就労移行支援サービスを行っている事業所は全国に3000ヶ所を超えています。
障害者福祉手帳を所持しなくても利用できるため、障害で悩む人の多くが利用することが可能です。
利用希望者の中には障害が原因で人間関係や仕事上のストレスや悩みを抱えるいっぽうで、退職すると将来のことや生活のことで不安となり、休職中の方もいると思います。
働きながらや、休職中でも就労移行支援を利用して転職、就職活動をすることができるのか。
今回は、働きながらや休職中の方に向けて就労移行支援が利用できるか解説していきます。
チャレンジド・アソウ広島事業所
管理者 サービス管理責任者
精神保健福祉士・社会福祉士
監修:中野 富美子
精神保健福祉士として20年経験し、
以前から興味のあった就労移行支援に
チャレンジする事となり現職に至る。
働きながら就労移行支援は利用可能か?
まず、就労移行支援のサービスは働きながら利用することができるかどうか。
実は、基本的に働きながら就労移行支援を利用ることはできません。
そもそも、就労移行支援の目的は企業への就職することがゴールであるため、既に企業に在職中の方は障害があっても目的を達成しているとみなされるからです。
それに、就労移行支援事業所での訓練は平日に実施されるため、勤務時間と重なることが多いと思います。
これでは、一般就労に必要な訓練が計画通りに行うことができません。
就労移行支援事業所の主な対象者は、障害により社会人未経験の方が就職を目指す、または障害を理由に仕事を退職したから訓練や支援を経て再就職や社会復帰を行いたいという人が利用する場所です。
現在働いている人を対象にした支援制度ではないことが、働きながらの利用できない要因となっています。
アルバイトも該当する可能性あり
就労移行支援事は給付金や工賃が原則支給されないため、利用期間中は無収入になるため生活に不安を感じる人もいますよね。
なかには生活費を稼ぐためにアルバイトやパートなら良いかなと考えている人もいるかもしれません。
しかし、こちらもバイトであっても「働く=就職(一般就労)」とみなされることが多いので、認められないことが多いです。
ただし、自治体によってはアルバイトができる可能性もゼロではないので、就労移行支援事業所や自治体にまずは相談してみると良いでしょう。
なお、平日の日中が就労移行支援の訓練があるため、アルバイトはできても夜間や週末となってしまい両立は容易ではありません。
アルバイトが原因で障害の症状が悪化してしまったり、訓練が疎かになって就職実現が達成できないければ本末転倒なので慎重に検討しましょう。
休職中の障害者は就労移行支援が利用できるか
会社に在籍しているけど、精神障害など突然障害を発症してしまい、以前のように職場で働くことが困難になったので、現在休職中という方もいるでしょう。
では、休職期間中は就労移行支援事業所の利用ができるのか。
実は、以前は休職中の方も企業に在職中であることから就労移行支援の利用は認められていませんでした。
しかし、制度の見直しをきっかけに休職中の方でも就労移行支援の利用が認められる場合があります。
ただし、休職中の障害者全てが認められる訳ではありません。
厚生労働省が休職中の方が就労移行支援が利用できる基準について述べている資料があるので確認してみましょう。
休職中に就労移行支援が受けられる条件と項目内容
厚生労働省社会・援護局の「平成30年度障害福祉サービス等報酬改正に関するQ&A」によると、休職中の方が就労移行支援の対象者になる条件として、下記3つの項目全てを満たす必要があります。
- 休職中の方を雇用する企業、地域の就労支援機関、および医療機関が復職支援(リワーク支援)ができない場合、又は困難である場合
- 休職中の方が復職を希望し、企業および医療機関側も支援により復職が適切と判断している場合
- 休職中の方が就労移行支援などを利用することで適切なサポートが受けられると市区町村が認めた場合
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf10/syogaisisetsu/documents/q_and_a_180425.pdf
上記事例では、障害を理由に休職中の方が就労移行支援のサービスを受けるには、企業と医療機関の理解が必要となります。
どんなに休職中の方が復職を希望していても、雇用側や医療機関が適当であると判断しなければ実現することができません。
ただし、企業側も休職を認めているので、休職中の方が復職を目指して就労移行支援を利用できる可能性は高いと思います。
あとは、自治体が休職中の方が就労移行支援事業所の利用を許可するかどうかになってきますので、休職予定の方、または休職中の方は、自治体や利用予定の就労移行支援事業所に相談してみてはいかがでしょうか。
退職した場合の生活費が不安な場合
休職中でも就労移行支援を利用できる場合がありますが、やはり退職して利用する人が少なくありません。
この場合、問題になってくるのが金銭面だと思います。
休職中なら雇用主から給与が支給される場合もありますが、退職した場合はそれがありません。
ただし、上記で述べたようにアルバイトも一般就労に該当する可能性があったり、就労移行支援に支障をきたすリスクもあったります。
そこで、下記のような給付金や支援を利用している障害者の方が多いです。
ここでは簡単に確認していきますので、詳しくは行政窓口や関係機関に相談してみて下さい。
失業手当
企業で働いていた際に雇用保険に加入していた方は失業手当を受給できる可能性があります。
受給資格としては、退職日以前の2年間で加入期間が通算12ヶ月以上、特定理由離職者などは通算6ヶ月以上の場合です。
受給条件や給付金額について各就労事情によって異なってきますので、ハローワークに確認してみて下さい。
障害年金
障害の症状がひどい場合は障害年金を受給できる可能性があります。
注意点としては障害者手帳を所持していても受給できるとは限らず、別途審査が行われます。
また、厚生年金または国民年金の保険料を一定以上払っていないと受給資格が得られません。
障害年金を申請するには必要書類の用意とう大変なので、社労士等の専門家に相談することをおすすめします。
生活保護
生活が本当に厳しい場合は、生活保護を受給するという方法もあります。
生活保護受給者の方も就労移行支援を利用することは可能で、料金も無料です。
【まとめ】職場を休職中に利用する選択肢は適切か
今回は働きながらや休職中に就労移行支援が利用できるかについて解説してきました。
結論的としては休職中の方が復職を希望している状況で
- 雇用主
- 医療機関
- 市区町村
の全てが就労移行支援による復職が適切であると判断するかによります。
復職を目指す障害のある方は休職中ではなく、退職して就労移行支援を利用している場合が多いです。
ただし、休職中でも復職に向けた支援サービスを受けるチャンスはあるので、まずはお住いの自治体や最寄りの就労移行支援事業所へ相談してみることをおすすめします。