就労移行支援を利用した就職って一体どんなものか、気になりませんか?
- 自分に適した就職先が見つかるか
- 就職できたとして長く続けられるのか
こういったところは、就労移行支援を利用する前に知っておきたいところですよね。そんなあなたにぜひおすすめしたいのが、就職率と定着率のチェックです。
今回は、この二つのキーワード「就職率」と「定着率」をもとに、就労移行支援での就職についてや、事業所選びの際におさえておきたいポイントについて詳しくお話していきます。
また、就労移行支援とは何か、制度そのものをまだ詳しくご存知でない方は、別ページ「就労移行支援とは」にて解説してあるので、ぜひそちらを確認してから本記事をチェックされることをおすすめします。それでは、早速本記事の内容をご覧ください。
チャレンジド・アソウ大阪事業所
職業指導員
監修:野村 一美
短期大学卒業後、一般企業の経理・総務・
人事・営業職を経験。その後、
以前から興味があった福祉に前職から携わることになり、計画相談員として従事しておりました。
就労移行支援を使えば理想の就職先が見つかる?
まず、最初に知っておきたいのが、「就労移行支援を利用すれば理想の就職先が見つかるのか?」ということ。これについては、「基本的には見つかるはずだが、利用した事業所にもよる」というのが正直な回答です。
というのも、就労移行支援を提供する事業所は全国に3,400ヶ所以上もあり、その中にはNPO法人や社会福祉法人、民間の企業など様々な業態があります。当然、就労移行支援の内容もそれぞれの事業所によって異なるので、どうしても支援内容に差ができてしまうことがあるのです。
こういった理由から「理想の就職先が見つかるかどうかは、利用した就労移行支援事業所による」という答えになってしまうのですが、裏を返せば「正しい事業所選びをすれば、理想の就職先が見つかりやすい」とも言えます。
その正しい事業所選びに、冒頭で軽く触れた「就職率」と「定着率」が強く関わってくるのですが、こちらは後で詳しく解説しています。なので、まずは順序よく就労移行支援制度を利用する前に知っておきたいことなどを確認して、就労移行支援事業所選びに失敗しないための方法を学んでいきましょう。
就職に失敗しやすい人の傾向について
少し余談なのですが、他の記事で、「就労移行支援事業所に通っていても就職に失敗しやすい人の傾向」などが下記のように紹介されることがあります。
- 決められた日に通所ができない人
- 就職先に良い待遇を求めすぎる人
- 自分の症状・障害を客観的に把握できていない人
- 自分をコントロールできない人
たしかに、これらの特徴を持ったままの人は就職に失敗しやすいかもしれません。しかし、これらは本来、就労移行支援事業所に通う中で改善していくものです。そういった意味でも、良い就労移行支援事業所を見つけることが就職に成功するために重要なポイントとなります。それも踏まえて、以降の内容をお読みいただけると幸いです。
就労移行支援制度を利用する前に知っておきたいこと
就労移行支援事業所は全国に3,400ヵ所以上あるとお伝えしましたが、それだけたくさんの就労移行支援事業所があると選ぶのがかえって難しかったりもします。
その様な場合に知っておきたいのが、就職しやすい就労移行支援事業所選びのポイント。このポイントを抑えておくことで、就労移行支援事業所選びに失敗しにくくなります。
就職しやすい就労移行支援事業所選びのポイントは4つ
- 自宅から就労移行支援事業所まで通いやすいか
- 自分が必要とするカリキュラムや作業トレーニングが受けられるか
- 事業所の施設内の雰囲気は良いか
- 就労移行支援事業所が就職率と定着率を発表して、かつ実績があるか
これら4つのポイントはどれも就労移行支援事業所選びに欠かせません。いずれも重要なものなので、一つ一つ確認していきましょう。
自宅から就労移行支援事業所まで通いやすいか
就労移行支援制度を利用される方はもちろん障害や難病を抱える方になります。障害や難病を抱えていると、就労移行支援事業所まで通うのが大変な場合が多いです。
なので、就労移行支援事業所を選ぶ際には自宅からなるべく近く、公共機関の利用が最小で済む様に選ぶのが良いでしょう。駅近くに事業所を構えているか、というのもチェックポイントの一つです。
自分が必要とするカリキュラムやトレーニングが受けられるか
就労移行支援事業所に通う目的は一般企業への就職を実現し、職場に長く継続して勤められるか(職場定着できるか)です。
まず希望する就職を実現するために就労移行支援事業所でビジネススキル習得やビジネスマナーなどを学ぶのですが、これらカリキュラムが用意されているかを確認する必要があります。
例えば、事務職を希望するのであればExcelやWordなどを学ぶことができるか、Webデザインを希望するのであればデザインに関するカリキュラムがあるかなどです。
事業所の施設内の雰囲気は良いか
最短で数ヶ月、最長で2年間、就労移行支援事業所に通うわけですから、事業所の施設内の雰囲気が良いかは大事なポイントです。
雰囲気に関してはスタッフに活気があるか、利用者の男女比が偏りすぎていないか、年齢層はバランスが良いかなどを考慮すると良いでしょう。
就労移行支援事業所が就職率と定着率を発表して、かつ実績があるか
そして、本題である就職率と職場定着率です。
こちらは詳しくお話しする必要があるので次の項目で解説します。
障害を持つ方の就職率と職場定着率について
これまで挙げてきた就労移行支援事業所の選び方はどれも大事ですが、就職率と定着率も必ず抑えておきたいポイントです。定義を間違えると話が全く違ってくるので、まずはそれぞれの定義を簡単にさらっておきたいと思います。
求人に対しての就職率とは
就職率とは、就労移行支援制度を利用した人の中から実際に求人に応募して就職に成功した人の割合のこと。もちろん高い方が就労移行支援事業所としては優秀になります。
雇用後の職場定着率とは
職場定着率とは、就職後、一定期間にどれくらいの割合で継続的に働くことができているか、職場に定着できているかという数字です。
この職場定着率を測る期間は、就労移行支援事業所によっては3ヶ月や6ヶ月などまちまちですが、目安としては就労移行支援の制度で決められた6ヶ月のデータを参考にするのが良いでしょう。
この職場定着率も、就職率と同様に数字が高い方が優れた就労移行支援事業所と言えます。
【選び方】就職率も大事だが職場定着率の良さが最も重要
就職率はもちろん高いに越したことはないですが、職場定着率はもっと重要です。なぜかというと、就職は就職先に「満足している」「満足できない」にかかわらず、就職に成功した人の割合が計上されるからです。
つまり、希望する就職先に勤めることができた方も希望に沿わずになんとなく就職した方もこの就職率の中に含まれる訳です。
もちろん、就職率に含まれる全ての方が希望する職場に勤めることができたのかもしれませんが、そうではないかもしれないのです。
そこで、注目したい実績が、どれだけ仕事を継続できたか、職場に定着できたかを示す「職場定着率」。この職場定着率は、いわば「どれくらい就労移行支援制度利用者が満足して働き続けられるか」を示す数字実績です。
それでは、障害を持つ方の就職率と職場定着率は一体どれくらいのものでしょうか?ここで、障害を持つ方の就職率と職場定着率について、全国的なデータを見ていきましょう。
【データ】就職率と職場定着率はどれくらいが平均?
就職率を見てみると、平成27年度社会福祉施設等調査によるデータでは全国平均は22.4%となっています。
そして、就職に成功した方の職場定着率はどれほどかというと、2017年の障害者職業総合センターが調査した「障害者の就業状況などに関する調査研究」では1年後の職場定着率は発達障害の方で約7割、精神障害者の方で約5割となっているというデータがあります。
そう考えると、就職率や職場定着率が高い就労移行支援事業所に人気が集まりやすいのも当たり前ですね。逆に、就職率や職場定着率が低い事業所を利用してしまうのはかなりリスキーだと言わざるを得ません。
なお、この記事を監修しているチャレンジド・アソウの一般企業就職率は85.7%、職場定着率は90%と全国平均をかなり上回る実績を残しています。これは当然利用者様の努力によるところも大きいのですが、私どもも精一杯ご支援させていただいている結果でもある自負しております。
その他、利用者様の就職先職種などのデータも別ページにて公表しておりますので、「実際の就労移行支援事業所はどんなものなのか」、ご興味のある方はぜひご覧になってください。
これほどまで事業所で就職率や定着率の実績に差がある理由
さて、ここまで就労移行支援事業所の就職率や定着率について解説してきましたが、なぜこれほど各就労移行支援事業所で就職率や定着率に差があるのでしょうか。
その原因は一人一人に合わせたカリキュラムを用意しているか、または各自治体にあるハローワークや人材派遣事業所と強いつながりがあるか、そしてスタッフの熱意が高いかどうかの違いと言えます。
就労移行支援事業所に通う方は障害や病気を抱えた方ですが、障害と一言に言っても精神障害、身体障害、発達障害など様々。それに加えて、年齢や性別、経験の差など様々な条件が重なります。
その様な複雑な背景を持つ方にどれだけ寄り添えるか、そして必要となるカリキュラムを用意できるかが、良い就労移行支援事業所とおすすめできない就労移行支援事業所の差と言えるでしょう。
もちろん、おすすめできない就労移行支援事業所は就職率や職場定着率にも如実に結果や実績として現れてきます。
ハローワークや人材派遣事業所とのつながりも重要
また、各自治体にあるハローワークや人材派遣事業所と強いつながりがあるか、これも大切です。
当然ながら、就労移行支援事業所は職業斡旋所ではないので、直接仕事や職場を紹介したりはしません。しかし、ハローワークや人材派遣会社と密なコミュニケーションをとり、一人一人の希望する職業を見つけるお手伝いができる就労移行支援事業所でこそ、結果として就職率や定着率が高くなります。
こういった就職率や定着率の高さを支えるのは、就労移行支援事業所のスタッフの熱意が必要であるのは言うまでもありません。
記事まとめ
いかがだったでしょうか。今回は障害や病気を抱える方が、一般企業への就職のために就労移行支援事業所選びの際になぜ就職率や定着率に注目するべきかをお話いたしました。
実際に就労移行支援事業所は各地方自治体にたくさんあるので、選ぶのは非常に大変です。
しかし、就職率や定着率などの実績は優先して判断基準とし、これらの数字は確かなものなので就労移行支援事業所選びの大きな手助けとなるのは間違いありません。
これから就労移行支援事業所選びをされる障害や病気を持つ方はぜひ就職率や定着率の実績をチェックされるのをおすすめします。