障害者雇用について
障害者雇用促進法とは?雇用義務への対応の仕方をわかりやすく解説!

障害者雇用促進法とは?雇用義務への対応の仕方をわかりやすく解説!

21013年に改正され、2018年4月から施行された「障害者雇用促進法」では、常時雇用の労働者が45.5人以上の規模の会社は、障害のある人を1人以上雇用することが義務づけられました。

この記事では、障害者を雇用するのは初めてという事業主のために、法定雇用率をはじめ、障害者雇用納付金、差別の禁止や合理的配慮の提供など、事業主として果たすべき責務やルールについてわかりやすく解説しています。

チャレンジド・アソウ 広島事業所 /
チャレンジド・アソウ 大阪事業所 /
チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者

監修:池田 倫太郎

株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。

改正された障害者雇用促進法の概要

改正された障害者雇用促進法の概要

障害者雇用促進法は、正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」といいます。この法の目的は「障害のある人の職業生活における自立を促す取り組みを行うことで、障害のある人の職業の安定を実現すること」とされています(第1章第1条)。

もともとは1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」で、当初は身体障害のある人だけを対象としていました。1987年に知的障害が加わり、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に改称されています。

それから19年後の2006年になって精神障害も追加されました。初めは精神障害の雇用は努力義務でしたが、2013年の大幅な法改正でようやく義務化され、2018年4月から施行されました。これによって身体障害、知的障害、精神障害のすべてが雇用義務の対象となり、障害の種類による格差が是正されたという経緯があります。

改正障害者雇用促進法では、雇用義務対象が拡充されたことを踏まえて、次の4つの取り組みを中心とする施策を講じることと定められています。

  • 障害者雇用を法的義務とした「障害者雇用率制度」
  • 障害者雇用をコストの面から支える「障害者雇用納付金制度」
  • 障害者に対する「差別の禁止及び合理的配慮の提供」
  • 職業生活における自立を実現する「職業リハビリテーション」

次項からそれぞれの取り組みについて詳しく見ていきましょう。

障害者雇用を法的義務とした「障害者雇用率制度」

障害者雇用を法的義務とした「障害者雇用率制度」

民法では、「企業はどのような労働者をどのような条件で雇い入れるか自由に決定できる」という「選択の自由」が原則とされています。しかし、この原則に基づいているとハンディキャップのある人は就労の機会を得ることが難しくなります。

そのため、選択の自由は無制限ではなく、いくつかの特別法を定めて規制・制度を設けています。

その1つが、公的機関や民間企業の事業主に対して、雇用する労働者数に占める障害者数の割合が一定率以上になることを義務づけた「障害者雇用率制度」です。一定率のことを「法定雇用率」といいます。

法定雇用率は変動する

障害者雇用率制度は、一般労働市場における雇用と失業の状態に応じて障害のある人に雇用機会を保障しようとするものです。ですから、法定雇用率はそのときどきの条件によって変動します。

これまでは、雇用率は民間企業で2.0%でしたが、精神障害が雇用義務の対象に加わったこともあり、2018年に2.2%に引き上げられました。

公的機関も同様に0.2%ずつ引き上げられ、現行の法定雇用率は下表のようになっています。さらに、今後3年以内に0.1%引き上げられ、民間企業で2.3%になることが決定しています。

事業主区分 法定雇用率
民間企業 2.2%
国、地方公共団体 2.5%
都道府県の教育院会 2.4%

雇用義務が発生する企業の規模は?

事業主が雇用しなければならない障害者数を「法定雇用障害者数」といい、次の式で求めることができます。

なお、短時間労働者とは、雇用期間が1年以上(見込みも含む)で、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者を指し、1人で0.5人とカウント(ハーフカウント)する決まりになっています。

法定雇用障害者数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5%)×2.2%
※1人未満の端数が出たときは端数を切り捨てる

法定雇用障害者数が1人以上になるのは、民間企業の場合は、短時間労働者を含めて常用労働者が45.5人以上いる企業ということになります(1人= 45.5人 × 2.2% )。

雇用義務が発生した事業主は、同時に、毎年6月1日時点における「障害者雇用状況報告書」をハローワークに提出する義務も生じます(後述のMEMO参照)。

ちなみに45.5人未満の場合は、障害者を雇用するのは事業主の責務ではありますが、義務ではないので報告書も必要ありません。

法定雇用率の対象者

障害者雇用促進法において、障害者とは「身体障害や知的障害、精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受ける、または職業生活を営むことが著しく困難な者をいう」と定義されています(第2条の1)。

このうち、法定雇用率の算定の対象となるのは、以下のような人とされています。

法定雇用率の対象障害
身体障害者 身体障害者手帳を保有する人
重度身体障害者 身体障害者手帳の1,2級を保有する人。重度の身体障害者は1人で2人とカウントする(ダブルカウント)
知的障害者 療育手帳を保有する人
重度知的障害者 療育手帳を保有し、知的障害者判定機関(児童相談所など)で重度と判定された人。重度の場合は1人で2人とダブルカウント
精神障害者 精神障害者保健福祉手帳を保有し、症状が安定して就労が可能な状態にある人。(精神障害には重度の取り扱いはない)

特例子会社という制度もある

法定雇用障害者数については、グループ企業であっても別々に算定するのが決まりです。しかし、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たしていれば、親会社と子会社の障害者の人数を合算することができる「特例子会社制度」があります。

さらに特例子会社を持つ親会社には、グループ企業全体の障害者数を合算できる「グループ適用」もあります。

親会社になる要件は、子会社の意思決定機関(株主総会など)を支配していることとされています。

子会社の要件は、

  1. 親会社との人的関係が緊密であること
  2. 雇用される障害者が5人以上で、全労働者に占める割合が20%以上であること
  3. 障害者の雇用管理ができる能力を有すること(具体的には障害者のための施設の改善や、専任の指導員の配置がなされていることなど)
  4. 障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること

の4点とされています。

障害者雇用をコストの面から支える「障害者雇用納付金制度」

障害者雇用をコストの面から支える「障害者雇用納付金制度」

常用労働者が100人以上の民間企業で、法定雇用率(2.2%)を達成していない事業主は、法定雇用障害者数に不足する障害者1人あたり月50,000円の「障害者雇用納付金」を徴収されることになっています。

労働者が100人以上200人以下の事業主については、特例として2020年3月31日まで1人当たり40,000円の減額措置が適用されます。

これは罰金ではありません。障害者を雇用するには、たとえば車椅子の人であればバリアフリーにしたり、トイレを改造するなど、高額のコストがかかります。

障害者納付金制度は、「障害者雇用は事業主が共同で果たしていくべき責務である」という社会連帯の理念のもとに設けられたもので、障害者雇用の責務を果たしていない事業主からの納付金を、責務をきちんと果たしている事業主への支援に使うことで、事業主間の経済的負担の差を調整するのが目的です。

それとともに企業に障害者雇用を促すねらいもあります。

納付金の徴収業務は「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」が行い、納付金は次のような調整金や報奨金などの財源として活用されています。

「障害者雇用調整金」の支給

常用労働者数が100人以上の企業で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している事業主に対し、その超えている障害者1人あたり月27,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

「障害者雇用報奨金」の支給

常用労働者が100人以下の企業に対し、経済的な負担を軽減して障害者雇用を奨励する観点から支給されるものです。報奨金額は次のようにして求めます。

①「4月から翌3月まで各月の常用労働者数の4%(100分の4)の年度間合計数」または「72人」のいずれか多い数
②各月の雇用障害者数の年度間合計数

報奨金額 =(②-①)× 21,000円

②から①を差し引いた数に1人あたりの金額21,000円を掛けた額が障害者雇用報奨金となります。

「障害者作業施設設置等助成金」の支給

障害者を常用労働者として新規雇用または継続雇用する事業主に対し、作業施設や設備の整備を行った場合に、かかった費用の一部(支給限度額の範囲内)を助成するものです。リースで導入した設備なども含まれます。

「障害者福祉施設設置等助成金」の支給

障害者を常用労働者として新規雇用または継続雇用する事業主に対して、給食施設・保健施設・教養文化施設などの福利厚生施設の設置・整備を行う場合に費用の一部を助成するものです。

このほかにも、障害者雇用納付金制度に基づく助成金があります。詳しくは、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構に問い合わせてください。

障害者雇用を促進するさまざまな助成金について詳しく見る

障害者雇用率制度には罰則もある

労働者数が45.5人以上の事業主は、毎年6月1日の時点で雇用している障害者の人数や障害の種類などを記載した「障害者雇用状況報告書」をハローワークに提出することが義務づけられています。報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合は30万円以下の罰金が科せられます。

また、雇用率が未達成の事業主に対しては、ハローワークが雇い入れ計画の作成・実施についての指導を行います。それでも正当な理由なく雇用状況が改善されない場合は、厚生労働大臣は企業名を公表できることになっています。

障害者に対する「差別の禁止及び合理的配慮の提供」

障害者に対する「差別の禁止及び合理的配慮の提供」

障害者雇用促進法では、障害者を雇い入れる事業主に対して、募集・採用から定年までのさまざまな場面において適正な雇用管理をするために、「差別の禁止」と「合理的配慮の提供」というルールを定めています。

差別の禁止

募集、採用、賃金、配置、昇進、退職の勧奨、労働契約の更新、解雇、定年などの項目について、障害者であることを理由に排除したり、不利な条件を付したりする差別的な扱いはしてはならないと定めています。具体的には下記のような待遇は禁じられています。

  • 「障害者だから」という理由で、募集または採用の対象から排除すること
  • 能力を適正に評価せず、障害者という理由で軽度の職務を割り当てること
  • 昇進の対象から障害者を排除することや、障害者のみに昇進試験を実施するなど不利な条件を付すこと
  • 障害者だけを正社員から非正規社員(パートやアルバイトなど)に変更させること
  • 解雇の基準を満たす従業員の中で、障害者のみ退職の勧奨対象とすること
  • 障害者のみに定年の制度を設けることや、障害者の定年を一般労働者より低い年齢とすること

そのほかにもありますが、どのような待遇が「差別」にあたるのかあたらないのか、障害者本人と事業主が話し合って認識を共有する必要があります。そして、上司や同僚など職場で働く人たちが、障害特性に関する正しい知識をもち、理解を深めていくことが重要です。

合理的配慮の提供

事業主は労働者を雇用するにあたり、障害者と障害のない人の評価を公平に行うために、障害の特性に配慮した措置を講じなければなりません。

たとえば、採用試験では、視覚障害の人には音声を使用します。面接時は、聴覚障害の人には筆談で行い、発達障害や言語障害があってうまく意思を伝えられないという人には、本人が利用している支援機関の職員の同席を認めてフォローしてもらいます。

採用後は、知的障害の人であれば、最初は軽作業からスタートし、本人の習熟度に合わせて業務量を増やしていきます。精神障害のある人は疲れやすい傾向があるため、出勤はフレックスタイムにしたり、休憩の取り方に配慮する必要があります。内部障害(心臓、呼吸器、腎臓、肝臓などの疾患)のある人には、服薬や通院に関する配慮が求められます。

ただし、合理的配慮は、事業主にとって過重な負担にならない範囲であることとされています。経済的・人的負担が大きいことや、実現困難度の高いことについては、配慮の提供義務はありません。

合理的配慮についても差別と同様に、どのようなことまで必要なのかを本人とよく話し合って、職場全体で共有しておくことが大切です。

差別の禁止や合理的配慮については、厚生労働省が作成した「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関する Q&A」に詳しく示されていますから、参考にするといいでしょう。

職業生活における自立を実現する「職業リハビリテーション」

職業生活における自立を実現する「職業リハビリテーション」
リハビリテーションには医学的リハビリ、教育リハビリ、社会リハビリ、職業リハビリの4分野があります。

障害者雇用促進法に定める職業リハビリテーションは、障害があって就職が困難だったり、就職しても継続が難しい人を対象に、障害の特性、程度、適性、希望などの条件に応じて効果的な措置を講じ、職業生活における自立を実現することを目的としています。

条件によっては、医学的リハビリや社会リハビリの専門家との連携のもとに総合的に実施される場合もあります。

職業リハビリテーションは3つの就労支援機関で実施されており、それぞれ次のような業務が行われています。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、(独)高齢・障害者・求職雇用支援機構が運営する就労支援機関で、職業リハビリテーションを提供する施設として、47都道府県に設置されています。職業カウンセラーが配属されていて、障害者に対しては職業準備訓練、職業指導、職業評価などを実施しています。

事業主に対しては、障害者を雇用管理するうえでの課題を分析し、専門的な助言、援助を行っています。障害者を雇用することで支給される各種の助成金についての相談にも応じています。

障害者就業・生活センター

障害者就業・生活センターは、社会福祉法人やNPO法人が運営する就労支援機関で、全国に334か所、すべての都道府県に設置されています(2019年現在)。

障害者に対しては、就労準備が必要な人には就労移行支援事業所(後述のMEMO参照)へ紹介したり、就職活動の支援を行います。就労面だけでなく、健康管理や金銭管理のしかたなど、生活面でサポートも行うのが特徴です。

事業主に対しては、障害者の採用方法、職場環境の整備のしかた、従事させる仕事内容など、その企業のニーズに合わせた情報提供や助言を行っています。採用した後の定着に関わる相談にも応じています。

ハローワーク

厚生労働省が運営する就労支援機関で全国に545か所設置されています。専門の相談員が配属されていて、ケースワーク方式で障害者の特性や適性、希望などに応じた職業紹介や職場適応指導を行っています。

事業主に対しては、障害者雇用を義務づけられた企業であれば、雇用率達成に向けて障害者を紹介しています。また、求職者と障害者雇用を計画する事業主が一堂に会する「障害者就職面接会」を、地区ごとに随時開催しています。

就労移行支援事業所とは

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を希望する障害者を対象とした通所型の就労支援施設です。「障害者総合支援法」に基づいた福祉サービスの1つで、社会福祉法人やNPO法人、民間企業が運営しています。事業所は全国に約3,400か所設置されています(2019年現在)。

職業訓練から就職活動、就職後の定着まで一貫した支援を行うのが特徴で、支援期間は就活までが2年間、定着支援が6か月間です。

企業が重要視するコミュニケーション能力やビジネスマナーを習得することができ、働き続けるうえで課題となる障害特性への対処法も身に着けることができるので、就職後は即戦力となって活躍することが可能です。

そのようにメリットが多いことから、就労移行支援事業所でトレーニングを積んできた人を優先的に雇用したいという事業主が増えてきています。

就労移行支援事業所は、制度上、直接仕事を紹介することはできないため、障害者就業・生活センターやハローワークなどと連携を取りながら、本人の適性にマッチした仕事を探します。事業主からの相談にも応じていますので、詳しく知りたい方は市区町村の障害福祉課にお問い合わせください。

まとめ

障害者雇用促進法とは?まとめ

障害のある人を雇い入れるのは、職場環境の整備が必要なためどうしても費用がかかります。だからといって雇用率未達成の状態が続けば、罰金だけでなく企業名公表という重いペナルティーを課せられることがあります。それではこれまで築いてきた社会的信用を失いかねません。

障害者雇用に関する助成金が数多く用意されていますから、もし、資金的な理由で障害者雇用に踏み出せないでいるという場合は、助成金の活用を検討してみるといいでしょう。

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