障害のある方が一般就労を目指す場合に適切なサポートが得られるのが就労移行支援。
この就労移行支援を提供している就労移行支援事業所は定員が設けられているのをご存知ですか。
今回は、就労移行支援事業所の運営要件を確認しながら、なぜ定員が設けられているのか、定員超過の場合はどんな影響があるのかを確認していきましょう。
チャレンジド・アソウ博多事業所
就労支援員 精神保健福祉士
監修:山本 慎也
15年に渡りテレマーケティング会社等にて
人材育成・マネジメント業務に従事。
行政コールセンターの構築にて福祉に
触れたことがきっかけとなり現職に至る。
就労移行支援事業所の運営要件と基準
就労移行支援事業所を運営するには、まず申請を行い事業所としての認可を得る必要があります。
就労移行支援事業所の申請ができるのは株式会社、合同会社、社会福祉法人、またはNPO法人などの法人格を有することが求められているため、個人では申請できません。
また、定款に就労移行支援事業が記載されていない場合は、変更手続きが必要となります。
なお、就労移行支援事業所には配置が必要とされる人員が決まっており、配置基準も定められています。
それでは、就労移行支援事業所の人員基準を簡単に見ていきましょう。
利用者数によって人員配置の人数が決まっている
職種 | 配置基準 |
---|---|
管理者 | 1名(兼務可) |
サービス管理責任者 | 利用者60人以下で1人以上配置(※1名以上は常勤) |
職業指導員・生活支援員 | 常勤換算で利用者数を6で除した人数以上(※いずれかの内、1名以上は常勤) |
就労支援員 | 常勤換算で利用者数を15で除した人数以上(※いずれかの内、1名以上は常勤) |
以上のように、就労移行支援事業所を運営するには、配置するスタッフ数の基準が設けられているため、基準を満たすために利用者の定員を設定しています。
また、人員に関する基準では、就労移行支援事業所を利用する定員は6名以上とされています。
いっぽう、就労移行支援事業所の指定を受けるには人員基準に加え、設備基準の要件もクリアする必要があります。
設備に関する事業所の運営を安定化・継続化させることを目的に、利用定員は原則として最低定員20名以上とされています。
つまり、施設内で20名以上の利用者が職業訓練を行える規模であることが求められているということです。
他にも下記の設備が施設内に設置されていることが要件としてあげられています。
- 訓練・作業室
- 相談室
- 多目的室
- 洗面所・便所
定員超過を行った場合
就労移行支援事業所を運営する上で人員基準が設置されていることが分かりましたが、では定員がオーバーした場合の措置を確認していきましょう。
就労移行支援事業所は、障害者に就労支援を行うことで都道府県から報酬を得ています。
報酬の計算方法は複雑ですが、簡単に説明すると「事業所の定員規模」と「利用者の就職後定着率の割合」に応じて得られる報酬単価が異なってきます。
もちろん、利用者の就職後定着率が高いほど得られる報酬単価は高いです。
この報酬計算において、もし、管理者や支援員の人数が配置基準を満たさない場合は減算処理が行われ、得られる報酬は減少してしまいます。
したがって、就労移行支援事業所では、得られる報酬が減額されないよう、人員配置基準を満たすよう利用者数を定めた定員内で運営を行っていることが一般的です。
定員超過の場合は十分な支援サービスが得られないリスクが高い
上記で説明した通り、就労移行支援事業所では人員配置基準に基づいて定員を決めて運営を行っているので、定員超過になることは基本的にありません。
しかし、支援員の離職等で一時的に定員超過になっているケースも考えられます。
この場合、就労移行支援事業所を利用する障害のある方にとっては、支援員の数が少ないと、それだけ得られるサポートも不足してしまいがちです。
適切な支援が受けられるように最低基準としての配置すべき人数が決められているので、その基準を超えてしまっているということは、就労移行支援の体制に影響ができることは間違いありません。
そのため、就労移行支援事業所を利用する場合は、定員と実際の利用者数も確認しておくと、より最適な職業訓練を受けることができます。
【まとめ】定員超過の場合は、他の就労移行支援事業所の利用を
以上のように、就労移行支援事業所では在籍する管理者や支援員の数に応じて障害のある方を受けら入れられる定員数が決まっています。
定員数が多いと人気が高いと思ってしまいがちですが、定員超過になっていれば就労移行支援の質も劣ってしまうリスクが高いです。
厚生労働省が平成30年に実施した調査によると、就労移行支援事業所の数は全国3,503と右肩上がりで増加中。
したがって、就労移行支援を受けられる事業所数は選択肢として豊富にあるので、定員内で適切に運営されている就労移行支援事業所を利用することをおすすめします。