必要です。
また、周囲に手助けを求めることを申し訳なく思っている人もいます。できることとできないことを明確にし、その日の体調などについても話しやすい環境作りが好ましいと言えます。
まとめ
以上、関節リウマチの人の症状、仕事の探し方などについて紹介してきました。
関節リウマチは、他人が見ていてわかる症状だけでなく、痛みや、小さな関節を動かせないことへの苛立ちなど、見えない部分での苦労も多い病気です。
また、体の使い方やこまめな体調管理など、気をつけなければならないことが多い病気でもあります。本人のセルフケアはもちろんのことですが、周囲の人は想像力をはたらかせて、可能な限り理解につとめるのが好ましいと言えます。