障害者の方の就労移行支援
てんかんとは?症状の種類と発作の原因・治療法-就労支援を受けて就職する

てんかんとは?症状の種類と発作の原因・治療法-就労支援を受けて就職する

てんかんとは、大脳の神経細胞に激しい動きが生じ、体の一部が震える、意識を失う、などの「てんかん発作」を繰り返す障害です。症状は様々ですが、治るものとそうでないものがあります。

チャレンジド・アソウ 広島事業所 /
チャレンジド・アソウ 大阪事業所 /
チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者

監修:池田 倫太郎

株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。

てんかんとは

私たちの体は、脳が電気信号を出すことで動いています。信号は、全身に張り巡らされた神経を通って体のあちこちに伝えられ、信号に従って手足や内臓が動きます。

また、脳は通常、興奮系の神経と抑制系の神経がバランスよく働くことで、穏やかな活動状態を保っています。

しかし、このバランスが崩れて興奮系の神経だけが過剰に働いたり、大量の信号を一斉に出したりしてしまうと、脳の活動は乱れ、体も正常に動かなくなってしまいます。これを「てんかん発作」と言います。

てんかんは、この「てんかん発作」を繰り返す脳の慢性疾患で、日本では100人に1人が持っていると推計されています。

てんかん発作の種類と症状

てんかんは、発作の現れ方とその時の脳の状態などによって分類され、それぞれに症状の違いや特徴があります。

てんかん発作の具体的症状

てんかん発作というと、突然意識を失って倒れるというイメージを抱きがちですが、実際にはそれだけではありません。

なかには発作がごく短時間なために、気付かれないものもあります。

1)部分発作(焦点発作)

電気的興奮が脳の一部分から始まる発作です。3つに分かれ、症状も異なります。

種類 具体的症状 意識状態
単純部分
発作
  • 手足や顔のつっぱり、ねじれ、痙攣
  • 目がピカピカする、チカチカする、音が響く、耳がカンカンする、聞こえなくなる
  • 頭痛や吐き気

など

意識あり
複雑部分
発作
  • 急に動作が止まる、ふらふらする
  • 無意味に手を叩く、口を動かす
  • 顔つきがぼーっとする

など

意識障害
記憶障害
二次性
全般化
発作
  • 脳の電気的興奮が部分から全体に広がり、全般発作に発展する
意識なし

部分発作は始まる時には意識があるため、発作の始まりを自覚できるのが特徴です。

2)全般発作

部分発作の発信源が脳の一部であるのに対し、全般発作では脳全体が興奮状態になり、本人は意識を失っています。症状によって分類があります。

種類 具体的症状
強直間大発作
  • 突然意識を失い、呼吸が止まる
  • 手足を伸ばし全身が固くなる、あるいは手足をガクガク曲げたり伸ばしたりする
  • 発作後は眠ることもある
脱力発作
  • 崩れるように倒れる
  • 数秒以内のごく短い発作
欠伸発作
  • 体の大きな動きはないが、数十秒間意識を失う
ミオクロニー発作
  • 全身あるいは一部分の筋肉がビクつく

てんかんの原因と子供のてんかん

てんかんは、上記の発作の種類と、発作の原因によって4つのタイプに分かれます。

タイプによって経過は大きく違うので、理解しておく必要があります。

てんかんの原因と種類

発作の原因は2つです。

  1. 脳の損傷や異常がないのに発作を起こす「特発性」
  2. 脳の損傷や異常が理由で発作を起こす「症候性」

原因と発作の種類を組み合わせて、てんかんの4つのタイプを次のように呼びます。

1)特発性部分てんかん
脳に損傷や異常はなく、部分発作を起こすてんかん。

2)特発性全般てんかん
脳に損傷や異常はなく、全般発作を起こすてんかん。

3)症候性部分てんかん
脳の損傷や異常によって、部分発作を起こすてんかん。

4)症候性全般てんかん
脳の損傷や異常によって、全般発作を起こすてんかん。

年齢や経過の特徴を合わせると、以下のようになります。

特発性てんかん(脳に損傷なし) 症候性てんかん(脳に損傷あり)
部分発作

<突発性部分てんかん>

  • 脳の特定部位に脳波異常
  • 子供に多い
  • 経過は良好、成人期以前に治癒

<症候性部分てんかん>

  • 脳の特定部位に脳波異常
  • 成人発作に多い
  • 経過はさまざま、外科手術の場合も
全般発作

<特発性全般てんかん>

  • 脳の左右両側に脳波異常
  • 小児〜若年期に発症
  • 遺伝的要素も含む
  • 経過は比較的良好

<症候性全般てんかん>

  • 脳に広範囲の損傷
  • 新生児、乳児期の発症が多い
  • 知的障害を伴う
  • 難治の傾向

また、発作の種類を特定できない場合は「分類不能てんかん」とされます。

子供のてんかんと遺伝

てんかんの8割は、0歳から18歳の間に発症すると言われています。特に3歳以下で最も多くなっています。

主な原因は、

  • 胎児期や分娩時に脳が傷ついた場合
  • 先天的に脳の奇形や代謝異常がある場合
  • 遺伝的に、けいれんを起こしやすい体質
  • 感染症や頭部の外傷

といったものです。

多くは特発性のてんかんで、成人期までに治癒する傾向にあります。

しかし、症候性全般てんかんも子供の頃に発症しやすく、のちに難病認定されることもあります。

また、ほとんどのてんかんは遺伝しませんが、特発性のてんかんには、遺伝的要素があると考えられていますが、てんかん自体が遺伝するのではなく、なりやすい体質が引き継がれるというものです。

転換性障害とてんかんの違い

突然手足が震えたり、意識を失ったりと、てんかんに似た発作が起きる病気の一つに、「転換性障害」があります。

これは、てんかんとは違い、心理的要素が原因になっていて、心のストレスが体の症状に置き換えられる(変換される)ことで発作を起こすものです。

体の病気がないことが診断基準の一つで、精神科領域での治療が必要です。

てんかんの検査と診断

てんかんの診断では、発作の理由がてんかんなのかそうでないのか、を見極めるための検査が行われます。

てんかんの診断

てんかんの診断では、発作の特徴を細かく把握するための問診が重要です。

発作時の体の動きだけでなく、直前の自覚症状や精神的な変化、発作が続いた時間などを聞き取ります。

発作が起きる時の特定のきっかけがあれば覚えておくと良いでしょう。

そして、検査は以下のようなものです。

脳波検査 脳の異常な電気的興奮が、てんかん波として観測されます。部位がある程度把握できます。
画像診断 CT、MRIなどで、他の病気がないかを調べます。
血液・尿検査 先天性代謝異常や感染症の有無を調べ、てんかんの原因を探ります。
心理検査 性格検査、知能検査、発達検査などを行います。

治療で治るてんかんと治らないてんかん

てんかんには治りやすいものと、そうでないものがあります。

まず、治療方法から紹介します。

薬でのてんかん治療法

てんかん治療のメインは、抗てんかん薬での薬物療法です。脳の過剰な電気的興奮を抑える作用があり、発作の可能性がある間は、飲み続けなければなりません。

日本では20種類以上の抗てんかん薬があり、発作のタイプに合わせて処方されます。効果が不十分な時は、2種類、3種類の薬を組み合わせることもあります。

手術でのてんかん治療法

薬で発作を止められない場合に、手術が検討されます。

1)外科手術

発作を起こす脳の部位が特定されている、後遺症の心配がない、などの条件が揃えば脳の原因部分を切除します。

2)迷走神経刺激療法

左胸にペースメーカーのような機器を埋め込み、首を通る神経とリード線でつないで神経に一定間隔の電気刺激を与え続けます。これによって発作の回数が減少させます。また、発作の直前や直後に専用の磁石を胸に当てることで電気刺激を調整し、症状を軽減します。

治りやすいてんかんと治りにくいてんかん

てんかんは、7〜8割が治療によって発作をコントロールできるようになります。しかし、治癒できる割合はてんかんの種類により大きく異なります。

てんかんの発作抑制率

特発性てんかん 症候性てんかん
部分発作 100% 35%
全般発作 70% 20%

参考:「難治てんかんの病態と治療に関する研究班による多施設共同研究」1991年、厚生省

脳の損傷や異常が原因である症候性てんかんの方が、難治であることがわかります。

また、症候性てんかんの中には、指定難病となるものもあります。多くは小児期に発症します。

具体的には、

  • ウエスト症候群(乳児期に発症)
  • レノックス・ガストー症候群(2〜8歳で発症)
  • ミオクロニー失立発作てんかん(2〜5歳で発症)
  • ミオクロニー失神てんかん(7歳以前に発症)

など20種類以上あります。

てんかんがある人の就職や仕事

てんかんがある人が就職や仕事をするときには、まず発作への対応や、日常生活を自分で管理できることが絶対条件です。

また、自分の症状にあった場所を選ぶ必要があります。

てんかんと運転免許

2014年から施行されている新しい道路交通法では、てんかんの人が運転免許を取得・更新するための条件が加わりました。具体的には、

  1. 過去や現在の症状などについての質問票に答えること。虚偽申告には罰則あり。
  2. 一定の症状があると警察が疑った場合には、免許の効力を一時停止し、臨時適性検査などを行う。
  3. 病気が原因で免許を取り消されたが、その後3年未満に運転免許の取得が可能になった場合には、学科や実技の試験なしで運転免許を再取得できる。
  4. 発作による事故の危険性を知りながらも忠告を守らず、意図的に運転を続けた場合は、医師が警察に申告できる。

というものです。

免許の取得や更新の際には必ず医師に相談しましょう。

また、自動車の運転にあたって義務付けられる自賠責保険については、病気がある場合の条件を設定している保険会社もあります。

てんかんがある人の就職や仕事探し

てんかんの症状は人それぞれです。

まずは自分の症状について、どのようなときに発作が起きるのか、発作が起きると作業や周囲にどのような影響が出るか、などを細かく分析した上で仕事を決めなければなりません。

こうしたとき、病気について知識のある人と、働き方について相談したり、実際に職業生活を体験したりできる場所があります。

てんかんのある人が利用できる就労移行支援など

実際に職業生活が可能かどうか、症状とどう両立するか、を事前にはかるために利用できる支援機関があります。

ハローワーク

ハローワークには、障害者専門の相談窓口があり、就職の準備段階から職場に定着するまでを支援します。

また、数か月実際に企業で働いてみるトライアル雇用といった制度もあります。

ただ、いきなりの就職活動は心身ともに負担が大きいこともあります。

その場合は体を慣らしていくことができる施設を経由するのが良いでしょう。

地域障害者職業センター

センターに通い、模擬的な就労を体験できます。この間、個人の症状や特性を考慮した就職についての助言を受けられます。

また、就職先が決まった後も担当者が職場に来てサポートしてくれます。

障害者就業・生活支援センター

病気を抱えながら働くにあたっての、様々な相談に乗る窓口です。

病気のことを職場に知らせずに働いている場合は今後どうすれば良いのか、また、働くにあたって制約がある場合、それをどうしたら良いか、など幅広い相談を受け付け、内容によっては専門窓口を紹介してくれます。

就労移行支援事業所

民間の企業や団体が、障害者の社会復帰を目的として、国の認可を受け運営している事業所です。

実際に事業所に通い、そこでサポートを受けながら仕事をし、自分の症状について相談したり、必要なスキルや体力を身につけたりしながら、一般の職業生活に近づけていきます。

利用者の体の状態などによって、事業所は3種類に分かれています。

1)就労移行支援事業所

一般就労できる見込みがすでにある人を対象に、症状や課題に見合った適職を考えるところから始め、具体的な職業訓練を行います。

体力や精神面のトレーニングも積んでいきます。利用期限は2年です。

対象
  • 企業や在宅での就労を希望する人
内容
  • 個人の特性に応じた働き方の方向性を決定
  • そのために必要なビジネススキルの習得
  • 就職活動から職場定着までのサポート
利用期限 通常2年

2)就労継続支援A型

一般企業との雇用契約が難しい場合に、支援を受けながら働くという事業所との雇用契約を結び、事業所内の仕事をする場所です。

雇用契約には労働基準法が適用され、最低賃金が保証されます。

一般企業での就労が見込まれるようになれば、求人情報を紹介し、実際の就職活動・職場定着をサポートします。

対象
  • 就労移行支援の期限内に就職に至らなかった人
  • 一般企業などが難しくても、サポートがあれば、雇用契約で定められた条件で働ける人
内容
  • 特殊サポートを受けながら、法的な雇用契約の下で働く場所の提供
  • 状況に応じて、一般企業などへの就職に移行するためのスキル習得などの支援
  • 就職活動から職場定着までのサポート
利用期限 なし

3)就労継続支援B型

体力や年齢の面などで雇用契約を結ぶのが難しい場合に、事業所内で仕事をし、それに応じた賃金が事業所から支払われます。

自分のペースで通えるので、生活リズムの改善や、日中を仲間と過ごせる場所でもあります。

こちらも、一般企業での就労が見込まれるようになれば、求人情報を紹介し、実際の就職活動・職場定着をサポートします。

いずれも、利用にあたっては、市区町村の窓口に相談しましょう。

対象
  • 他の福祉サービスを利用したが就労に至らなかった人
  • 条件にとらわれずにマイペースで働く場所を求める人
内容
  • 縛りのない職場の提供
  • 働ける条件が変化し、一般企業などへ就職できる見込みになった場合は、そのためのスキル習得などの支援
  • 就職活動から職場定着までのサポート
利用期限 なし

てんかん発作の前兆と発作への対応

てんかん発作は突然現れますが、必ず自然に止まります。発作に出会ったとき、周囲には冷静な対処が求められます。

本人が意識を失っている場合は、けがをしないように配慮しましょう。

例えば、全身のけいれんが起きている時は以下のように対応します。

1)ケガの防止

  • 安全な場所に移動させる。
  • 頭の下にクッションを置き、敷物の上に寝かせる。
  • 衣服を緩める。
  • メガネやヘアピンを取り除く。

2)以下のようなことはしてはいけません。

  • 体を抑えたり揺すったりする。
  • 大声をかける。
  • 口をこじ開ける。

発作はこのようなことをしても止まるわけではありませんし、けいれんを起こしている患者さんの不安を増幅させるだけです。

また、一時的に呼吸が止まったとしても自然に戻りますので、無理に処置しようとしてはいけません。

3)以下の場合には救急車を呼びましょう。

  • 5分以上続くけいれん。
  • 意識が戻ったり朦朧としたりを繰り返す。
  • 意識が戻らないまま発作が連続する。

けいれん発作は1〜2分で大抵は自然に終わります。そのまま眠ることが多いので、起こさず寝かせてあげてください。

まとめ

てんかんについて知っておくべきことは、発作の特徴もそうですが、患者さんは発作がいつ起きるかわからない不安を日々抱えているということです。

そのため周囲の過度な心配は、不安を大きくしてしまいます。普段は普通に接してください。

また、てんかんの人は、就職について焦らず、自分できちんと生活を管理するようにできることが第一の目標です。

場合によっては一般の就職は難しいかもしれませんが、社会参加にはいろんな形がありますので視野を広く持つと良いでしょう。

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