チャレンジド・アソウ 広島事業所 /
チャレンジド・アソウ 大阪事業所 /
チャレンジド・アソウ 新大阪事業所 管理者
サービス管理責任者
監修:池田 倫太郎
株式会社チャレンジド・アソウ
立ち上げの中心メンバー。
就労移行支援事業、就労定着支援事業、
特例子会社の運営を行う。
適応障害とは
ストレスが原因といわれている精神障害は複数あり、適応障害もその中の一つと言えます。
適応障害の定義はICD-10(世界保健機構の診断ガイドライン)により「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状であり、社会的機能が著しく障害されている状態」という定義があります。
適応障害は環境や状態に「適応できないこと」にあり、うつ病や不安症といった特定の診断基準を満たしておらず、他の病気が悪化したものでもない「状態」に付けられる病名とされています。
近年では特に若い年齢層で多く発症していることもあり、学校や企業でも対応が求められ、社会的にも注目され始めています。
適応障害の症状
適応障害は症状が引き起こされるストレス因がはっきりとしていることが特徴です。
診断基準ではストレス因から3ヵ月以内に発症すると言われており、著しい苦痛や身体・精神的の機能の障害を起こします。
適応障害はストレスが取り除かれると速やかに軽快し、症状が治まるまでに時間がかからないとされているため、障害者手帳を取得しても理解されにくいという背景があります。
適応障害が及ぼす影響
精神面
適応障害では情緒面での症状が多くみられ、漠然とした不安、抑うつ気分、怒り、焦り、緊張、集中力・思考力・判断力の低下などが現れます。
抑うつに関しては、精神面が不安定になることで感情のコントロールができずに泣き叫ぶといったこともありますが、家事など身の回りの生活は維持できることもあり、うつ病ほどではないと言われています。
本人は「早く慣れなくては」、「できるようにならなくては」、と焦る気持ちはあるものの、不安や抑うつ気分が強くなり、自分を情けなく感じて落ち込んだり後悔したりします。
行動面
自殺行為、無断欠席・欠勤、飲酒が増える、口論、危険運転、万引き、物を壊す、暴飲暴食、ケンカ、公共物への落書きや規則違反など、攻撃的・衝動的、反社会的な行動が伴い、子供の場合は赤ちゃん返りが見られるケースも見られます。
職場や学校などになじめないが辞められない・離れられない環境からヤケになり、問題行動に発展するケースが多いのです。
体調面
適応障害の代表的な症状として「不安症状」が体に現れます。
動悸や発汗、めまい、涙もろくなるなどの変化があり、胃腸の不調、倦怠感、不眠、声が出ない、話せない、耳鳴り、偏頭痛、足のしびれ、歩けない等、多岐に渡ります。
適応障害はストレスの因から離れると症状が改善することが分かっていますが、ストレス因から離れられない状況下にある際は症状が慢性化し、持続的な抑うつ気分、興味・関心の喪失や食欲低下、不眠などの症状が現れることがあります。
発症するタイミング
適応障害の発症時期は、ライフイベントなどによる生活の変化や、ストレス因となる出来事が生じて一ヵ月以内であるとされています。
就職、進学、結婚、引っ越し、新しい仕事などに多く、会社や学校、家庭といった社会生活に支障が出てきます。
環境の変化に順応することに時間がかかったり、うまくいかなくても日常生活はなんとか続けられる人は多くいますが、環境の変化に対して苦痛を感じ、日常の生活が難しい状態になると障害の領域となるのです。
発症の事例
事例① 新入社員が体調不良を訴え、出社できなくなり受診を勧めたところ適応障害と診断された。
事例②電話業務で暴言等を受け、電話に対してフラッシュバックを伴い強いストレスを感じるようになった。
また、家族などの親しい人が亡くなった際の悲しみや苦しみは、誰しもが受けるものなのでそういった状態に関しては死別反応となるので適応障害とは異なります。
適応障害の症状が慢性化してしまうと、リフレッシュするための行動すらとれなくなることもあるため、ストレスをコントロールしていくことが大切です。
治療法や対処法
薬物療法
適応障害の治療法の一つとして、薬物療法が有効とされています。使用される薬は抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬など、体に出る症状に合わせて処方されるのが一般的です。
しかし、薬物療法はあくまでも原因を断つものでなく、症状を緩和させるためのものなので、薬を飲むことで改善する病気ではないのです。
休職と対処法
適応障害はストレスの対象となるものを無くす・離れることで改善されますが、一番深刻なことは「そうしたいけどできない」という環境を変えることができないということでしょう。
適応障害は適応できない環境のまま我慢し続けると、うつが長引いたり別の精神障害になったりしてしまうことがあるため、一時的でも健康な心身を取り戻すために医師から休職を指示されることもあります。
しかし、休職だけでは根本的な解決に至りません。
休職して体調が戻った際には、ストレス因となる適応できない事への対処法を考えなければいけません。
これは一人で行うべきではなく、主治医からのアドバイス・指導を参考にしながら行っていく必要があります。
適応できない環境にあるとき、2つの対処法が挙げられます。
①自分に対する環境を合わせる
仕事内容、役割、異動などでサポートを受ける、退職・転職・転校などストレス因となる環境を変える。
②環境に対して自分が合わせる
その環境に対して適応力を高める訓練や考え方、工夫をする。
理想的なやり方では①の方法が合理的と言われています。②に関してはどのように行っていくかそれぞれの状態や性格にもよるので、専門医の相談が欠かせません。
発達障害との関係性
発達障害は知的な遅れが現れないケースもあり、大人になって社会に出るまで障害があることに気が付かない場合があります。
周りからは「落ち着きがない」「空気が読めない」「人の話を聞かない」「漢字が読めない」など指摘を受け、日常で暮らしていく中で共同作業や人間関係で悩み、仕事が続けられないといった壁に直面します。
周りに理解や相談ができる人がいない場合はさらに大きなストレスとなり、自信を失い、落ち込んだ気分になります。
これが深刻になると、精神的な余裕を失い、二次障害として適応障害を引き起こすこともあるのです。
先の述べたFさんは、発達障害の診断は受けていませんでしたが、漢字の読み書きがとても苦手で苦労していました。
また、Fさん以外にも適応障害のみ診断を受けている人では、感情のコントロールが難しく、強いこだわり、落ち着きのなさから実習で同じ質問を繰り返す人もいます。
このように、適応障害は社会適応力の低さから発達障害がベースだと考えられる一面もあります。
何かしらの生きづらさを抱えている場合、できない事や環境の辛さに焦点が絞られていますが、本来はもっとベースの部分での気づきが必要です。
物事に適応していく力は「なぜそう感じるのか」や自分の性格、自分と他人との考え方など、自分自身に目を向けて自己理解をしていく事が重要なのです。
一般就労をサポートする就労移行支援とは
適応障害の方の中には、就職や社会復帰を希望している人も多いと思います。
しかし、適応障害が原因で仕事を辞めたことがトラウマとなって、なかなか再就職へ進めないという方もいあるのではないのでしょうか。
そんな時におすすめしたいのが就労移行支援です。
就労移行支援では、障害などがある方が就労移行支援事業所に通いながら一般企業への就職を目指して、必要なスキルやマナーを身につけるためのサポートを受けられます。
それでは就労移行支援の利用に関する情報からまずは確認していきましょう。
就労移行支援事業所の対象者
就労移行支援事業所が利用できるのは下記の条件に該当する方となりますが、適応障害は精神障害に該当するためもちろん利用できます。
- 身体障害者、知的障害者、発達障害者、精神障害者、難病の方
- 18歳から65歳未満までの男女
- 一般企業への就職を希望する人
就労移行支援事業所の利用料金
就労移行支援事業所を利用する場合、前年度の世帯所得によって月額最大で37,200円の負担が生じますが、世帯所得は本人と配偶者を合計した金額であるため、多くの方は無料で利用しています。
世帯所得 | 月額負担額 |
生活保護受給世帯 | 0円 |
市町村民税非課税世帯 | 0円 |
市町村民税課税世帯で所得割16万円未満 | 9,000円 |
上記以外 | 37,200円 |
適応障害の方で就労移行支援事業所を利用したいけど、自分は料金負担が生じるか知りたい場合は最寄りの就労移行支援事業所や役所に相談してみて下さい。
就労移行支援事業所の利用期間
残念ながら就労移行支援事業所は一般企業への就職が実現するまでサポートを受けることができません。
就労移行支援事業所の利用期間は原則2年となっており、延長申請は可能ですが、その場合は自治体の判断に委ねられます。
適応障害の方は上手く症状をコントロールできれば、一般企業への就職も実現できますので、まずは2年間でしっかりと訓練を行いましょう。
就労移行支援事業所の利用者の中には半年で一般企業に就職する方もいるので、適応障害の症状にもよりますが、2年内で就職することは可能です。
就労移行支援事業所のサポート内容
適応障害の方でも就職できるように様々なサポートを行っていますが、就労移行支援事業所の主な支援制度は下記となります。
- 就職実現に向けた訓練
- 自分に向いてる仕事探し
- 就職活動のサポート
- 入社後の定着支援
適応障害といっても症状は個人ごとに異なるため、まずは就職実現に向けて一人ひとりに合ったカリキュラムを作成し、ビジネスマナーやコミュニケーションスキル、並びにパソコンスキルなどを訓練していきます。
そして、就労移行支援事業所が企画する職業体験に参加して、実際に働くことで自分に向いている仕事や職種を探していくことができます。
「仕事できない「」続かない」といった人は、適応障害や性格に順応していない職種や仕事を選んでいることが原因であることも。
したがって、自分が無理なく適応障害をコントロールしながら働ける仕事を就労移行支援事業所のスタッフと一緒に見つけていけるのが大きなポイントです。
就職活動では、就労移行支援事業所とハローワークが上手く連携しながら就職・転職成功へと導いていきます。
就職が決まっても就労移行支援事業所のサポートは終わりではなく、入社後の継続支援もあるので安心して仕事に集中することが可能です。
就労移行支援の利用で適応障害から社会復帰した事例
訓練を受けると決意し、就職に至った人の事例を紹介します。
事例:Fさん
常に緊張感が高く、多汗が見られるFさんはカウンセリングを受け、適応障害と診断されました。
学生時代は不登校の時期もあり、マイナス思考が強いことから自分の気持ちに向き合えず、過去にはうつ病と診断されたこともありました。
働いて将来的に自立した生活をしたいと考えていた時、カウンセリングで「就労移行支援事業所」を紹介され、訓練を受けることを決意したのです。
就労移行支援事業所では、精神面では不安や苦痛にフタをせず、自分の気持ちに目を向けることに取り組み、スキル面では不登校時代の教養や体力を補うため、毎日の通所で基礎学力やビジネスマナーに取り組むことで自信を付けていきました。
精神面とスキル面を補うと、就職活動を始める前に企業での実習で適応能力を試したところ、実習先で訓練の成果を発揮でき、自身も働きやすさを実感したため就職が決定しました。
仕事は薬局での品出しやレジ、接客応対、シフト制による生活リズムの変化など、最初は慣れない事もありましたが、就職後の職場定着支援もあり、体調を崩さず1年経った今も就労を続けることができています。
仕事や社会復帰を目指すなら就労移行支援が最短ルート
適応障害の方で社会復帰を希望している方はぜひ就労移行支援事業所で訓練を受けてみてはいかがでしょうか。
就労移行支援事業所では、仕事に必要なマナーやスキルの習得を一人ひとりにあったプログラムを組んでサポートしていきます。
また、適応障害の方が社会人生活を再び送れるように、症状の対処法やコントロールをアドバイスするのも就労移行支援事業所の役割です。
就職活動中は、雇用主側に就労移行支援事業所のスタッフが適応障害の症状などを伝えるので、職場の理解を得ながら働くことができます。
さらに、適応障害の方が仕事を長く続けることができるよう、入社後も定着支援によってフォローしていくので安心してキャリア形成を目指すことができるのです。
就労移行支援事業所なら、就職に必要な訓練から内定後のサポートまで一貫した支援が受けられるので、適応障害の方も効率よく最短ルートで社会復帰が目指せます。