「パーソナリティ障害」とは、物事の考え方に大きな偏りがあり、そのことで周囲の人とトラブルになったり、自分自身も苦痛を感じたりする精神疾患の1つです。
この記事では、パーソナリティ障害の中でも特に「回避性パーソナリティ障害」に焦点を当て、主な症状と治療方法、また仕事上で直面しやすい困りごとなどを解説していきます。
回避性パーソナリティ障害の方が利用できる就労移行支援の制度についても紹介しているので、障害があるために就職活動に困難を抱えているという方はぜひ参考にしてみてください。
回避性パーソナリティ障害とは?
まずは、回避性パーソナリティ障害を含むパーソナリティ障害全般の概要と、回避性パーソナリティ障害の主な症状・治療方法について詳しく見ていきましょう。
パーソナリティ障害の種類
パーソナリティ障害は、極端に偏った物事の考え方・行動パターンをとることで、周囲の人を困らせてしまったり、自分自身を苦しめてしまったりする精神疾患の一種です。
遺伝的要因や幼少期の家庭環境、また社会生活でのトラウマ体験などが原因となっているケースが多く、主に青年期から成人早期の間で発症します。
パーソナリティ障害は症状や行動パターンの違いなどによって以下の10種類に分けられます。
A郡:独特で風変わりな考え方・行動をとる
妄想性(猜疑性)パーソナリティ障害 | 不信感や猜疑心が強く、周囲から利用されている・悪意を向けられているといった考え方にとらわれやすい |
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統合失調質(シゾイド)パーソナリティ障害 | 他者への関心が薄く、週からの評価を気にしない |
統合失調型パーソナリティ障害 | 独り言が多い・話がすぐに脱線するなどの特徴があり、周囲から風変わりな人だと思われやすい |
B郡:感情的・衝動的な言動をとる
反社会性パーソナリティ障害 | 犯罪行為や暴力行為に対して罪悪感がなく、社会的なルールにも無関心 |
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境界性パーソナリティ障害 | 感情の起伏が激しく、自分でも感情をコントロールすることが難しいため、人間関係が不安定になりやすい |
演技性パーソナリティ障害 | 常に注目されていたいという思いが強く、注目を集めるために嘘をついたり外見を変えたりすることもある |
自己愛性パーソナリティ障害 | 自分は特別な人間であるという思いが強く、周囲の人への共感性が低かったり、傲慢な態度をとったりする |
C郡:不安や恐怖心から内向的な行動をとる
回避性パーソナリティ障害 | 失敗や否定されることを恐れ、社会参加に対して消極的 |
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依存性パーソナリティ障害 | 物事の判断を自分で行うことができず、近しい人の判断に任せてしまう |
強迫性パーソナリティ障害 | 自分の中にあるルールを守ることに強いこだわりがあり、他者に対しても融通が利かない |
回避性パーソナリティ障害の症状・診断
回避性パーソナリティ障害は、前述したパーソナリティ障害の中でC郡に分類される障害です。
回避性パーソナリティ障害を持つ方は、自分自身が否定・批判・拒絶されることを極端に恐れ、対人関係や社会的活動を避ける傾向にあります。
回避性パーソナリティ障害の方に見られる主な症状として、以下のような例が挙げられます。
- 同僚からの批判を恐れ、昇進を断る
- 自分が好かれていると確信できるまで、友人関係を構築しようとしない
- 嘲笑されたり批判されたりすることを恐れ、自分自身のことを話そうとしない
- 些細な指摘でも非常に傷いてしまう
- 自分は他の人よりも劣った存在だと感じている など
またDSM-5における、回避性パーソナリティ障害の診断基準は以下の通りです。
・批判、非難、または拒絶に対する恐怖のために、重要な対人接触のある職業的活動を避ける
・好かれていると確信できなければ、人と関係を持ちたがらない
・恥をかかされる、または嘲笑されることを恐れるために、親密な関係の中でも遠慮を示す
・社会的な状況では、批判される、または拒絶されることに心がとらわれている
・不全感のために、新しい対人関係状況で抑制が起こる
・自分は社会的に不適切である、人間として長所がない、または他の人より劣っていると思っている
・恥ずかしいことになるかもしれないという理由で、個人的な危険をおかすこと、または何か新しい活動に取り掛かることに、異常なほど引っ込み思案である
(出典:DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引)
回避性パーソナリティ障害の治療方法
回避性パーソナリティ障害の方に対しては、主に以下の2つの方法で治療を行います。
精神療法 | 個人精神療法・集団精神療法によって、認知・思考・感情のあり方・行動パターンなどの改善を目指す治療方法です。家族関係の修復よって症状の改善を目指す家族療法などもあります。 |
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薬物療法 | 抗不安薬・抗うつ薬によって不安感やストレスの緩和を図る治療方法です。障害に対する直接的な治療にはなりませんが、精神療法による治療と向き合うための手段として用いられます。 |
回避性パーソナリティ障害を持つ方の就職活動
続いて、回避性パーソナリティ障害が仕事に与える影響と、回避性パーソナリティ障害の方に適した仕事・働き方について詳しく見ていきましょう。
回避性パーソナリティ障害が仕事に与える影響
回避性パーソナリティ障害の方は、不安や恐怖心が強く、内向的になりやすいのが特徴です。
また全てのパーソナリティ障害に共通する特徴として、二極思考(0か100かという物事の考え方)を持ちやすいという点が挙げられます。
新たなチャレンジのための十分な実力が備わっているにもかかわらず、完璧主義で失敗を極端に恐れるあまり、せっかくの機会を逃してしまうといったことがよくあります。
職場においても、周囲から目立つ行為や困難をともなう状況を避けようとする傾向が見られ、昇進を断ってしまったり、責任のある業務から逃げてしまったりするケースがあります。
更に、こうした状況が続くことで職場に居づらくなり休職・退職をする方や、二次症状としてうつ病などを患う方が多い点も回避性パーソナリティ障害の特徴と言えるでしょう。
回避性パーソナリティ障害の方にとって働きやすい環境
回避性パーソナリティ障害の方にとって働きやすい環境として以下のようなポイントが挙げられます。
- 人との関わりが少ない仕事
- 体調に合わせて自分のペースで働ける仕事
- 好きなこと・特技を活かせる仕事
回避性パーソナリティ障害を持つ方は人間関係のトラブルを抱えやすいことから、なるべく人との関わりが少なく、自分のペースで働ける仕事・職場環境が適しています。
また回避性パーソナリティ障害の方は一般の人よりもストレスを感じやすいため、好きなこと・特技を活かせる仕事を探してみるのも1つです。
このような環境で働くことが難しい場合は、会社の上司に事情を伝え、業務の割り振りや相談役の配置といった配慮を受けられるようにすると働きやすさが向上するかもしれません。
精神障害の方が利用できる【就労移行支援】とは
回避性パーソナリティ障害などの精神疾患を抱える方が就職・転職活動を行う際は、様々な福祉サービス・支援機関を活用しながら進めていくのがおすすめです。
ここからは、回避性パーソナリティ障害を持つ方が利用できる福祉サービスの1つ、「就労移行支援」の仕組みとサービス内容について解説していきます。
就労移行支援の概要
就労移行支援とは、障害・難病を抱える方の一般企業への就職を支援するための福祉サービスです。
就労移行支援を行う事業所では、就職にあたって必要となるスキル・知識の習得から、就職活動のサポート、また就職後の定着支援までを一連で実施しています。
就労移行支援事業所の対象者・通所期間などの概要は以下の通りです。
就労移行支援の目的 | 就職するために必要なスキルを身につける |
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就労移行支援の対象者 | 身体障害・知的障害・精神障害・難病のある方で一般企業への就職を希望する方 |
年齢制限 | 原則18歳~65歳未満 |
事業所への通所期間 | 原則2年(最大1年延長可)+定着支援6ヶ月 |
就労移行支援の利用料金 | 0円~32,000円/月 ※世帯収入によって異なる |
雇用契約 | なし |
賃金 | 一部事業所を除きなし |
就労移行支援で受けられるサービス
就労移行支援事業所で実施している主なサポート内容は以下の通りです。
就職を目指すためのトレーニング | 就職時に必要となるスキル・ビジネスマナーなどを習得するためのカリキュラムに取り組みます。またこれらのトレーニングを通して障害に対する理解や職業理解を深め、自分のやりたい仕事・できる仕事を見つけるサポートを行います。 |
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就職活動支援 | 履歴書・職務経歴書の添削や、求人票のチェックなどを行います。また面接へ同行したり、就職に関する相談に乗ったりすることも可能です。 |
就職後の定着支援 | 就職先の職場で起こったことや悩んでいることに対する相談に応じます。内容によっては、直接企業側と相談を行うこともあります。 |
就労移行支援事業所では、それぞれの障害の特性を理解したスタッフによる就職サポートを受けられます。
また提携企業への職場見学や実習などを行っている就労移行支援事業所もあるので、自分に合った働き方を見つけたいとお考えの方は、一度お近くの就労移行支援事業所を調べてみると良いでしょう。
パーソナリティ障害の特徴と就労移行支援の活用方法まとめ
- 回避性パーソナリティ障害は、極度の不安・恐怖心によって、人間関係の構築や社会参加を避けてしまう精神疾患の1つ
- パーソナリティ障害の方は人間関係のストレスを感じやすいため、人との関わりが少なくマイペースに働ける仕事・職場環境が適している
- 一般企業での就労を目指す場合は、就労移行支援事業所のサポートを受けながら就職・転職活動を進めるのがおすすめ
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