就労移行支援について
就労移行支援の基本報酬とは?職場定着率を上げて事業所運営を安定させる!

就労移行支援の基本報酬や職場定着率を上げる方法を解説

就労移行支援の基本報酬とは?職場定着率を上げて事業所運営を安定させる!

就労移行支援の基本報酬はどのように決まるかご存じですか?定員数や利用者数だけではなく、実はサービス利用者の就職後の職場定着率が大きく関係しています。

この記事では、就労移行支援の基本報酬や職場定着率などについて、下記のようにまとめてみました。

  • 就労移行支援の基本報酬
  • 職場定着率を上げる方法
  • 訓練カリキュラムの再考

この記事を読めば、就労移行支援の基本報酬と職場定着率の関係性だけではなく、それらを上げる方法がついて理解できます。それでは、基本報酬と職場定着率について一緒に確認していきましょう。

就労移行支援の基本報酬は職場定着率に比例している!

就労移行支援の基本報酬を大きく左右するのは、サービス利用者の職場定着率です。

職場で安定して働けるように支援することが重要視され、近年の報酬改定のたびに職場定着率と基本報酬の比例関係が強まってきたからです。

詳細は後ほど解説しますが、具体的には職場定着率の数値によって基本報酬が倍以上にもなります。

職場定着率を上げる方法を理解する前に、まずは就労移行支援の基本報酬についてみていきましょう。

就労移行支援の基本報酬を理解する

就労移行支援の基本報酬を理解する

障害福祉サービスの報酬体系は複雑で理解することがとても大変です。ただ、この章では就労移行支援の基本報酬にポイントを絞って、わかりやすく解説します。

事業所経営には基本報酬の安定が必須

繰り返しますが、就労移行支援事業所の運営において基本報酬を安定させることが重要です。なぜなら、報酬全体に占める基本報酬の割合が大きく、安定させないと事業所運営が成り立たないからです。

就労移行支援の基本報酬と加算を比較すると・・・

就労移行支援の基本報酬である就労移行支援サービス費(Ⅰ)と、同じように1日単位で付けられる一般的な加算の単位数は下記のとおりです(利用定員が21人以上40人以下の事業所)。

  • 就労移行支援サービス費(Ⅰ):414~1,035単位(職場定着率によって変動)
  • 食事提供体制加算:30単位
  • 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ~Ⅲ):15単位(Ⅰ)・10単位(Ⅱ)・6単位(Ⅲ)
  • 就労支援関係研修修了加算:6単位

上記のように基本報酬の単位数が大きいことは明らかです。つまり、基本報酬を安定させないと、安定した就労移行支援事業所の運営はできません。

基本報酬と職場定着率の関係性

基本報酬(就労移行支援サービス費(Ⅰ))の単位数は、下記のように職場定着率と比例の関係になっています(※利用定員が21人以上40人以下の事業所)。

職場定着率 就労移行支援サービス費(Ⅰ)
50/100以上 1,035単位
40/100以上50/100未満 863単位
30/100以上40/100未満 725単位
20/100以上30/100未満 631単位
10/100以上20/100未満 506単位
10/100未満 448単位
0 414単位

上記のように職場定着率が上がれば基本報酬(就労移行支援サービス費(Ⅰ))も上がります。そのため、就労移行支援で多くの基本報酬を得るためには職場定着率がとても重要なのです。

令和3年度の報酬改定とは

障害福祉サービスの報酬改定が令和3年度に行われました。就労移行支援の報酬の主な変更点は下記のとおりです。

  1. 就職者数・職場定着者数が多い事業所の基本報酬をより評価する
  2. 職場定着率は標準利用期間(2年間)を踏まえて直近2ヵ年度の実績で算定
  3. アセスメントにおいてサービス利用者本人や他機関が参加したケース会議を評価する

職場定着率を重視する報酬体系に!

上記の1のように令和3年度の報酬改定では、さらに職場定着率を重視する制度になりました。職場定着率関連の詳細な解説は下記のとおりです。

1の内容は、職場定着率が20%以上がより評価される仕組みです。

2の内容は、職場定着率の算定が前年度の単年度のみの数値から、前々年度と前年度の2ヵ年度の数値を使用する仕組みへの改定です。なお、職場定着率の算定の数式は下記のとおりです。

  • 前々年度と前年度に就職後6ヵ月以上定着したサービス利用者÷〔(前々年度の定員数)+(前年度の定員数)〕

職場定着率を上げる方法

職場定着率を上げる方法

職場定着率は就労移行支援事業所の定員数に対する、就職後6ヵ月以上職場に定着したサービス利用者の割合です。

職場定着率を上げるためには、就職者数を上げるだけではなく就職したサービス利用者のサポートをしっかり行う必要があります。

サービス利用者の就職率を上げる

サービス利用者の就職率、つまり、就職者数を増やすためには、近隣の障害者雇用の状況にあわせた取り組みが必要です。

なぜなら、就職しやすい業種・職種を把握し就職活動のサポートや訓練をしたほうが、サービス利用者が就職しやすくなるからです。

例えば、近隣の特例子会社の業種・求める職種や、一般企業の障害者雇用の募集職種などを把握し、事業所内の訓練に反映させます。このように必要な取り組みによって就職者数を確実に増やしていくのです。

職場定着率を上げる

職場定着率を上げるためには、職場定着サポートを担当している就労支援員が、仕事に専念できるようにすることです。

なぜなら、就労支援員が職場定着サポートに専念することによって職場定着率が上がるからです。

例えば、求人開拓や企業アセスメント、就職したサービス利用者との面談などです。事業所のほかの業務が忙しくて、就労支援員の本来の業務ができないようでは、職場定着率は上がりません。

スタッフが働きやすい職場をつくる

当然のことように感じるかもしれませんが、スタッフが働きやすい職場づくりはとても重要です。なぜなら、スタッフの能力を最大限に発揮できるからです。

職場の風通しのよさや、客観的な評価、有給休暇の取得のしやすさなど、様々な点から働きやすい職場づくりが可能です。

働きやすい職場ならスタッフはサービス利用者の支援に集中できます。福祉の現場にありがちな3Kのイメージを払拭することで、新しい人材を集めやすくなりますよ。

訓練カリキュラムを考える

訓練カリキュラムを考える

就労移行支援の訓練カリキュラムは異なるサービスではないかと思うほど、事業所によって実に様々です。様々な点を考慮して訓練カリキュラムを作成し、実施のために適した人材をあてる必要があります。

実情にあった訓練カリキュラムの見直し

事業所の場所や設備などを考慮し、最大限に効果が得られるような訓練カリキュラムにすることが重要です。
なぜなら、事業所や運営元の法人の置かれている状況は千差万別であるからです。

小さなスペースしか用意できない事業所なら、その場に適したパソコンや事務などのスキルを重視した訓練カリキュラムが考えられます。

また、就労継続支援事業所を併設している場合は、作業活動体験をメインにした訓練カリキュラムもよいでしょう。

さらに、前述のように近隣の障害者雇用にあわせた訓練カリキュラムの作成も必要です。様々な点を考慮して訓練カリキュラムを考えましょう。

スタッフには一般企業の経験者を

訓練を担当するスタッフに一般企業の実務経験者をあてることも一つの方法です。

なぜなら、就労移行支援事業所の訓練で指導する知識やスキルは、実際のビジネスを想定したものであるからです。

例えば、実際のビジネスを経験していないスタッフが指導しても、実際とかけ離れた訓練内容になってしまいます。

ExcelやWord、PDFなどのビジネスアプリでも、ビジネスで使い慣れたスタッフが担当すするほうが、サービス利用者へ実用的な内容を指導できます。

まとめ

就労移行支援事業所の基本報酬はサービス利用者の職場定着率と比例関係です。職場定着率を理解するためにも基本報酬や最近の報酬改定の流れの把握が重要になってきます。

また、職場定着率を上げる方法としては、近隣の障害者雇用の実情にあわせた取り組みや、職場定着サポートを担当する就労支援員の本来業務への専念です。

さらに、訓練カリキュラムの見直しや、訓練指導担当に実際のビジネスを経験したスタッフを配置することで、実用的な訓練指導ができますよ。

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