精神障害の種類として適応障害と統合失調症があげられますが、この2つの病気は区別が難しいと言われることがあります。
誤った判断をしてしまうと、適切とはいえない治療や対応をしてしまい社会復帰から遠のく原因となりかねません。
適応障害と統合失調それぞれにどのような特徴や症状、原因があるのでしょうか。
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チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者
監修:池田 倫太郎
株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。
適応障害とは
適応障害は、ある特定の場面や状況に強いストレスを感じ、さまざまな症状があらわれることにより、その環境への適応が困難になる障害です。
ストレスを感じる場面や状況は人により異なりますが、その原因がはっきりしていると、早期に対処することができます。しかし、長期的に原因となる場面や状況にさらされ続けると症状が慢性化し、二次障害を引き起こすおそれもあるのが適応障害です。
適応障害を慢性化させないために、まずは適応障害の症状や原因について知ることからはじめてみましょう。
適応障害の症状
適応障害の発症原因が人により異なるのと同じように、あらわれる症状も人それぞれです。
おおまかな症状は以下のとおりです。
精神的な症状
不安、抑うつ、焦り、緊張、イライラ、怒り など
身体的な症状
発汗、頭痛、動悸、めまい、不眠、食欲の減退、神経過敏 など
行動的な症状
人や物に対して暴力的になる、ひきこもる、社会的な規則を守れなくなる など
適応障害の原因と診断基準
症状があらわれる原因はストレスです。適応障害の場合、つねにストレスを感じ続けるのではなく、ある特定の場面や状況に対し強いストレスを感じるのが特徴です。
たとえば、適応障害においてストレスの原因が仕事内容あるいは職場の人間関係にある場合、会社に出勤すると緊張感が続いたり頭痛がしたりすることがあっても、休日は楽しく過ごすことができる、ということがあります。
人によっては、上記のような状態を見て「仕事に慣れていないだけじゃないか」「甘えじゃないか」などと思うかもしれません。
もちろん、私たちは社会生活を過ごすうえでさまざまな環境変化を経験するため、その過程においてどのように対処するべきか不安に感じたり、悩みを持ったりしてストレスになるのはよくあることです。
ですが、上手く解消できず長期に渡りストレスを感じ続けることで、耐えられなくなり上記のような症状があらわれるのです。
しかし、上記で説明したような症状があらわれると適応障害の可能性が疑われますが、適応障害には細かな診断基準がないと言われており、ほかにも同じような症状の病気もあります。自己判断は危険です。病院やクリニックで正しく診察を受けましょう。
適応障害は治療できる?
適応障害の治療は、ストレスの原因を取り除けば早い段階でよくなると言われています。
ですが、その原因によっては避けざるを得ない状況もありますので下記のような治療方法の中から個人に合う治療法を見つけることが有効です。
環境の調整
ストレスの原因を取り除くためには、環境を調整することが重要です。
たとえば、コールセンターでクレーム対応をすることが原因なのであれば、クレーム対応以外の部門に異動させてもらう、対人技能をなるべく必要としない仕事をすることで原因を取り除くことができます。
同じグループのメンバーが原因なのであれば、そのメンバーと関わりを減らすことで調整できます。
カウンセリングやソーシャルスキルの習得
ストレスの原因を取り除くことが困難な場合、ストレスの原因へ対応する方法を身につけていくことで緩和することもできます。
代表例としては、認知行動療法といったカウンセリングを受けたり、医療機関や支援機関などでSST(ソーシャルスキル・トレーニング)を受ける方法があります。
統合失調症とは
統合失調症は、脳の伝達機能がうまく働かなくなることにより、妄想や幻聴、認知機能の低下などの症状があらわれる病気です。およそ100人に1人がかかると言われています。
統合失調症の症状
統合失調症の症状は多岐に渡りますが、ここではおおまかに「陽性症状」と「陰性症状」の2つに分けて説明します。
陽性症状
(被害)妄想、幻覚・幻聴、思考の混乱 など
陰性症状
感情の鈍化、思考力の低下、意欲の低下 など
これらの症状から、行動や会話にズレが生じて「以前とは別人のように見える」、記憶力や判断力が低下することから「仕事が急にできなくなった」、といった出来事が起きるようになります。
また、本人も上記のような症状により極度に疲れやすくなります。
統合失調症の原因
統合失調症の原因はまだはっきりしていないと言われていますが、遺伝はその1つであると考えられています。
また、原因とはべつに発症のきっかけというものもあり、思春期以降の受験や就職などの環境変化によるストレスが影響していると考えられます。
統合失調症は治療できる?
統合失調症は薬物療法が中心となっており、抗精神病薬により過剰に分泌される神経伝達物質の働きを抑えて治療します。
気を付けなければならないのは、途中で服薬をやめたり服薬のタイミングが不定期になったりすると、再発や症状悪化の危険性が高まるということです。早まった判断は避け、しっかり療養の時間をつくり、安定した生活リズムを保つことを心がけましょう。
症状の改善のためには、毎日決められた時間に決められた用量の服薬を心がけることが大事です。
また、症状によって本人や周囲への影響が強まった場合は入院して治療に専念する方法もあります。
適応障害と統合失調症の違いとは
適応障害はほかの病気の二次障害として併発する例があり、その例の1つとして統合失調症があげられます。
それだけでなく、統合失調症の前兆としてあらわれる症状の中には不安や焦りといった精神的な症状があることから、すぐに統合失調症であると診断できない場合もあると言われています。
特徴は適応障害と統合失調症で大きく異なるものの、似たような症状があるために自己診断は難しいと言えます。正しく治療を受けて社会復帰を目指すためにも、まずは病院やクリニックなどに相談してみましょう。
就職し、社会復帰するために
治療方法はあるものの、ひとりで対処し社会復帰を目指そうとするのはかなりの負担となるのではないでしょうか。
そのような場合、支援機関を活用するという手段があります。
就労移行支援事業所では病院の受診同行や服薬管理のサポート、社会生活に適応するために必要なストレスコントロールやビジネスコミュニケーションなどのトレーニングを受けることが可能です。
就職後も定着支援を受けることで、一人では相談しにくい職場環境の調整方法について、就労移行支援事業所が企業と就職者の架け橋の役割を担います。