身体・知的障害をはじめとした障害をお持ちの方が就労移行支援制度を利用しようとして厚生労働省のサイトで調べようとしてもなかなかデータを探すのは難しいですよね。
検索したとしても古いデータが見つかるばかり。
そこでこの記事では厚生労働省が発表している最新のデータ(平成27年、2015)から現在の就労移行支援制度や就労継続支援制度について詳しくみていきます。
厚生労働省のサイトで見つけられなかった就労移行支援について情報をまとめてみましたので、ご参照ください。
厚生労働省が発表している就労系障害福祉サービスの現状
まずは、現在厚生労働省が発表している就労移行支援サービスをまとめてご紹介してみます。
事業の中身や目的 | 期間 | 対象者 | |
---|---|---|---|
就労移行支援 | 一般企業や会社に就職を希望する障害や難病を抱える人が生産活動や職場体験の機会を得 て就職するまでをサポートするサービス。 その中で就職活動の支援や就職後の職場定着のための相談を行う。 |
原則2年間。市町村による審査を経て必要性が認められた場合、最大1年間の延長が可能。 | 障害や難病を抱え、一般企業への就職を目指す、またその能力がある人 |
就労継続支援A型 | 一般の企業や会社、事業所に就職が困難な方が雇用契約を結んで働く場所を提供、及び就職に必要な知識やスキルの習得目指することが目的。 | 制限なし | 就労移行支援制度を利用したが就職が叶わなかった人、また特別支援学校を卒業後、就職ができなかった人。企業などに勤めていたが、離職して現在雇用状態になり人 |
就労継続支援B型 | A型と同じく、一般企業への就職が困難でさらに雇用契約を結び安定して働くことができない方が対象。就労の機会、働く場所を提供し、就労に必要なスキルや知識の習得を目指す。 | 制限なし | 就労経験があるが、年齢や体力の面で一般企業への就職、就労が困難になった人。50歳以上で、障害基礎年金1級を受給している人。それ以外に就労移行支援事業所などで就労が難しいと判断された人 |
事業所数 | 利用者数 | |
---|---|---|
就労移行支援 | 2,952事業所 | 28,637人 |
就労継続支援A型 | 2,623事業所 | 46,446人 |
就労継続支援B型 | 9,176事業所 | 193,508人 |
身体・知的障害者の制度利用者の割合
厚生労働省のデータによると就労移行支援制度・就労継続支援A型・就労継続支援B型を利用している方の障害別の内訳は以下のような割合です。
精神障害者 | 知的障害者 | 身体障害者 | |
---|---|---|---|
就労移行支援 | 約61% | 約20% | 約17% |
就労継続支援A型 | 約60% | 約15% | 約23% |
就労継続支援B型 | 約35% | 約30% | 約33% |
【出典】国保連データ
就労移行支援施策の対象となる身体・知的障害者の方の数や地域の流れとは
厚生労働省の発表によると全国の障害者の総数は約788万人。その中で就労移行支援制度の対象となるのは約324万人とのことです。
ちなみに特別支援学校を卒業し、就労移行支援などの障害福祉サービスに移行した人の割合は約61.7%、3人に2人の障害を持つ方が就労移行支援制度を利用していることがわかります。
2006年度と比較すると2015年には約4倍となる障害や難病を持つ方が就労移行支援などの障害福祉サービスから就職に成功しているようです。
この厚生労働省のデータを見る限り障害や難病を抱える方の一般企業への就職や働く場所の提供に就労移行支援制度や就労継続支援制度は大きく貢献していると言えるでしょう。
特に就労移行支援から就職に成功した方を見ると2003年では1,288人だったのが2013年では10,001人と10年で10倍近くに上がっています。
割合的には2013年時点で約25%の障害や難病を抱える方が就職に成功しています。
就労移行支援を行う就労移行支援事業所で見てみると一般企業への就職(就労移行率)が20%以上の事業所が44%と年々上昇している一方、移行率が0%の事業所が3割強あると言うデータもあり、知的障害をお持ちの方の就労移行支援事業所選びは実績を確認して選ぶ必要がありそうです。
就労継続支援制度A・B型に関するデータについて
厚生労働省障害福祉課調べでは就労継続支援制度A型&B型利用者のうち1年間で一人も一般企業への就職を果たせていない事業所はA型で約7割、B型で約8割となっており、大きな課題です。
就労継続支援A型の平均賃金の推移
就労移行支援A型は雇用契約に基づき障害者や難病を抱える方に働く場所を提供するサービスです。
就労移行支援A型の平均賃金の推移は2013年では月額で69,458円。時給計算すると737円となり2013年の最低賃金の全国平均とほぼ同額となっています。
2005年では113,077円だったので約39%減少していますので、やはり一般企業への就職に推移できるように就労移行支援事業所でビジネススキルや知識を身に付けることが大事と言えます。
就労継続支援B型の平均工賃の推移
2013年での就労継続支援B型利用者の方の平均工賃は月額で14,437円。
就労継続支援B型は雇用契約に基づいた労働ではないので賃金ではなく工賃と呼びます。
こちらは2005年と比べると約18%アップしているようです。
一般企業への就職 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
---|---|---|---|
位置づけ | 労働者 | 労働者かつサービス利用者 | サービス利用者 |
就労者(利用者)の数 | 約63.1万人 | 約3.3万人 | 約17.5万人 |
平均賃金(工賃) | 身体障害者:約22.3万円/知的障害者:身体障害者:約22.3万円/精神障害者:身体障害者:約15.9万円 | 約6.9万円 | 約1.4万円 |
【出典】国保連データ
障害種別ごとの1年後の職場定着率や定着支援について
2013年のデータによると障害別の職場定着率は以下のようになっています。
障害の種類 | 定着率 |
身体障害 | 75.7% |
知的障害 | 80.7% |
精神障害 | 65.5% |
発達障害 | 68.6% |
難病 | 73.7% |
高次脳機能障害 | 72.1% |
【出典】障害者就業・生活支援センター事業実施状況報告(平成25年度)
このようなデータに基づき就労移行支援事業所は就職後、または働く場所を得た後の職場定着支援も行っています。
特に障害や難病を抱える方は一度離職してしまうと復職するのが難しいケースも多いです。
そのため職場定着は非常に重要になります。
就労移行支援事業所は就労移行支援、就労継続支援A型&B型、全てに対して6ヶ月の職場定着支援をしなくてはいけないと厚生労働省から規定として定められています。
厚生労働省の発表したデータから見る就労移行支援・就労継続支援とは、まとめ
いかがでしょうか、今回は現在厚生労働省が発表している最新のデータや数字をもとに知的障害をお持ちの方が利用する就労移行支援や就労継続支援についてご紹介してきました。
ポイントをまとめると
- 就労移行支援、就労継続支援共に利用者数、事業者数は増加している
- 就労移行支援や継続支援制度を利用して就職や働く場所を見つけている人も大幅増加
- 就労継続の賃金や工賃はそれほど良いとは言えないので一般就労への移行を進めるべき
- これからは職場定着も大事な要素になる
- 就労移行支援事業所選びは就職移行率など実績を見るのが大事
知的障害や身体障害をお持ちの方が、自主自立を望み、年々就労移行支援事業所を利用する方が増えていきます。
一人一人の身体・知的障害の内容や程度は異なるため、各人に適したカリキュラムで就労移行支援のトレーニングを受けることが可能。
さらに、身体・知的障害をお持ちでもご自身の希望する働き方、職種に就職していけるように支援してくれるのは就労移行支援事業所なので、ぜひ、お気軽にご相談いただければと思います。