何らかの心理的・社会的要因によって、食行動に異常をきたす疾患のことを摂食障害といいます。
摂食障害を持つ方は、通常と異なる食習慣を持っていたり、人間関係に不安を抱えていたりして、仕事探しや仕事の継続に苦労するケースも少なくありません。
この記事では、摂食障害の基本知識と、障害を持つ方が就職活動を行うときに利用できる就労移行支援・医療支援について解説していきます。
就労移行支援や医療支援はその他の精神疾患・身体障害を持つ方にも役立つ仕組みなので、障害によって就職活動に困難が生じている方はぜひ参考にしてみてください。
摂食障害とは?原因・症状・治療法などの基本情報
まずは、摂食障害の原因や症状・治療法などの基本情報を詳しく見ていきましょう。
摂食障害の種類と原因
摂食障害は「神経性やせ症(拒食症)」「神経性過食症(過食症)・過食性障害」の2種類に大別されます。
それぞれの原因や症状は以下の通りです。
神経性やせ症(拒食症)
神経性やせ症(拒食症)とは、様々な理由から過度な食事制限を行い、栄養失調に陥る摂食障害のことをいいます。
ダイエットに対する執着や、痩せている人が美しいという価値観が原因となっていることが多く、特に完璧主義・内向的な性格を持つ女性が発症しやすい疾患です。
アメリカ精神医学会による診断基準では、神経性やせ症(拒食症)について以下のような特徴が挙げられています。
- 低体重
- 肥満恐怖あるいは体重増加を妨げる行動の持続
- 自己評価が体重の影響を強く受け、低体重の深刻さが認識できない など
神経性やせ症(拒食症)は更に、食事量が少ない「摂食制限型」と、過食後の嘔吐を繰り返す「過食・排出型」に分けられます。
いずれも栄養失調に陥るだけでなく、無月経・骨粗鬆症・肝機能障害などを併発する可能性があるため、早期の受診・治療が必要です。
神経性過食症(過食症)・過食性障害
神経性過食症(過食症)・過食性障害とは、自己嫌悪や憂うつな気分に反応して過食を繰り返す摂食障害のことです。
ストレスが原因となっていることが多く、過食後に嘔吐や利尿剤乱用などの“代償行為”を行うケースもあります。
アメリカ精神医学会による診断基準では、神経性過食症(過食症)・過食性障害について以下のような特徴が挙げられています。
- 自分では制御できない過食の繰り返し
- 過食後の体重増加を打ち消す代償行為
- 過食や代償行為が少なくとも週1回・3ヶ月以上続いている
- 自己評価が体重の影響を強く受ける など
過食の症状は自分でコントロールすることが難しく、満腹状態であっても止められないケースがほとんど。
ストレス発散などで一時的に過食を行う場合もありますが、この衝動が継続する場合は摂食障害の可能性があるため注意が必要です。
摂食障害に対する一般的な治療方法
摂食障害の治療法として、主に薬物療法と精神(心理)療法が用いられます。
薬物療法はその名の通り、投薬によって不安症状を和らげる治療方法で、「SSRI」や「SNRI」、「抗不安薬」などが処方されます。
これらは摂食障害そのものに対する薬ではなく、摂食障害の要因となっている不安や抑うつ症状を改善するためのものです。
なお薬物療法のみで摂食障害を完治させることは難しいため、ある程度症状が落ち着いたあとは精神(心理)療法を用いて食行動に対する考え方の改善を目指します。
摂食障害に対する精神(心理)療法としては認知行動療法や家族療法などが一般的です。
認知行動療法 | 現在生じている問題を具体的にし、認知(考え方)や行動などを少しずつ変えていくことで解決を目指す治療方法。 |
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家族療法 | 本人だけでなく、家族ぐるみで適切な対処法を工夫することによって、症状や問題行動の解決を図る治療方法。 |
摂食障害の方が仕事をするうえでの悩み
日本摂食障害協会の調査では、摂食障害を持つ方の約6割が仕事探しおよび仕事の継続に対して困難を感じているという結果が出ています。
続いて、摂食障害によって生じる社会生活での不都合について詳しく見ていきましょう。
昼食や食事会などの付き合いが難しい
摂食障害を持つ方が仕事上で困難に感じるポイントとして、昼食や食事会に伴う人間関係の負担が挙げられます。
- みんなが同じ時間・同じ空間で昼休憩を行うため緊張する
- 1人で昼食をとっていると不審がられる
- 食事会などの付き合いが多く、断ることが難しい
- 食べ物を勧められるのが辛く、断って雰囲気を悪くするのも申し訳ない など
体力・気力の低下
栄養失調や体力低下など、摂食障害からの二次障害が仕事に不都合をもたらすケースもあります。
特に抑うつ症状の悪化や、自殺につながるような自傷行為が見られる場合は入院が必要となるため、長期的に仕事を継続できず、更なる自己嫌悪に陥る可能性も。
またこの経験によって、回復した後もフルタイムの仕事へ応募することに不安や困難を感じる方は少なくありません。
拒食・過食などの症状を持つ方が働きやすい職場とは
摂食障害を抱えながら仕事に就く場合は、応募先の会社が摂食障害に対する理解を持っているかどうかを見極めることが大切です。
日本摂食障害協会が“職場に対して希望する援助”について調査したところ、以下のような回答が得られました。
- 職場の産業医や保健師に相談できる
- 上司が摂食障害に対して理解を持っている
- 同僚に摂食障害を理解している人がいる
- 通院時間を確保できる
- 昼食について希望を聞いてもらえる
- 勤務時間が自由なフレックスタイム制である など
摂食障害であることや上記の希望を伝え、周りの理解と協力を得られる職場というのが理想です。
しかし実際には、自己管理ができない人として扱われたり、腫れ物に触るような態度をとられたりして、余計に職場の居心地が悪くなるケースも珍しくありません。
摂食障害に対して理解のある会社を自分で見つけることが難しい場合は、次に紹介する就労移行支援などの活用がおすすめです。
就職・転職活動に利用できる医療支援や就労移行支援
ここからは、摂食障害を持つ方が利用できる医療支援・就労移行支援について紹介していきます。
医療支援
摂食障害を持つ方が受けられる医療支援には以下のようなものがあります。
自立支援医療制度 | 心身の障害に対する医療費の自己負担額を軽減できる制度。通常3割負担となる医療費を1割負担まで減額できる他、疾患の種類や収入によって月ごとの負担額上限が設けられ、それを超える負担が免除されます。 |
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高額療養費制度 | 月々の医療費が一定額を超えた場合に、超えた分の払い戻しを受けられる制度。自己負担額の上限は所得によって計算されます。 |
傷病手当金 | 病気やケガで働けなくなった期間に応じて、給与の一部支給を受けられる制度。1日あたりの支給額は標準報酬月額の2/3に相当する額で、休職日から最長1年6か月まで支給されます。 |
精神障害者保健福祉手帳 | 一定程度の精神障害の状態にあることを認定するもの。公共料金の割引や税金の控除・減免などが受けられます。 |
医療支援によって、治療にかかる費用負担の軽減が見込めるので、安心して治療を受けることができます。
収入がないことへの不安や焦りが症状を悪化させる場合もあるため、まずは金銭的な支援を受けながら治療に専念することが大切です。
就労移行支援
摂食障害を抱えながら就職活動を行う場合は、以下のような就労移行支援の活用がおすすめです。
ハローワーク(職業安定所) | 厚生労働省によって運営されている職業紹介事業所。障害者の方に向けた求職情報の提供や雇用保険の手続きなどを行っています。 |
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地域障害者職業センター | 障害者に対する職業リハビリテーションを行っている施設。ハローワークと連携しており、就職で必要となる知識の講習や技術訓練を受けられます。 |
障害者就業・生活支援センター | 障害者に対して就業支援・指導を行う機関。雇用・保険・福祉・教育などの関連機関と連携し、就労面および生活面の支援や相談を行っています。 |
就労移行支援事業所 | 障害者が一般企業へ就職するためのサポートを行う通所型の福祉サービス。就職時に求められるビジネスマナーの講習や職業訓練、職場見学などを行っています。 |
就労移行支援を活用しながら就職活動を行うことで、摂食障害など精神的な疾患に対して理解のある会社を見つけやすくなるなどのメリットがあります。
就労移行支援事業所で受けられるサービス
障害者向けの求職情報に応募するのではなく、一般企業への就職を目指したいという場合は、就労移行支援事業所への通所がおすすめです。
最後に、就労移行支援事業所のサービス内容と、おすすめの就労移行支援事業所を紹介していきます。
就労移行支援事業所の特徴
就労移行支援事業所は一般企業への就職をサポートするための支援機関で、以下のようなサービスを提供しています。
- 就職したい職業に対応する職業訓練
- 履歴書の添削・模擬面接などの就職活動サポート
- 就職・転職に関する相談
- 障害の特性に合わせた業種の提案やアドバイス
- 職場実習の環境提供
- 就職後の定着支援 など
就職に向けた指導・相談はもちろん、就職後の定着支援までを行っているのが就労移行支援事業所の特徴。
「就職しても続けられるか分からない」「職場に馴染めるか心配」といった悩みを一緒に解決してくれるので、誰にも頼れず困っている方は就労移行支援事業所に相談してみると良いでしょう。
業界トップの定着率を誇る就労移行支援事業所「チャレンジド・アソウ」
当メディアを運営している「チャレンジド・アソウ」も就労移行支援事業所の1つです。
福岡・広島・大阪に事業所があり、摂食障害をはじめとする様々な精神疾患を抱える方の就労移行支援を行っています。
チャレンジド・アソウなら、1人1人に合わせた個別の就職プラン設計を組み立てることにより、ストレスの少ない就職活動が可能です。
実際に、チャレンジド・アソウからの一般企業への就職率は85.7%(全国平均22.4% ※平成27年度調査)、定着率は90%という高い実績も出しています。
就労移行支援の利用をお考えの方、またどの就労移行支援事業所へ通えば良いか迷っている方は、一度チャレンジド・アソウまでお問い合わせください。
まとめ:摂食障害を持つ方は就労移行支援を活用した就活がおすすめ
摂食障害などの精神疾患を患っている場合でも、医療支援や就労移行支援の活用によって、一般企業への就職を目指すことは可能です。
チャレンジド・アソウは精神疾患を持つ方の就労移行支援において高い実績を持っているので、就職活動に対する悩み・不安を抱えている方はぜひご相談ください。