障害や難病を抱える方の就職や働く場所を見つけるお手伝いをするための制度である就労移行支援、就労継続支援ですが、名前は似ていますが中身は全く異なります。
そこで今回は就労移行支援、就労継続支援それぞれの特徴をまとめつつ、サービスの違いをご説明するとともに、制度の利用条件、また制度の併用は可能なのか等を解説いたします。
就労移行支援とは
18歳から64歳までの障害や難病を持つ一般企業への就職で社員雇用されることが可能、そして意志をお持ちの方が対象のサービス。
就労移行支援支援を行う施設、就労移行支援事業所では就職するために必要なビジネススキルの習得のためのカリキュラムを用意しています。
利用者は就労移行支援事業所のスタッフとのカウンセリングサービスを通じて、ご自身にあった職業や就職先を見つけ、求人の調査や就職から職場定着までの支援を受けることが可能。
就労移行支援事業所で受けられるサービスサポート内容は以下の通りです。
- カウンセリング
- 就職のためのビジネススキル習得サポート
- 職場体験など実践的なトレーニング
- 就職活動のサポート
- 就労定着支援
これら就労移行支援事業所での支援を受けるのは障害者手帳なしでも利用可能な場合があります。
障害者手帳なしでも主治医の診断書や定期的な通院記録を用意できれば就労移行支援を受けることができることがあるので、問い合わせてみるのが良いでしょう。
サービス利用料金は無料なことが多く(前年度の世帯収入による)、利用期間は原則2年。
就労継続支援とそのメリットとは
就労移行支援と就労継続支援の一番大きな違いは、一般企業などへの就職が可能か、もしくは就職の意思があるかです。
就労継続支援は通常の企業などに就職が困難な障害を持つ方や難病を抱える方を対象としています。
そのような方々に就労の機会を提供する目的で定められたのが就労継続支援。
就労継続支援には雇用契約を結ぶA型とB型の二種類が用意されており、自身にあった利用が可能です。
どちらのサービスも利用期間に制限はなく、就労移行支援と違い年齢制限もありません。
就労継続支援A型
就労継続支援A型は一般企業への就職が困難な方で雇用契約に基づいて働く場所、または生産活動の機会を提供することが目的です。多くの場合は盲・聾養護学校卒業者や一般企業を障害や難病を理由に離職した方が利用されます。
事業所と雇用契約を結ぶので、収入の安定や各種保険の適用があり、安心して就労継続支援A型を利用される方は働くことができるのがメリットです。
就労継続支援B型
就労継続支援B型は一般企業への就職、雇用が困難な方で雇用契約を結ばずに働く場所を求めている方を支援する制度。
B型は就労の機会を得る事で生産活動の知識や能力の向上が見込まれる障害を持つ方が多く利用しており、過去に一般企業に就職していたが体力面や年齢などの問題で働くことが困難になった方も含まれます。
A型と違い雇用契約がないので短時間労働など自由な働き方ができる反面、賃金(工賃)が低くなりやすい、各種保険が適用されないなどの面があります。
就労移行支援と就労継続支援の違いとは?それぞれ制度の併用は可能?
就労移行支援と継続支援それぞれの特徴をご説明してきましたが、このままだとわかりにくいのでまとめてみました。
就労移行支援と継続支援A型・B型の違い
就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
---|---|---|---|
利用期間 | 原則2年 | なし | |
目的 | 就職するために必要なスキルを 身につける |
働く場所を提供する | |
対象者 | 一般企業へ就職することを 希望する方 |
現時点で一般企業への 就職が困難、または不安な方 |
|
雇用契約 | なし | あり | なし |
賃金 | 一部事業所を除きなし | あり/平均月収約7万円 | あり/平均月収約1.5万円 |
年齢制限 | 65歳未満 | なし | |
利用料金 | 前年度世帯収入による |
これら制度は併用できる?
就労移行支援で就職が実現したあと、就労継続支援A型を併用することは不可能です。
なぜならば就労移行支援と就労継続支援は目的も対象者も異なるから。
あくまでも就労移行支援制度は障害や難病を持つ方が一般企業への就職支援を目的とした制度、就労継続支援制度は一般企業への就職が現時点で不可能な方が対象です。
就労定着支援と利用するメリットとは
障害者や難病を持つ方を支援する福祉制度は就労移行支援と就労継続支援だけではなく、実は就労定着支援という制度もあります。
この就労定着支援制度とは2018年にスタートした制度で、障害のある方が雇用されて、就労した後に起こっている仕事面や生活面の問題に対してサポートするサービス。
- 仕事でミスが増えてしまう
- 同僚や上司とうまくコミュニケーションを取れない
- 働きながら通院などをしたいが言い出せない
- 遅刻や欠勤、早退が増えてしまう
- 給料をもらってもお金の管理が難しい
これらの悩みや制度利用の手続きも就労移行支援事業所に相談できますのでスタッフに相談してみると良いでしょう。
就労定着支援も障害者手帳なしで利用できる場合があります。
就労移行支援を利用した就職後も、支援員による定期的なサポートによって短期間で離職してしまうことを大きく減らせるというメリットがあります。
就労移行支援を利用して、一般企業への就職・雇用を目指してトレーニングを積んだとしても環境の変化に馴染めず元に戻ってしまう方を少しでも減らすためにも、ぜひ利用することをおすすめいたします。